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日本の農業の課題と施設園芸、養液栽培の可能性 ー施設園芸新技術セミナー機器資材展レポート

農業の課題に対する施設園芸の可能性 ー施設園芸新技術セミナー機器資材店in千葉

2019年8月、施設園芸新技術セミナー機器資材展が開催された。

今回は、千葉県の地域農業を支える最先端施設園芸の中で、千葉大学大学院 園芸学研究科 教授 丸尾 達氏による「植物工場/施設園芸の展望、千葉大学・JAグループ千葉との連携」と題した講演を紹介する。

まず丸尾氏より、施設園芸(ビニールハウスなどの施設で行われる園芸農業のこと)の現状について話があった。

施設園芸は1999年にピークを迎え、そこから徐々に減少し、15年間で1万ヘクタール減っている。一方養液栽培(土を使わずに、肥料を水に溶かした液(培養液)によって作物を栽培する栽培法)面積は徐々に増えており、その原因には人手不足、労働力の高齢化が背景にあると考えられるという。

人手不足は年率5%の減少が長期的に続いていくことが見込まれているため、農業全体を5年〜10年スパンで考えていくことが必須だという。

また、人材確保のために最低賃金の引き上げを行い、一人当たりの労働面積も広げていく必要があると語った。

一方、近年の異常気象などを考えると、通年を通して安定的に生産ができる施設園芸への期待が高まっているという。

日本では1980年代から人工光の植物工場の開発・普及を行なっており、近年では大型のものもできている。10年前は蛍光灯光源が中心であったが、東日本大震災以降急速にLED化が進み、年々発光効率や低コスト化、寿命の改善が実現され、新しい植物工場ではLED光源が標準的なシステムになっている。

さらに空間確保ができ、光ムラが極めて少ないシート型のLED光源の開発が行われたりなど、日本のLED光源の研究は世界的に見ても進んでいるという。

LED光源の課題としては、ピーク波長が狭く、品種などにより適合性が悪いことがあることだという。

次ページは、「農業者以外の企業や国が農業に参入していく

農業者以外の企業や国が農業に参入していく

食品産業の企業も5年〜10年後の食料不足を見越し、自ら生産に踏み出した企業も多い。

例えばイオンでは2009年に農業子会社の「イオンアグリ創造」を設立し、農場を運営している。イオン農場の野菜は、収穫後直接イオンの物流センターに入り店舗に配送されるため、一般的な市場流通農産物と比較した場合、1〜2日早く店頭に並ぶ。

そして2015年11月より地域限定で供給されている「今朝採り野菜」は、朝収穫してから3〜4時間で店頭に並ぶという取り組みを行っており、販売先の近くで生産することで物流の問題も解決している。

また、セブンイレブンはプライムデリカと共同で、セブンイレブン向け商品専用の野菜工場を稼働させており、高品質な野菜を安定的に生産することを目的に、専用工場一体型として完全制御型野菜工場「SagamiharaVegetable Plant(相模原ベジタブルプラント)」を開設した。

この工場では、玉川大学との共同開発技術であるLED光制御技術を活用した野菜の生産を実施するとともに、株式会社安川電機による自動化技術を、種まきから収穫までの全工程で取り入れることで生産体制の効率化も図っている。

こういった事例から、様々な企業が大型植物工場への参入、または導入の検討をしているという。

国も次世代施設園芸構想というものを打ち出しており、2013年より全国10箇所で次世代施設園芸拠点の整備を開始した。

出展:農林水産業 次世代施設園芸拠点 整備・稼働状況より

現在は自治体、生産者、実需者等がコンソーシアムを形成し、ICTによる環境制御と地域資源エネルギーを活用した大規模な施設園芸を展開している。

これは野菜を生産するという実務的な側面もあるが、新しい大型農場の課題を抽出し、そのデータを横展開するという構想があるのだという。

次ページは、「生産効率を上げるための新たな品種を開発する

生産効率を上げるための新たな品種を開発

続いて丸尾氏は、葉菜類の養液栽培の今後の可能性について語った。日本の葉菜類の養液栽培技術は世界的に見ても極めて高いという。しかし最大の課題は養液栽培専用の品種がないことだ。

人工光の植物工場では、現在苗を植えてから10日〜2週間程度で100グラムほどの野菜が収穫できる。それを200グラムの収穫にしたり、2日程度早めることができれば経営的に大きなメリットを生むことができる。

そういった環境やシステムは構築されているが、それに合う品種がないのだという。千葉大学では環境制御により環境を変えることで生育を早めることができないかと試行錯誤を繰り返してきたが、それでは限界があったという。

そのため今後は植物工場や養液栽培にマッチした新たなポテンシャルの高い品種を開発することが重要であるとし、千葉大学ではレタスを中心に研究を行っていると語った。

「サラダボウル」という農業法人では、「スプラッシュ」という新たなトマトの品種を独自開発し、独占的に販売しているという。タネの栽培から販売まで全てをサラダボウルで行っているため、生産量をコントロールし過剰生産を避け、価格のコントロールを行うことが可能だ。

このスプラッシュは高糖度処理をしなくとも、8〜9度の糖度を出すことができ、これをプライベートブランドとして販売するというブランディング戦略を行っている。

このように、品種戦略を含めたバリューチェーン全体での戦略が十分な利益を安定的に確保するためには必要だと語った。

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