サイトアイコン IoTNEWS

ハピロボ、自律走行パーソナルロボット「temi」日本発売を発表

ハピロボ、自律走行パーソナルロボット「temi」日本発売を発表

2019年10月17日、hapi-robo st(以下、ハピロボ)はパーソナルロボット「temi(テミ)」の国内正式発売を発表した。会見ではパートナー企業の代表も登壇し、「temi」の活用などについて語った。

自律走行のパーソナルロボット「temi」

「temi」はtemi USA inc.(以下temi社)が開発した自律走行・AIによるコミュニケーションができるパーソナルロボットである。

会見場にデモ展示された「temi」

「temi」ではあらかじめ登録したルートを自ら障害物をよけながら道案内する、あるいは声で呼びかけると人の後を付いてくる走行機能のほかにスマートスピーカーを通して、情報の検索や遠隔の人間とのビデオ電話などができる。

会見では最初にハピロボ代表取締役社長の富田直美氏が登壇し、「temi」の概要について語った。

ハピロボ代表取締役社長の富田直美氏

まず富田氏は「temi」に関する3つのデモ動画を上映し、前記のような「temi」の機能について紹介した。

1点目の動画は、家庭内で男性が「temi」に向かって話しかけ、屋内にある家電製品のスイッチを操作し、「temi」のディスプレイで情報を検索する姿が映されていた。この動画で富田氏は「temi」がそれ1台であらゆるモノとつながり、様々な能力を有したロボットであることを説明した。

2点目の動画では、高齢の男性が「temi」を杖代わりにして立ち上がり、健康状態のチェックや遠隔にいる医師とのやり取りを「temi」で行う様子が映されていた。富田氏はこの動画を見せながら、「temi」が高齢者でも簡単に扱えるロボットであることを強調した。

3点目はサンフランシスコに家庭を持つ女性が、出張中の上海から「temi」のテレビ電話を使って家族を会話する動画だった。これについて富田氏は「何もしなくても、今そこに瞬間移動できる」と表現し、「temi」が遠隔でのコミュニケーションに役立つことを示した。

「temi」4つの特長

「temi」に関する3つの動画を上映した後、ハピロボ・富田氏は「temi」に関して4つの特長を述べた。

1つは「お祖母ちゃんが使える優しいユニバーサルデザイン」。富田氏によれば「temi」は「おばあちゃんが椅子に座って、杖として使える」ものだという。下記の写真は会見場にデモ展示されていた「temi」だが、赤丸で囲った部分に手をかけることで、足腰の弱い高齢者は「temi」を杖代わりにして立つことができるそうだ。

2つ目は「世界トップの衝突回避ロボット技術を親会社が保有している」ことだとハピロボ・富田氏はいう。

3つ目に「スマホ、ドローン、ネット技術のレガシーを活かす知恵」という事を挙げた上で、富田氏は最後の特長として298,000円という「個人でも購入できる価格である」ことを紹介した。「temi」の日本販売開始は2019年11月1日だという。

容易な操作・低価格帯を目指した「temi」

ハピロボ・富田氏に続き、temi社のCEOであるGal Goren氏が登壇し、「temi」開発の背景について語った。

temi社CEOのGal Goren氏

Goren氏はまずロボット開発技術が進んでいる要因について、「多くの自動化されたナビゲーションが進化をしていること、それが現在ロボティクス技術を可能にしている」とし、さらにハードウエアが安価に手に入ること、高度なAIやアルゴリズムが登場したことなどをロボット技術の進歩の要因として挙げた。

さらにGoren氏は「産業用ロボットは繰り返し同じようなタスクを実行するというところに長けている」とし、一方でパーソナルロボットについては「人があるいはユーザーが次にどんなことを行いたいのかということをマシーンは読み取れる情報がないので、常にサプライズモードにある」と両ロボットの特性の違いについても触れた。

こうしたロボット開発の概要を説明した後、Goren氏はパーソナルロボットである「temi」を開発する上で2つの課題があったことを明かした。

1つは「個人誰でも、例えばおばあさんや、あるいは小さいお子さんだったとしても誰でも使うことができるものということ」。

もう1つは「どんな人でも購入可能な価格帯の範囲内にすることによって、価格に対しての価値を感じてもらえるようにすること」。

1番目に挙げた使いやすさについては、「操作は非常に簡単かつ自然な形で使っていただけるものになっている」とGoren氏は説明を加えた。

「temi」の世界展開については「世界各国でBtoBあるいはBtoCという形で既に導入を進めている」とGoren氏は語り、さらに日本での正式販売については「日本が今後もTemiを引っ張っていく市場になると考えている」と所感を述べた。

日本の市場が「temi」を牽引すると思った理由について、Goren氏は「新しいテクノロジーを生活に採用する確率が、日本のユーザーは非常に高いという風に見ている」からだとし、さらに「日本は物事に鮮度を求める文化を持っているから」とも付け加えた。

次ページは、「「渋谷パルコ」に「temi」導入

「渋谷パルコ」に「temi」導入

Temi社・golen氏に続き、「temi」のパートナー企業の各代表から「temi」活用についてのコメントがあった。

まずはパルコ・執行役の林直孝氏からは、11月22日にグランドオープンを迎える「渋谷パルコ」への「temi」導入について話があった。

パルコ・執行役の林直孝氏

まず林氏は「パルコは過去さまざまなロボットの実証実験を、店舗の案内代行や、販売スタッフの作業効率をロボットで軽減するといった視点でやってきた」とこれまでの取り組みを振り返った上で、「その実験の中で、やはり導入における様々な課題を抱えているということを学んできた」と語る。

その課題とは、具体的には「商業施設においてロボットを導入する際の、導入位置のルートの設定や、あるいは安全に走行するためのエンジニアリングの部分」だとし、「多くの商業施設ではエンジニアを抱えておらず、非常に多くの方々のご協力をいただいたうえで、初めてロボットを安全に走らせることができる」状態になることを林は述べた。

こうした課題を踏まえて、パルコ・林氏は「temi」を導入するメリットを「簡単なアプリ上の操作で、ルートの設定から安全な走行の部分を自分たちでできる」という導入の容易さにあることを説明した。

更に「音声認識や音声回答をAIに頼る案内ロボットの実験をこれまでもやってきており、可能性が非常に広がることを感じる一方で、すべてのお問い合わせを人間のように行えるところまでにはまだ達していない。ただ、このTemiは遠隔で人が操作するということでクリアしている」という案内役ロボットとしての有用性と、低コストでの購入ができる点にもついても林氏は触れた。

11月オープンの渋谷パルコでの導入については「パルコとクラウドファンディングの事業を展開するCAMPFIREとの共同運営店舗「BOOSTER STUDIO by CAMPFIRE」において導入することを決定している」と林は述べた。

具体的な活用法については「店舗で実際に「temi」を来店客に体験してもらい、販売・注文・問い合わせを受付する」ことから「将来的には「temi」のコミュニケーション能力を活かし、店頭に置いてある製品を開発された方と来店客が、「temi」を通じて直接コミュニケーションがとれるようなことにチャレンジしたい」という。

図書館での案内役にもなる「temi」

パルコに続き登壇したのは、「temi」の開発パートナーであるコトバデザイン・執行役員社長CEOの栄藤稔氏である。

コトバデザインは対話インターフェースのエンジン開発を行う会社である。今回、コトバデザインは同社の開発する対話エンジン「COTOBA Agent」を「temi」に提供している。栄藤氏は「COTOBA Agent」について「我々の作った対話エンジンからアンドロイドのエンドポイントを呼ぶだけでいろんなデモができるようになる」と語った上で、2つのデモ動画を見せた。

1つはデパート内において、店舗内案内を行う「temi」の様子だ。動画では男の子が「temi」に誘導されて、文房具売り場まで案内される模様が撮られていた。

もう1つは図書館内を誘導し、利用者が借りたい本の場所まで誘導する「temi」の動画だ。コトバデザイン・栄藤氏は「人間には図書館内の本がどこにあるか、を全て覚えられないと思うが、そこをちゃんと機械が補うという利用法はあると考えている」と述べた。

次ページは、「各パートナー企業からのコメント

各パートナー企業からのコメント

パルコとコトバデザイン以外にも、各パートナーの企業の代表から「temi」活用に関するコメントがあった。

「temi」パートナー企業の一覧

NTTファシリティーズ・代表取締役社長の一法師淳氏は「少子高齢化・エネルギー問題といった課題を解決できるような町づくりを目指すNTTアーバンソリューションズという会社を作った。その時のバリューがコミュニティ、ダイバーシティ、イノベーションとレジデンスということを実現していこう、というものだが、それぞれの分野でTemiが活かせるのではないか、と考えている」と述べた。

大塚商会・上席執行役員の大谷俊雄氏は「SMFLレンタル株式会社と連携してレンタルサービスの準備をしていて近々リリースする予定である」とし、「業界業務に精通したソフトメーカーとアライアンスされているので、いかに「temi」を業務プロセスに組み込んで価値を上げていくのかを模索していく」と語った。

大和ハウス工業・上席執行役員の田村哲哉氏は「今まで提供した住宅の生活空間等々での高齢化・働き方改革・デジタル化といった社会の変化に対し、その生活空間をいかにイノベーションしていくか、ということが我々のミッションに変わっていく」と述べた上で、「コミュニケーションということをキーワードに、孤独な状態にしない町、様々な情報が共通に認識される町、などを「temi」で実現していきたい」という。

モノプラス・代表取締役の秋葉淳一氏は「働く場所で人手不足が言われており、ロボットの利用が話題に上がっている。しかし今までの産業用ロボットは用途が先にあって作られたロボットであり、非常に高額である」と語り、「しかし今回の「temi」はパーソナルで使えるロボットとして、価格が全然違う。その代わり用途があってのロボットではないので、「temi」の方が「私の使い方を考えてくれ」と問いかけているように思う」と安価な「temi」の活用を模索することを述べた。

蔦屋家電エンタープライズ・執行役員の吉崎真矢氏は「人や世の中を豊かにするライフスタイル提案の企画・推進を行う企業として、「temi」はまさしくそういった意味で非常にマッチするプロダクト」とし、「二子玉川蔦屋家電の10フロアにて体験コーナーの設置、また製品の販売、BtoBの販売などに取り組んでいく」と具体的な展開を語った。

テクムズ・代表取締役の鈴木孝昌氏は「AIの技術を使い、データを蓄積して行動に移すというところまでの自立型ロボットを目指して、優秀なホテルのコンシェルジュのように皆様の生活の中に溶け込むようなロボットを作っていきたい」と、同社のAIと「temi」を組み合わせてコンシェルジュサービス分野でのロボット提供に取り組んでいくことを述べた。

最後に挨拶を行ったミライト・エックスは、「temi」購入後のサポートを担当するパートナー企業である。同社・常務取締役の吉田悠司氏は「全国に1000名ほどサービス要員がおり、それをコントロールできるコンタクトセンターと独自のマネジメントをしていく管理システムを保有し、それぞれの作業、工程が見える化できる」ことを企業の強みとし、「temi」をサポートしていくことを語った。

会見の締めくくりにはH・I・Sグループ代表取締役会長兼社長CEOの澤田秀雄氏が登壇し、「我々は昔、「変なホテル」というロボットホテルを開発したが、今回は本物のロボットということで様々な場面で活躍できるよう、顧客の声を取り入れていきたい」と述べた。

モバイルバージョンを終了