2019年8月28日ウフルは、「HACCP義務化に向けた食品衛生管理の実践実例セミナー」と題したセミナーを開催した。
HACCPとは
HACCPとは、食品の国際化に伴い、原材料、製品などが国際的規模で流通し、また環境汚染、微生物による汚染等々の中で従来行っていた最終食品を検査する方式では危害を十分に防止することは困難になってきていることを背景に義務化される制度だ。
平成30年6月13日に公布された食品衛生法等の一部を改正する法律で、原則としてすべての食品事業者が2021年6月までに、HACCPに沿った衛生管理に取り組むことが盛り込まれている。
「HACCPシステム」の考え方は国連の国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機構(WHO)の合同機関である食品規格(Codex)委員会から発表されたもので、食べ物の安全性を確保するには、その工程・加工・流通・消費というすべての段階で衛生的に取り扱うことが必要となり、食品製造行程中に危害防止につながる重要管理点をリアルタイムで監視・記録していくというものだ。
従来の管理手法では、最終製品に対し規定した基準を満たしているかを検査し、安全性を確認するといったものであった。
一方、HACCPによる衛生管理では、危害要因を各工程において分析し、重要な工程を重点的に管理することで、最終製品が安全であることを証明するものである。
(引用:総合衛生管理HACCP認証協会HP、公益社団法人日本食品衛生協会HPより)
本セミナーではHACCP義務化に向けどのように対策を講じていけば良いか、ウフル、ユーピーアール、ウイングアーク1stの3社が講演を行った。
HACCP義務化を食のサプライチェーン全体の一部として捉える
まずはウフル IoTイノベーションセンター ゼネラルマネージャー 米田隆幸氏(トップ画)から、「次世代の食のサプライチェーンを見据えたIoT/デジタル活用」と題し、食のサプライチェーン全体の中でHACCP義務化をどう捉えるかといった話がなされた。
米田氏はまず、米国のコールドチェーンを例にあげ、「米国ではコールドチェーンマネジメントが工程として義務化されているので、製造業者が責任を持たなければならない」と述べた。
従来は工場・生産者は出荷後の責任を持っていなかったが、現在では工場から倉庫、リテールショップへ運ばれる際にきちんと温度管理がなされているのかといったことに対し、責任を持たなければならない流れになってきている。
しかしコールドチェーンを管理する仕組みを作り、データを取り、改善したからといって、売り上げが伸びるのかといったらそうではないのが現実だという。
そこで、そのデータを新たな領域にどのように活用することができるのか、どういった人たちに販売することができるか、といったビジネスの着眼点を持つことが重要なのだという。
今回の「HACCP義務化」という点だけで捉えるのではなく、その前後に対してのデータの活用、つまりトレーサビリティや自社の流通経路といったデータを提供することで役立つことができるのではないか、といった発想を持つということだ。
また、食品という「もの」だけでなく、「人」に着目して課題や解決策を考えていくことも1つのポイントだと語った。
その例として、セカンドファクトリーが行なっている「THE NARUTO BASE」という事例が挙げられた。
THE NARUTO BASEは、産地である鳴門に拠点を構える六次化支援施設だ。生産者と連携を取りながら、「規格外」と呼ばれる作物を市場に流通させるために商品開発を行う「加工場」、そして、規格外品含め、地元の人が地元の食材を食べられる「レストラン」を併設している。
一次処理を飲食店で行うのではなく、生産地という前段階に持ってくることによって、規格外品の流通だけでなく、店舗での人手不足解消、鳴門側での雇用確保、実際の消費状況をみながら生産を管理することによるフードロスの削減と、地域にも飲食店にもメリットが出ている一例だという。
また、ウフルの取り組みとして、日本特殊陶業と共同開発している陸上養殖の仕組みづくりについての話がなされた。
養殖であっても、海上養殖では海水に含まれる微生物等、生育環境を詳細まで把握することや、理想的な状態にコントロールすることは難しいという。
そこで、陸上養殖といった形を取れば、生育環境の可視化とコントロールが可能となり、フードサプライチェーン全体のトレーサビリティ実現に一歩近づくことができると語った。
次ページは、「現場の状況を把握し必要なツールを導入していく」
現場の状況を把握し必要なツールを導入していく
次に、ユーピーアール コネクティッド事業本部 ICT事業部 目黒 孝太朗氏より「HACCP×IoT 温度監視と帳票作成はIoTでラクできる」と題し、HACCP義務化に伴い現場で行わなければならない作業に対してどのように対策を打っていくか、といった話がなされた。
まず目黒氏は、HACCPに対応するためには「異物混入」「食中毒」「アレルゲン」の3つを抑えていかなければならないと話す。
その際、認証をとったり、チームを組まなければならないわけではなく、まずは各種記録をつけなければならないという。
それが手書きであっても問題はないが、食中毒などの問題発生時の現場の状況を見ると、大抵が忙しい時に起こることが多く、記録をしている暇がないのが現状なのだという。
そこでユーピーアールでは、UPR HACCPという「温度監視」と「帳票」がタブレットで管理できるパッケージの提案を行なっている。
冷凍庫、冷蔵庫、陳列棚・ショーケースなどの自動温度監視を行う。温度変化は履歴としてグラフで確認でき、温度が設定温度から逸脱したときには担当者にメールで知らせてくれるというものだ。
データの閲覧・データ入力はタブレットからでき、提出が必要な帳票を作成することができる。
しかし問い合わせはくるものの、導入することにより直接「売り上げが上がる」、「人件費が削減できる」といった費用対効果が小さく、なかなか導入されないのが現実だという。
発売当初は自動で温度を計測できることをメインに打ち出し、HACCP対応もできるという売り出し方をしていた。しかし現在では衛生管理担当者が各店舗に回って衛生管理をしているか確認に行っている手間を、電子化しデータで管理することによって、交通費や時間削減ができるという売り出し方に変更しているという。
また、輸配送での食品管理の問題についても語られた。食品を扱う倉庫は食品衛生法で分類すると営業許可が必要だが、輸配送は対象外であるため、運んでいる時の管理の問題で食中毒が起きたとしても現在では飲食店の責任になってしまうという。
一部の企業では、自社でトラックを保有し管理しているところもあるが、大抵の食品製造会社はトラック事業者に外部発注している。
その際トラックの清掃管理について注目されており、ユーピーアールでは清掃管理の可視化を行なっている。
トラックを清掃している姿を写真に撮ってもらい、メール本文にナンバープレートを記載する。それを決まったメールアドレスに送るというものだ。
次ページは、「事業者間の協力によりデータの自動取得を実現」
事業者間の協力によりデータの自動取得を実現
そしてウイングアーク1st 流通事業推進室 伊藤一矢氏より「店舗の業務を効率化するHACCP運用支援ソリューションのご紹介」と題し、データをソフトウェアで管理していくツールのHACCPへの応用について話がなされた。
HACCP義務化が発表され、飲食業関係者にヒアリングを行ったところ、紙を使って記録しているところに弊害があるという声が多かったという。
具体的には紙での記録だと用途、人、場所によって分散しているため、取りまとめるのが困難であるという点。また、紙だと内容の確実性がない点が問題だという。
そういった問題に、ウイングアーク1stは2つの観点でデータ化をしていくという。
1つ目は紙運用を脱却し、自動でデータを取り、取得したデータをデータベースに溜め、見たい形でアウトプットするという方法。
2つ目は紙を活かし、現場の運用は変えずに紙に書かれている情報をデータ化して活用できるようにする方法だ。
1つ目の方法はすでに実用化されており、イオンリテールとサトーが共同開発したHACCP対応向けのIoTを活用したクラウドシステムには、ウイングアーク1stのBIダッシュボード「MotionBoard Cloud」が活用されている。
イオンリテールは自社で定めるルールに従い紙で記録を行なっていたが、共通のシステムをクラウド上に置くことによって全国の店舗が同じ基準で管理するシステムを構築した。
データを自動取得できる部分は自動で行い、人が記録するものに関しても紙ではなくタブレットで入力を行っている。
具体的には、各冷機器メーカーのクラウドから、温度管理情報のデータを連携している。各店舗に導入している冷機器はメーカーがバラバラだが、メーカーの協力を得て温度の自動取得を実現しているという。
また、店内で加熱調理器具を使用した際の中心温度データと、従業員の健康チェックデータをタブレットに入力している。
導入の効果は作業時間を一人の作業時間に換算して、58%削減できたという。
また、紙での記録を変えたくないという顧客に対しては、ウイングアーク1stのSPAという文書管理ツールを使い、カメラやスキャナーで画像を読み込み、その中の情報をデータ化するという手法を検討していくという。
この手法は技術検証の段階であり、紙の情報の信憑生や、画像認識の精度の問題などがあり、ニーズに合わせたシステムの構築が必要であるということだ。

