ヨーロッパのポリシー
ヨーロッパの将来電力ネットワーク用の技術プラットホーム(ETP SG)はヨーロッパ電力ネットワークの2020年以降のビジョン開発の目的で2005年にスタートした。
ETP SGは2007年にリサーチの戦略アジェンダを公開し、2012年にそれをHORIZON2035計画に基づいてアップデートした。2015年にそのアジェンダは、第5回国連総会でも発表された。
欧州委員会によると、「再生エネルギー資源のスムーズな統合、以前より効率性と安定性が高い電力の提供、またはEU内のエネルギー市場の創出と消費者の全面的な参加は EUのキー目標である」とした。
国際エネルギー機関は、発電所を始め、送電と配電施設を含み、ヨーロッパの電力システム更新には2007年から2030年にかけて15兆ユーロが必要だと想定している。
2016年12月、欧州の研究投資プログラムHorizon2020は再生可能なエネルギー、新ビジネスモデルや小売り市場ソリューションの開発でヨーロッパのエネルギーグリッドを現代化する目的で9900万ユーロを12スマートグリッドやエネルギープロジェクトに割り当てた。
そのプロジェクトの一つであるInterFlexはエネルギーグリッドをもっと柔軟にすることを目指す。InterFlexは2200万ユーロを使って3年間で実施される予定だ。
当プロジェクトは将来のより柔軟な、ローカルエネルギーシステムに移行するため、配電ネットワークや、革新的なITソリューション、レベルの高いネットワークの自動化のためのテストを行う。さらに、デモの結果分析も行い、それらの再現が可能かどうかを評価するものだ。
このプロジェクトは、特に電力貯蔵、電気自動車、需要反応、アイランディング、グリッドの自動化やあらゆるエネルギーキャリア―(ガス、熱、電力)などの統合に焦点を置いている。
INEA (Innovations and networks executive agency、イノベーションやネットワークの執行機関)は2016年にHorizon2020のエネルギープロジェクトに関する43交付契約を認可した。同プロジェクトの推定総合金額は2.75億ユーロに上る。
スマートグリッドの様々な課題
ここまで見てきたように、政府の活発な対策や標準化への取り組み、またはスマートグリッドの実現に必要なコア技術がほとんど市場で入手可能であるにもかかわらず、現時点でスマートグリッド実施レベルは低いといえる。
サイバーセキュリティーやインフラの現代化に必要な膨大なコストの他、現時点では発電所からエンドユーザまでのすべてのネットワークをカバーしているスマートグリッドソリューションの数は少ないといえる。
スマートグリッド技術に関するすべてのコストや、利益の評価にはまだ時間がかかるので、それまでにスマートグリッドプロジェクトの実施決定を左右する。新技術の普及には、新ビジネスモデル、長期計画や先端システムデザインが必須だ。
スマートグリッド開発や実施レベルを向上するため、政府、自治体、電力供給会社、電力規制当局屋IT企業は協力するべきだと考える。
スマートグリッドプロジェクトを展開している企業の例
スマートグリッドの実施レベルが低いにもかかわらず、世界各国で様々な企業が新しいソリューション開発や導入に努力している。
ČEZ Distribuce (チェコ), Enedis (フランス), E.ON (スウェーデン), Enexis (オランダ) とドイツの Avaconなど、ヨーロッパの発電や配電にかかわるすべての大手企業がスマートグリッドプロジェクトに参加している。
カナダのEmera Inc はニューブランズウィック大学にてスマートグリッド技術の研究センター設立に600万ドルを投資予定だ。
Nokiaはユティリティー、スマートシティや治安確保用の配電ネットワークの現代化を実現する 7705 SAR-Hmという LTE/3G ワイアレスルーターの提供を始めた。
中国のファーウェイは2月にOracleとスマートグリッド開発を目的とする提携を発表した。ファーウェイの記載によると、先端メータリングにおいて協力を続けるため「パワーIoTエコシステムパートナーシップ」にサインしたという。
両社は強固なエンド・ツ・エンドAMIソリューションを目指し、ファーウェイの先端メータリング・インフラストラクチャ(AMI)とOracleユティリティー製品の相互運用性に力を入れている。
両社は事前に自動メータリングやユティリティー分野で協業したことがあって、総合運用性を実現するためオープンアーキテクチャーの上で標準的なIT技術を使うという。
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IoTNEWS代表
1973年生まれ。株式会社アールジーン代表取締役。
フジテレビ Live News α コメンテーター。J-WAVE TOKYO MORNING RADIO 記事解説。など。
大阪大学でニューロコンピューティングを学び、アクセンチュアなどのグローバルコンサルティングファームより現職。
著書に、「2時間でわかる図解IoTビジネス入門(あさ出版)」「顧客ともっとつながる(日経BP)」、YouTubeチャンネルに「小泉耕二の未来大学」がある。