IoTというとハイテクな印象を受けると思うが、やり方によっては子供の知育教育にも応用できる。
子どもらしく体を動かすことで、学びながら楽しく遊べるスマートなモノがあったら、どうだろうか?
今回は、そんなスマートウェアラブルデバイス、「Moff band」を開発した、株式会社Moffの代表取締役 高萩昭範氏にお話を伺った。
A. T. カーニー、メルセデス・ベンツ日本を経て、株式会社Moff設立。2015年9月、Moffの米国法人(100%子会社) Moff USA Inc.を設立。
-Moff設立の経緯を教えてください。
もともと自動車会社にいたこともありモノづくりがすごく好きなのですが、純粋なハードウェアで完結する世界に限界を感じ、そのあとWeb業界に入りました。そこはホットなマーケットではあるのですが、自分には馴染みがなく何か新しい事できないかなと思っていた時に、ちょうどメーカーズムーブメントの流れの中で、モノがインターネットに繋がるという流れがでてきたので、すごく面白いなと思いハッカソンに参加していたメンバーと一緒に作りました。
2013年にシリコンバレーでプレゼンする機会があり、自分たちが作ったプロダクトをプレゼンしたときに、「今後、IoTがくるから絶対やっておいた方がいい」とお墨付きをもらいました。
-Moff Band開発の経緯について教えてください。
自分とメンバーにほぼ同タイミングで子どもが生まれまして、子ども、家族のためになることをしたいなというところから始まりました。
Moff Bandはアプリに繋いで、日常の動作活動をゲームに変えることができるバンドです。動きながら学ぶことや、動きと音を組み合わせることでおもちゃ遊びの体験ができます。
-動きの体験ができるのは面白いですね。子どもを見ていて思いついたのでしょうか。
そうですね。子どもを観察して思いつきました。子どもの遊びは、フィジカル・アクティビティ、フェイストゥフェイス・インタラクション、イマジネーション/クリエイティビティという、この3つの要素が大事だと言われています。
例えば、砂場で遊ぶという行為は、その人の身体能力をあげる事にもなります。コーディネーション運動能力という言い方をするのですが、足は速いけど球技が苦手ということがあると思います。これはコーディネーション運動能力がないということなのですが、そういう方は、おそらく子どものころに体を使った遊びが足りていません。
鍛え方は単純で、子供らしい遊びをたくさんしていたら、コーディネーション運動能力はつきます。身体的に遊んだり、学んだりというのが大事なのです。
-ついテレビやパソコンの前に座りっぱなしになってしまう事はよくありますよね。
たしか1日に7~8時間が、子どもが画面に向かっている時間と言われています。そのレポートでは、「さらされている」という表現を使っていますが、自分の意思とは関係なくても家でテレビがついているとか、街中のスクリーンなど、なんらかの形で画面にさらされているそうです。また、モバイルの登場などもあり、過去数年間で1時間伸びているとも言われています。
アメリカでもApple WatchやFitbitなどのウェアラブルがたくさん登場してきていますが、最近出てくるキーワードが「Move」のようです。ミッシェルオバマが肥満撲滅キャンペーンで「Let’s Move」を立ち上げたのも要因としてあるかもしれませんが、とにかく、Move!Move!動きましょう、と。
-社会的意義が高いですね。
究極的に僕らがやりたいのは、画面ユーザーインターフェイスに代わるユーザーインターフェイス、人間の体の活動そのものがインターフェイスになって、画面とかアイコンに向かって指示を出さなくてもユーザー体験に繋がるということです。
画面UIでいる限りは身体的活動が制約されたり、顔と顔を合わせたコミュニケーションが阻害されたり、という点を解決したいと思っています。
-ゴールはそこだったのですね。IoTの社会では、コントロールするキーボードなどではなくなると思っています。Moff Bandはジェスチャー系に行くのかなと思っていたのですが、そういうわけではないのでしょうか。
いえ、僕らがまずやろうとしているのは、ジェスチャー系です。画像や音声認識は色々登場しているのですが、ジェスチャー系のモノは新しくて可能性もあって世界的にみんな横並びの状態ですので、非常に面白い分野です。
これからユースケースを作って、データを集めて認識精度をあげたもの勝ちです。画像認識と比べて蓄積が何もないので、こういった細かい領域を誰が特化するかという世界ですが、僕らの領域はまだそれ以前の状態です。
-楽しみな分野です。
そうですね、みんなが横一線なので、他社をベンチマークするという事ができず自力でやらなければいけないのですが、その分可能性があって楽しいです。
-例えば、手旗信号やモールス信号のような言語化されているものがあるにも関わらず、ジェスチャーにはないですね。
僕らが考えているのは狭い意味でのジェスチャーというよりは、なんの意図がなくても活動していても認識するという世界なので、単純なコミュニケーションというジェスチャーではありません。
ジェスチャーというと、手を動かしたり足を動かしたりといういわゆるジェスチャーをイメージする方も多いのですが、もっと広い意味にとらえて「動作姿勢認識」という言い方をしています。
-Moff Bandを開発するのにどのくらいの期間がかかったのでしょうか。苦労した点はありましたか。
開発期間は半年ほどですね。苦労した点は、ユーザーさんに使ってもらうレベルの試作品を作るというのが大変で、ユーザーインタビューなどのヒアリングをする方に時間がかかりました。
-最初の試作品から、ユーザーのヒアリングで何か変わったことはありますか。
バンド型にしたのが一番大きいです。はじめはモノに取り付ける四角い形の製品でしたが、手首につける形にしました。スラップバンドという形状のものです。
色々なモノにつけるよりは、色々動かしている時に起点になるのが手首ですので、手首に着けるバンド型にしたら多くの情報が取得できると思いました。中には、ジャイロセンサーと加速度センサーが入っていて、スマートフォンとBluetooth Low Energyで繋がります。
-どのようなゲームがあるか見せていただけますか。
ゲームで数を数えたり、キャラクターに合わせてダンスしたり、自分の声と動きを組み合わせて遊んだりできるゲームをお見せいたしますね。
これは、日本のNHKのような子供向け教育メディアPBS KIDSと共同開発したアプリです。
-面白いですね!
ありがとうございます。PBS KIDSも、動きを加えた知育のイノベーションを起こしたいという想いを持っています。
アプリを使って自発的に身体的活動を促しつつ、その結果をサーバーに蓄積していく予定です。今はまだこのアプリでは対応していないのですが、別のアプリと連携し、身体的活動のデータを使ってフィードバックしていきたいなと思っています。
教育、ゲーム、フィットネスという3つの観点で今、色々動いています。特にアメリカのキッズ向けは肥満の問題などもありマーケットは非常に大きく、アメリカ通信大手のT-Mobileからお声がけいただいてT-Mobileでも販売をしていますし、12月のクリスマスプレゼント需要も期待できます。年を越すと、来年1月のラスベガスで行われるCESにも出展します。
-最後に一言お願いします。
身体的活動そのものがフォーカスされるべきだと思っています。
昔はDVDや本でしか学べなかったこと、例えばヨガやダンスなど家で動画を見ながらやっていたことが、これからはみんなと繋がりながら、自分の動きが映像に反映されるだけではなく、身体的なデータをすぐに取得することができます。
次のユーザー体験が始まっていますので、皆さんとご一緒できると楽しいなと思っています。
-本日は、ありがとうございました。
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