LPWA(Low Power Wide Area Network)の事例はまだそれほどない。そんな中、前回の記事で書いた通り、ソラコムはLoRaWANのゲートウェイやデバイス部分といったハードウェア、データのアップロードから蓄積までをサポートするクラウドサービスを発表した。
そんな中、今回のSORACOM LoRaWAN Conference 2017レポートの第二弾では、ソラコムの評価キットを使ったLoRaWANを活用した具体的な事例を紹介していく。
前回の記事:
ソラコムのLoRaWANのシェアリングエコノミーが面白い。IoT向けモバイル通信サービスから、IoT向けデータ通信サービスへ ーSORACOM LoRaWAN Conference 2017レポート
下水や除雪車のIoT KDDI株式会社 ビジネスIoT推進本部 企画1グループ リーダー 野口 一宙 氏
KDDIでのIoTの取り組みは、M2Mの時代を含めて、法人分野で約15年サービスを行っているという。昨年ソラコムと共同開発した、「KDDI IoTコネクトAir」という新サービスも提供開始している。
また、トヨタ自動車とのグローバル通信プラットフォーム対応も発表されたことは記憶に新しいのではないだろうか。
LPWA(Low Power Wide Area Network)については、「IoTの普及を加速させる可能性を秘めている」と野口氏は言う。
これによって利用シーンが広がり、「自動車や貨物の追跡」、「ウェアラブル」、「ビルファシリティ」、「農業河川」といった様々な利用シーンが期待されているということだ。
LoRaWANの可能性については、「実際に業務に使えるのか?ということがわからないというのが実情だ。」という。
そんな中、簡単に試せるPoCキットを使って、神奈川県の厚木市で、下水に流れ池ている水位をセンシング、クラウドにアップロードし、危険状態を解析、ゲリラ豪雨の時などの危険管理をしていくということを支援しているということだ。
また、岐阜県の下呂地域では、除雪車にGPSをつけることでどこに除雪車処理が、どれくらい進んでいるかを可視化しているということだ。
こういった事例を通して、今後のビジネスモデルの変化にあわせて、役立てたいと述べた。
関連リンク:KDDI
マンホールの防犯・安全対策のIoT 株式会社日立システムズ サービス・ソリューション事業統括本部 プラットフォームソリューション事業推進本部 プラットフォームソリューション推進部 IoT推進グループ 技師 上川 恭平 氏
事例の二つ目は、日立システムズによる、「マンホールのIoT」に関する実証実験だ。
この実証実験は、マンホールの中に、後付けでセンサーを搭載する。蓋を閉めてマンホール内のデータを送信するということだ。データは、屋外ゲートウェイを通して日立システムズのクラウドサービスに蓄積する。
なぜ、マンホールの中をセンシングすることになったのかというと、オリンピックを控えた国家イベントにおけるセキュリティ強化(テロ活動・スパイ活動の帽子)、内部状態の可視化と遠隔監視、作業員の安全確保などに利用したいと考えたからだ。(上川氏)
劣悪な環境内での実験を繰り返し、マンホールの上を車が通ったら、マンホールの上に車が止まったら、マンホールが水没したら、どうなるかなどを繰り返し確認たという。
LoRaWANのPoCキットとソラコムのサービスを使った実験は、以下のような構成で行った。最大580m離れていてもデータを受信することができたということだ。
実際に使ってみた感想として、「デバイス管理が簡単にできる」「転送先の設定だけで自社クラウドと連携できる」といったところがよいと述べた。
一方で、通信のログが確認できないので、ネットワークに関するトラブルシューティングできない、メッセージフォーマットのカスタマイズができるとよいと述べた。
※ソラコムでは、このフィードバックを受けて、データ転送ログを確認するという管理画面が既に作られているということだ。
関連リンク:日立システムズ
TREK TRACK 遭難者を救うIoT 株式会社博報堂アイ・スタジオ Future Creative Lab Creative Technologist 川崎 順平 氏
川崎氏によると、「登山者が登る山では、セルラー通信が届かないエリアがある。また、もしセルラーが届くとしても電池が減るだけなので電源をオフにして登山をすることが一般的なのだ」という。一方で、登山ブームに伴って、遭難者も年々増えてきているというのだ。
今回、登山者が遭難した時に、セルラー通信が届かないところでも、遭難者を見つけることができるソリューションを作ったという紹介がされた。
具体的には、山の中の各所にLoRaWANのゲートウェイを置き、登山者はIoTデバイスを持って移動することで、自動的に位置情報が保存されていくというサービスだ。このデバイスは、フル充電で、5日間の連続稼働が可能だ。さらに、「HELPボタン」を想定していて、その情報がサーバにアップロードされることで、HELP情報が家族にも通知されるのだ。
一般的に遭難者の発覚は、「夜になっても帰ってこないからおかしい」となって捜索が開始されることになるのだが、実際の捜索は夜間は行われないので翌朝から行うこととなる。
このサービスを使っていれば、日中に遭難した際は、日中に捜索を開始することができる可能性ができるのだ。
通信テストに関しては、雪崩を想定して、3mの雪の中に埋めて実験をたというが、それでもデータが送信されることが分かったということだ。
開発に関しても、SORACOMを利用することで、登山者が持つモジュールと、データを可視化するクラウドサービスのみで済んだことが大きいという。
このサービスは、今後9月にサービスインするということで、大型ショッピングモールや遊園地での迷子も増えているということなので、迷子者の動きを可視化するということにも応用可能となる。
関連リンク:TREK TRACK
雨量監視や地滑り監視、河川の水量を監視するIoT 株式会社M2Bコミュニケーションズ 取締役 渡辺誠 氏
M2Bコミュニケーションズは、昨年ソラコムに出資を受けたLoRaWANの企業だ。
すでに様々なLoRaWANに対応したセンサーがあるが、例えば水量を監視する場合は、橋から水面までの距離を超音波センサーで取得するというやり方があるという。
他にも、地滑り安心センサーや雨量監視センサーなども試作されているということだ。
日本仕様として、下りの通信も実現したため、LoRaWANのデータ発進時に 送信が完了したことをランプ点灯で見ることもできることが重要だと述べた。
関連リンク:M2Bコミュニケーションズ
オフィスのIoT 株式会社ウフル IoTイノベーションセンター 竹之下航洋 氏
ウフルの竹之下氏からは、オフィス内でLoRaWANを活用した事例が紹介された。
今回の事例では、LoRaゲートウェイにBLE受信モジュールを一体化させたデバイスをつくったということだ。その上で、社員のノートパソコンや入館証にビーコンつけることで、リアルタイムに誰がどこにいたかがわかる。また、ウフルのenebularを活用しているので、リアルタイムにわかるだけでなく、過去にさかのぼってもわかるということだ。
竹之下氏によると、「LoRaを使ったソリューションは、パターンが決まっているのでWEB会社でも利用出来るということがポイントだ。」という。
具体的には、デバイスとクラウドサービスを作りさえすれば、その間の経路はソラコムのソリューションを使うことで追加開発の必要がない。
ヒトにつけてビーコン情報を共有することで出退勤を自動化することもできる。
ビーコンをつかった物品管理ソリューションは既にいくつもあるが、Wifiでは電波が届かない場所や、電池の持ちがわるいといった問題があった。
LoRaWANはその点電池の持ちも良かったり、電波が長距離でも飛ばすことがあるという利点がある一方で、「11byteのデータ上限」があるので、複数回にわけて送信するなどの工夫が必要だということがわかったということだ。
関連リンク:ウフル
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牛の行動管理をするIoT 株式会社ファームノート デバイス開発マネージャー 阿部 剛大 氏
ファームノートは、世界の農業の頭脳となるということを目指している企業だ。牛の管理をする際、これまではノートやコマンドインタフェースの使いづらいシステムしかなかった。
そこで、Farmnoteというサービスと、Farmnote Colorというデバイスを既にリリースしており、牛の活動量などを取得することに成功している。
今回、AI x IoT x Agricultureの取り組みで、ソラコムと提携し、LoRaWANを活用して牛の動線管理や行動管理を行ったということだ。
結果、個体ごとの移動距離や牧草地、日陰を好むなどの差がわかるようになったということだ。
関連リンク:ファームノート
トイレのIoT ウイングアーク1st株式会社 営業本部 クラウド営業統括部 アライアンスディレクター 武市 真拓 氏
IoTの可視化ツールとして様々な場面で登場するウィングアーク1stのMotion Boardだが、今回は、同社が入居するオフィスビルのトイレの空き状態を監視する実験を行ったということだ。
具体的には、トイレにレンジャーシステム製のトイレ監視デバイスを配置し、トイレの開閉状態をゲートウェイを経由してクラウドにアップロードする。そして状態をMotion Boardで監視するという構成だ。
実際、ビルに配置したゲートウェイは1つでまかなえており、通常窓際に置いた方が通信が通りそうなところだが、このビルのトイレが内側にあったため内側に置いてみたところ通信が通ったのだという。ビルの配管などを通してビル内の通信ができたのかもしれないということだ。
武市氏は、「MotionBoardを使うことで、数時間で実用的な分析監視画面が実装できる」と述べた。
関連リンク:ウィングアーク1st
LoRaWANの通信強度実験 フューチャー株式会社 CEO室ディレクター 池田 博樹 博士(工学)
フューチャーでは、スマートビリッジ構想というICT技術をつかった新しい町村作りをやるという構想があるという。実際に、最先端のIT農業はではスペインで行なわれているトマト農家が有名だ。
今回は、京都府与謝野町の町役場の協力のもと、ゲートウェイを地上15mに壁面設置を行い、固定センサーと移動センサーを自作したということだ。
様々な検証を通して、移動中であっても速度が速くなければ取得できるが、高低差のあるエリアでは通信経路上に樹木などの障害物などがあると通信強度が落ちることがわかった。
また、障害物がない固定の場所であっても天候や時間帯で通信強度が変わることもあったのだという。
関連リンク:フューチャー
橋梁インフラモニタリングIoT 九州通信ネットワーク株式会社 執行役員 サービス開発部長 松崎 真典 氏
山間の橋梁は、今後高齢化が進んで行くと言われていて、現在5年に1度の近接目視点検が義務化されているので、維持管理コストが高いことが問題になる。
昨年のソラコムのイベントでも発表があった通り、電源や配線ができない橋梁では、LoRaが有効活用できると考え、宮崎県の高松橋という橋で実証実験を行ったのだが、今回は、ドローンを使った実験をしてみたということだ。
ドローンの飛行移動速度は14km/hくらいであれば安定したデータ取得が可能だということがわかった。
また、上空でのホバリング検証をした結果、上空を活用することでLoRa WANの利用範囲は大きく広がることもわかったということだ。
これらを橋梁インフラに合わせると、範囲はかなり広くなることがわかる。
関連リンク:九州通信ネットワーク
今回発表された事例は、LPWAの事例としても先進的な事例だと言える。
ソラコムのソリューションでは、LoRaWANのデバイス通信部分から、データの格納までが一気通貫で提供されているため、開発者は必要なセンシングデバイスの開発と、データを格納した後の可視化やアクチュエーターを開発していけば良いことになる。
また、SORACOM HervestやMotion board、Enebularといったクラウド連携に対応した可視化ツールも充実してきていることから、やりたいことさえ決まればどんどん試していくことが可能な環境になってきたと言えるだろう。

