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国内・海外スマートシティDX事例10選

国内・海外のスマートシティDX10選

まちづくりのDXと言えるスマートシティ。

そのスマートシティの発展系として、内閣府が発表した、まるごと未来都市「スーパーシティ」構想。これはスーパーシティ型国家戦略特別区域で、住⺠と競争⼒のある事業者が協⼒することによって実現する。

前回の記事では、概要やスーパーシティの軸となる都市OS「データ連携基盤」などについて述べた。いまだ世界を見渡して見てもスーパーシティは実現されていないが、スーパーシティの前段階となるスマートシティの事例を見ていく。

ゼロから未来都市を作り上げるグリーンフィールド型

都市の一部区域や工場跡地などで、新たな都市開発を行い、新たな住民を集めるグリーンフィールド型。国内外の事例を5つ紹介する。

1. 中国・雄安新区(バイドゥ・アリババなど)

雄安新区は北京から南に150km離れた河北省位置し、もともと果樹園が広がるのどかなエリアだったが、2017年4月1日に国家級新区となった。国家級新区とは、都市開発を国家戦略に格上げし、開放的な政策を実施しやすい区のことだ。

現在19ヶ所に存在する国家級新区の中で雄安新区がとりわけ注目されているのは、習近平国家主席が主リードする一大国家プロジェクトだからだ。

雄安新区には、バイドゥやアリババ、テンセントなどの大手最先端のテクノロジー企業や研究機関が進出しており、バイドゥが手がける自動運転バス「アポロン」や自動走行清掃車、アリババ関連会社による小型無人配送車、ICタグなどを利用して支払いを自動化する無人コンビニなどの実証実験が行われている。

2. インド

2014年の政権交代に伴い、モディ首相の「Make in India(インドを国際的な製造業のハブにするための投資促進計画)」政策の一環として、「スマートシティ100都市構想」が発表された。

「スマートシティ100都市構想」は、都市開発省(MoUD:Ministry of Urban Development) が所管しており、MoUD が重点的に取り組むべきスマート要素をガイドラインで設定し、選定都市に補助金を支給する枠組みである。

スマートシティ・ガイドラインは以下となっている。

上記のように、インドにおけるスマートシティとは、現時点では、社会基盤の基礎となるインフラの構築や整備などの要素が高い。

通信IT省が推進主体となってはじまった「デジタル・インディア計画」では、都市OS「インディア・スタック」を軸に下記内容のサービスを提供している。

新型コロナウイルス感染拡大の際に政府は、インディア・スタックを活用し貧困層を対象に現金給付を実施した。

3. カナダ・トロント(Google系列サイドウォークラボ社)

カナダのトロントで発表されたウォーターフロントの再開発は、Google系列のサイドウォークラボ社が受託し、ビッグデータを活⽤する未来の街づくりを計画した。

ここでは、都市の建物、道路、施設などにWifiやセンサーを配置しデータを収集し、オープンデータ化を図り、多様な企業が、新しいイノベーションや サービスが⽣まれるエコシステムを構築する予定だったが、個⼈情報を収集することに対し近隣住⺠が懸念を表明。2020年5⽉コロナにより事業採算性が取れないことを理由に、事業から撤退した。

4. 日本・静岡県裾野市(トヨタ)

トヨタは、2020年末に閉鎖した静岡県裾野市の東富士工場の跡地を利用して、将来的に約70.8万m2の範囲において、自動運転などの次世代技術を実証する未来都市「Woven City(ウーブン・シティ)」を整備する。着工は、2021年2月23日(富士山の日)。

このプロジェクトは、人々が生活を送るリアルな環境のもと、自動運転、モビリティ・アズ・ア・サービス(MaaS)、パーソナルモビリティ、ロボット、スマートホーム技術、人工知能(AI)技術などを導入・検証できる実証都市を新たに作るものだ。初期は、トヨタの従業員やプロジェクトの関係者をはじめ、2,000名程度の住民が暮らすことを想定している。

Woven Cityの主な構想としては下記が挙げられている。

5. 日本・福岡県福岡市

福岡市は2014年に、福岡市グローバル創業・雇用創出特区(国家戦略特区)に指定されており、国内外から人と企業を呼び込み、起業や新規事業の創出などを促進する取り組みを続けている。

2019年ごろから、福岡市東区の九州大学箱崎キャンパス跡地に、グリーンフィールド型のスマートシティ「FUKUOKA Smart EAST」の計画が進んでいる。「FUKUOKA Smart EAST」の広さは東京ドーム11個分以上(約50万平方m)となり、この場所は福岡の中心地である天神や、福岡空港にほど近いロケーションであり、アクセス環境が整っている。

ここでは、自動運転のクルマやコミュニティバスの走行、ドローンによる荷物の配達、IoTデバイスによる高齢者や子どもの見守り、キャッシュレス決済などの未来都市を計画しており、すでに小型荷物運搬車両の自動走行のデモ、ドローン配達の実証実験、シェア型電動キックボードの実証実験、自動運転バスの試乗体験などが行われている。

既存の都市を造り変えるブラウンフィールド型

ゼロから作り上げるグリーンフィールド型ではなく、すでにできあがっている既存都市で住民合意を形成しつつ都市のDXを進めていく、ブラウンフィールド型の事例を5つ紹介する。

6. UAE(アラブ⾸⻑国連邦)・ドバイ

2014年、ドバイ政府はドバイをスマートシティ化するために2021年までのロードマップを⽰した「Smart Dubai 2021」を発表。

Smart Dubai2021は、 「スマートライフ」「スマートな経済」「スマートなガバナンス」「スマートなモビリティ」「スマートな環境」「スマートな⼈々」という市⺠⽣活に関わる6つのテーマからなり、取り組みとしては下記のような内容がある。

ドバイでは、2030年までにドバイの総輸送の25%を自動走行にすることを目指している。現在では、各乗客の目的地に合わせて、複数の車両を切り替えながら最適に運航できる自動運転車両「pods」や、カメラやレーザースキャナーで 100m先の物体を検知でき、容疑者を追跡できる自動運転パトカー「O-R3」、自動飛行する空中タクシー『Autonomous Air Taxi(AAT)」などがある。

ブロックチェーンにも力を入れており、金融取引、教育、不動産取引、観光、ヘルスケア、交通、セキュリティなどの分野で取り入れている。さらに、裁判所や企業の登記など行政のほとんどの記録・処理でブロックチェーンを活用することをめざしている。

7. シンガポール

シンガポールは、1980年代より電⼦政府化に取り組んでいる。

さらに、都市問題への対処や都市全体のデジタル化を⽬指し、2014年にリー・シェンロン⾸相が国家戦略としてICTを積極導⼊し、経済や⽣活⽔準の向上を⽬指す「スマートネーション(Smart Nation) 」構想を発表した。

複数の都市が選定され、下記の6分野で取り組みが進む。

デジタルツインで有名な事例として、シンガポールを丸ごと3D化した「バーチャル・シンガポール」がある。これは、ビッグデータやIoT、3Dモデリング、予測解析など、さまざまな技術が統合されている。政府、住民、企業だれでも使うことができ、インフラ管理、エネルギー管理などさまざまな用途で活用可能だ。

取り組みの事例としては、自動運転のクルマやバスの実証実験、交通費の支払いが可能なウェアラブル端末の開発、個人的な受診記録の管理ができるツール「Health Hub」の開発、スマート水道メーターを通じた水漏れの検出、IoTを活用した高齢者見守りアラート、介護支援ロボットなどがある。

8. エストニア

エストニアの人口は約130万人ほどで、面積は九州と同じ程度という小国でありながら、デジタル活用において世界中から注目されている。エストニアは、1994年から電子政府の取り組みを開始しており、下記にあげるようなさまざまなサービスを展開している。

電子政府サービス「e-Estonia」

ICT活用を国策とするエストニアでは、「効率」と「透明性」をキーワードにさまざまな電子政府サービス「e-Estonia」を国民に対して提供しており、行政サービスの99%が電子化されている。

国民にICチップの入ったIDカードを発行し、IDカードまたはモバイルIDにより携帯電話から電子政府ポータルへのログイン、電子文書への電子署名が可能となっている。このIDカードは約99%の国民が所持しているという。

情報交換基盤「X-Road」

「e-Estonia」の基軸になっているのが、行政サービスに関連する情報をインターネット上で交換するための情報交換基盤「X-Road」だ。

これは、分散されたデータベース(行政機関/医療機関/研究機関等)をセキュアに連携させるプラットフォームであり、ブロックチェーン技術が採用されている。

電子IDカード「Electronic ID Card」

エストニアでは15歳以上の国民に電子IDカード「Electronic ID Card」が配布され、保持が義務付けられている。これには、身分証明証、健康保険証、運転免許証、公共交通機関のチケットなどの機能が含まれている。

「Electronic ID Card」と「X-Road」が連携することで、医療情報サービス「e-Health」を含め、納税、警察、教育、選挙、会社の登記、駐車場料金の支払いなどの行政サービスを、IDカードを用いてペーパーレスで利用することができる。

医療情報サービス 「e-Health」

「e-Health」では、国内全ての病院での診断・検診結果が電子的に記録されるようになり、患者は自身の診断・検診結果をインターネット上のポータルサイト(Patient Portal)で閲覧できる。

「e-Health」の導入により、医師は、自分が担当する患者の既往歴や過去の診断・検診結果、アレルギー、薬の服用履歴などの多種多様な医療情報を集約したデジタルファイルにアクセスできるようになり、迅速かつ適切な処置が可能になった。

電子居住権「e-Residency」

2015年から、外国からの投資、企業誘致などを促進するため、電子居住権「e-Residency」の制度を導入している。「e-Residency」では、海外にいながら法人登記ができ、エストニアの企業としてEU市場でのビジネス機会を得ることができる。さらに、エストニアの公的プラットフォームが利用可能となる。

エストニア政府が発表したデータによると、2020年時点で外国人の 「e-Residency」 登録者数は70,000人に達しているという。

9. 福島県 会津若松市(アクセンチュアなど)

会津若松市では、リーマンショック以降、ファブレス化が進み製造業などの工場誘致などに対する過度の依存にはリスクがあり、会津大学の卒業生の8割が県外へ就職してしまうという課題があった。

そこで、会津大学というICT専門大学の存在と、12万人都市という実証実験をするにあたって適切な規模を生かし、スマートシティの推進を目指す活動を行っており、2014年には内閣府の地域活性化モデルケースに採択された。

2015年には、会津若松市における“産官学金労言”一体となった地方創生を推進するために「まち・ひと・しごと創生包括連携協議会」が設立。アクセンチュア、シスコシステムズ、インテル、イオンなど、多くの企業が参加しており、下記のような取り組みがなされている。

将来的には、予防医療の推進としてIoTを活用したヘルスケア事業の創出や、全国で利用可能な共通ID(ゆうびんID)を利用することで、官民ワンストップサービス提供を目指す。2020年にはスーパーシティ構想へ挑戦すると発表している。

10. 日本・横浜(東京電力エナジーパートナーなど)

横浜市は、2010年に経済産業省から「次世代エネルギー・社会システム実証地域」に選定され、横浜スマートシティプロジェクト実証事業を推進してきた。

家庭や業務ビルをはじめ、既成市街地でのエネルギー需要バランスの最適化に向けたシステムの導入などを、エネルギー関連事業者や電気メーカー、建設会社など34社と横浜市が連携し取り組んできた。2013年には、HEMS4,200件、太陽光パネル37MW、電気自動車2,300台を導入し、CO2削減率29%を達成した。

2015年以降は、上記実証実験で培った技術やノウハウを生かし、実証から実装へと展開するため、さまざまな下記の取り組みなどを行っている。

2023年に向け、脱炭素化に向けた「最先端のスマートシティ」の実現を⽬指している。

 

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