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GM、次世代により良い未来を創出するプラットフォーム・イノベーターへの変化 ーCES2022レポート2

CES2022レポートの第二弾は、昨年に続きオープニングキーノートをつとめたGMだ。

筆者が視察を始めた2011年以降、オープニングキーノートが同じ企業になったのは初めてだ。さらにそれを担うのが自動車メーカーであることもCESの変化を感じる。

オープニングキーノートの前日夜に実施するプレショーキーノートでは、サムスンが登壇したが、2012年までは毎年Microsoftが行っていた。

これは、コンピューターテクノロジーの進化がコンシューマーデバイスの進化と連動していたためである。2012年、当時のCEOであったスティーブ・バルマーがCESにおける役割を終えた、と言っていたことが記憶に新しいが、そこから10年足らずでトレンドは一変した。

実際、自動車メーカーが2年続けてCESのオープニングキーノートに登壇するということを、当時予測できた人はいないだろう。しかし、利便性よりも環境や格差などの社会課題解決にテクノロジーへの期待が変化したことで、自動車メーカーがその象徴になった。

GMのキーノートは、内容的には昨年の延長線上にあるものが多かったが、昨年は彼らの存在意義とアプローチを可視化した場だった。GMにおいては「Zero」だ。

このZeroには3つの意味が込められている。「渋滞ゼロ」「排出量ゼロ」「事故ゼロだ」。その結果として、モビリティに留まらない社会への貢献とサステナブルな未来があるということだ。

昨年はGMの存在意義でもある、「3つのZeroに向かうための宣言の場」と捉えるとしたら、今年は「Zeroを実現するための進捗と、具体的なアウトプットがいくつも発表された場」だった。そのコアとなる技術がアルティウム・バッテリーだ。昨年のCESでも紹介していたアルティウムは、電気自動車(EV)用新型バッテリーのことで、以下のような特徴がある。

GMアルティウム

これらの特徴の他、レアメタルコバルトを利用せずアルミニウムで代替するようなサステナビリティを考慮した工夫も昨年のCESで紹介されていた。

今回のキーノートではGM CEO Mary BarraがラスベガスではなくGMの本社があるデトロイトのフォックステアトルからリモートでプレゼンを行った。

サスティナビリティへの取り組み

冒頭に気候の衡平性(Climate equity)と持続可能性(Sustainability)の追求のために、人とモノの移動を再定義し、3つのZeroの実現していくことが重要であると述べた。

そして、これまでの10年間で電化、ソフトウェア対応、自動運転技術の導入を進めてきたことでGMは自動車メーカーからプラットフォームイノベーターに変わることができたという。

またカーボンニュートラルについても2040年に達成するために、2025年までに30車種以上のEVを提供するだけでなく、2035年までに全ての乗用車をEVにするとした。

そのために昨年秋にEV生産工場「Factory ZERO」をグランドオープンし、並行して複数のバッテリープラントも設立し、着々とEVの生産インフラを整えている。また2025年までに北米の工場など、全ての施設に再生可能エネルギーでの電力供給を行えるようにし、2035年までに北米以外の地域もカバーするという。さらに昨今の半導体不足による計画遅延の発生防止と、生産プロセスの効率化のために半導体メーカーとの提携も促進する。

EVが市場で増加すると共に必要となるのが、EV充電インフラだ。

こちらについても7億5000万ドルを投資して、北米とカナダで4万基を超えるEV用普通充電器の設置と、充電器へのアクセスや決済などを簡単にできるようにするモバイルアプリの提供を行う。

新型バッテリー「アルティウム」の搭載

アルティウムは、電気自動車の動力プラットフォームであり、形状やモーターなど含めて様々な大きさ、車種に最適化することができる設計になっている。

これまでの自動車は、燃料種別や排気量が変わることで、ベースの設計が根本から変わってくることは珍しくなかったが、アルティウム・プラットフォームによるEVは設計も製造も大きく効率化できるという。

キーノートでは2023年に発売するHD(ヘビーデューティー)トラックのシボレー・シルバラードEVをメインで紹介していたが、大型車、小型車問わず、次々とアルティウムを搭載したEVが登場していくことになる。またUltiumは鉄道や航空機への展開も進めているという。

アルティウムによるEV化で、GMグループも、パートナーやモビリティを活用する業界も成長戦略を実行する中で、次世代へより良い未来を創造していくことをアルティウム・エフェクトと言い、現状におけるEVの大型契約に言及した。まず、シボレー・シルバラードEVの大口顧客としてレンタカー事業を展開するエンタープライズ・ホールディングス、通信等のインフラ整備を行うクアンタ・サービスからも車自体のユーティリティ性だけでなく、長期的な社会貢献への期待が述べられていた。

フェデックスやウォルマートとの取り組み

CES2021で発表されたEV物流トラックEV410、EV600や電動パレットEP1及びEV物流エコシステムを提供するブライト・ドロップは、既にフェデックスとウォルマートでの導入が決まっている。

フェデックスの北米プレジデント Richard SmithからもGM同様、2040年にカーボンニュートラルの実現を目標しており、物流モビリティのEV化が必須と捉えているとのコメントがあった。

昨年末からEV物流トラックEV410、EV600の納入が始まっており、今後数年間で2万台のEV物流トラックを納めることになるという。

ウォルマートCEOのDoug McMillonも2040年までに物流によるゼロエミッションを達成するためにEVの導入を推進するとコメント。ウォルマートの店舗・倉庫からの2日以内配送やSam’s CLUBでの2時間以内配送の実現と利用者の増加に対応するためにも多くのEV配送トラックが必要だ。2023年までに5000台のEV物流トラックを導入するという。

ウォルマートとは2021年に無人自動運転による非接触配達の実証実験をアリゾナ州スコッツデールで行っている。自動運転開発部門のクルーズがメインで進めているプロジェクトで、この実証実験を経て一般道での自動運転の提供が見えてきた。

高速道路でのハンズフリー運転を可能とするスーパークルーズは2022年モデルの6車種に搭載され、2023年までにGMブランドの22モデルの搭載される予定だ。

一般道含めたドアツードアの95%でハンズフリー運転を可能とするウルトラクルーズも2023年に提供する予定だという。ウルトラクルーズは、クアルコムのスナップドラゴン ライド プラットフォームをベースにGMとクアルコムが共同で開発したアーキテクチャーによって提供される。

自動運転のためのソフトウエアプラットフォーム「アルティファイ」

Linuxベースのソフトウェアプラットフォーム「アルティファイ(ultifi)」はスーパークルーズ、ウルトラクルーズなどの自動運転機能を提供するために必要となるもので、2019年にリリースされた自動車のハードウェアをマネジメントするVIP(Vehicle Intelligence Platform)と連携するクラウドと車両が繋がる時代のモビリティOSだ。

アルティファイは、2023年以降、複数の車種に搭載されていくとのことだが、車の状態だけでなく、誰が乗車していてどのような状態なのか、路面や周囲の状況、クラウドから得た情報などを踏まえた車両のコントロールを実現する。

またハードウェアに依存していた進化を可能な限り機能をソフトウェア化することで、同じ車に乗車しながら、どんどんパーソナライズされていく体験が得られる。スーパークルーズ、ウルトラクルーズは、アルティファイを介してサブスクリプションサービスとして利用できるようになるという。このような様々なプラットフォームを開発し、組み合わせることで新たなモビリティを生み出していく戦略こそが、プラットフォームイノベーターということなのだろう。

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