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ダイキンが提案する、空気・空調の新しい価値 —CEATEC JAPAN 2018レポート2

ダイキンが考える空気・空調の未来像 —CEATEC JAPAN 2018レポート2

CPS/IoTの総合展「CEATEC JAPAN 2018」が、千葉県の幕張メッセで開催されている(10月16日~19日の4日間)。本稿では、CEATEC初出展となるダイキン工業株式会社の展示内容を紹介する(ローソンの展示を紹介したレポートはこちら)。

空調専業メーカーのダイキンは、初出展の目的を「国内外、業界を超えた様々な「対話」から新たなビジネスパートナーの獲得」(同社ブースでの配布資料より)として、明確に打ち出していた。産業と業界の垣根を超え、「共創」によって新たなビジネス創出を目指すというCEATECのコンセプトを象徴する展示の一つだった。

製品の紹介は最小限におさえられ、ダイキンの強みである空気の情報データや空調コントロールなどの最新技術を提案したうえで、それらと連携した空気・空調の未来のソリューションを他の企業と一緒に考えていくというコンセプチュアルな展示がメインとなっていた。

従来、エアコンの価値は「冷たい空気」や「温かい空気」を生活者にもたらすことだった。しかし、ダイキンは今そうした部分最適な価値ではなく、「よく眠れる空気」「食事がおいしくなる空気」「集中できる空気」といった、ヒトのニーズに直結した空気を創り出すことを目指している。

そうした新しい空気の価値を創るには、空気に関わるあらゆるデータや技術をフル活用しなければならず、ダイキンの技術だけでは実現できないという。そのため、他の企業との「共創」が不可欠になってくるのだ。


協創プラットフォーム「CRESNECT」でオフィス空間の価値を創る

「空間をつなぐ協創プラットフォーム」として、ダイキンは今年の2月に「CRESNECT」を発表した。

空気とひとことで言っても、住居や職場など、場面によってその状況やニーズは異なる。職場に関して、同社は今年の2月に空気・空間のデータを活用した協創プラットフォーム「CRESNECT」を発表している(上の画像)。

「CRESNECT」は、ダイキンが持つ膨大な空気・空間のデータやさまざまな業界のパートナー企業がもつデータを統合し、さらにAIを活用した分析によってオフィスワーカーが快適に仕事に取り組むためのサービスをつくる基盤だ。

「CRESNECT」の参加パートナー

パートナー企業には既に6社が参画(上図)。たとえばOkamuraとの取り組みにおいては、同社が提供する心拍測定チェアから顧客の集中度を分析し、商談スペースなどで顧客が心地よく話を聞くことのできる空間創出に取り組んでいる。

まずは市場ニーズの高いオフィスビル空間を対象に取り組み、今後は店舗や高齢者施設、病院、教育施設などにおいても展開していくという。

次ページ:快適な室内環境をサポートするIoTソリューション「Beside」

快適な室内環境をサポートするIoTソリューション「Beside」

暮らしをサポートする空気のコントロールシステム「Beside」

職場や住居問わず、室内環境においてダイキンの中核となるIoTソリューションが「Beside」だ。一つのセンサーから「温度」・「湿度」・「臭い」・「CO2」・「PM2.5」を検知し、その状況に応じて各空調機器に指令を出すシステムだ。

従来のエアコンは温度と気流のコントロールと空気の清浄が可能であり、ダイキンの「うるるとさらら」では新たに湿度コントロールが追加されていた。そして、今回の「Beside」ではセンサーユニットによって新たに「CO2」と「PM2.5」を測定できるようになった。

思考力や集中力の低下の原因となるCO2濃度が高くなった場合には、外気を取り入れる吸気口の「IAQユニット」が開き、新鮮な空気を自動的に取り入れることができる。

ダイキンは、「Beside」を1~2年以内に製品化することを目指している。

右が「Beside」システムのセンサーユニット。このセンサー単体で温度・湿度・臭い・「CO2」・PM2.5を検知できる。また、それらのデータはタブレットで可視化できる。

住居空間の空気について、興味深いコンセプト展示がいくつか見られた。その一つが、「眠り・起床をサポートする空気」を創り出すシステム「Sheep Sleep」だ(下図)。

「Sheep Sleep」は照明であると同時に、ベッドの上で眠っている人の顔に空気砲を当てる機能を持つ。今回はデモのため、空気砲は白いスモークで可視化されている。ヒトの体動を検知する「ドップラーセンサー」(照明の手前にある球状の物体)も搭載しており、睡眠者の眠りの状態にあわせて温度をコントロールしたり、目覚めとタイミングで空気砲を当てたりすることができる。

天井にある照明が「Sheep Sleep」だ。しかしこれはただの照明ではなく、ベッドに向かって「空気砲」を放つ機能が搭載されている。今回はデモのため、白いスモークで可視化しているが、実際にはただの空気だ。また、空気砲の他にヒトの体動を検知できる「ドップラーセンサー」が搭載されている。

ベッドに入ると「ドップラーセンサー」が検知し、室内の照度を下げるとともに「ふんわり」と空気を当て、ゆりかご効果によって入眠をうながす。

また、「ドップラーセンサー」が検知したヒトの体動からは、その深部温度と睡眠の深さを推定することができるという。

もし、深い睡眠に至っていない場合は、深部体温に合わせて部屋の設定温度をコントロールし(他のデバイスと連携)、心地よい睡眠の環境をつくる。また、目覚めのタイミングで空気砲を放つことで、自然な心地よい目覚めをもたらすこともできる。

ブース担当者によると、「Sheep Sleep」は開発されたばかりであり、その効果や用途はまだまだ模索する段階だ。空気砲にアロマ成分を混ぜたりとさまざまな応用が考えられるが、これについても他の企業と一緒に検討していきたいという。

次ページ:空気が食事をおいしくする

空気が食事をおいしくする

最後に、ダイキンの「食事をおいしくする空気」の取り組みを紹介する。

食事の快適さとおいしさは、室内の環境に大きく左右される。たとえばコース料理においても、前菜やスープ、肉、魚、デザートなどのメニューによって、適切な室内環境は異なるのだ。

そこでダイキンは、食事に合わせて空気の環境を制御するソリューションを開発中だという。

ガラスの窓の奥の部屋では、「最もワインがおいしく飲める室内環境」に保たれている。

今回、その一例として紹介されていたのがワインだ。ワインは空間の温度と湿度によって味わいが大きく異なる。その違いを、「ワインが最もおいしくなる室内環境(温度と湿度)」に保たれた部屋と外の展示会場の環境で飲み比べるという体験型デモンストレーションを行っていた(上の写真)。

ブース担当員によると、温度や湿度がワインそのものに与える影響については多くの知見があるが、ヒトの味覚においてはまだデータが足りないという。

そこで、温湿度の他にワインを飲んだヒトの感想やバイタルデータなども合わせて、AIを活用した分析などを行うことで、ヒトが最も食事をおいしく味わえる空気を創り出すことを目指している。

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