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IoT/AIを過去、現在、未来から紐解く ーSORACOM Discovery 2019レポート6

IoT/AIを過去、現在、未来から紐解く ーSORACOM Discovery 2019レポート

2019年7月2日「IoTを超えて」をテーマにSORACOM Discovery 2019が開催された。

今回はその中で、「日本と世界のIoT/AIビジネスが描く未来予想図」と題したトークセッションの内容を紹介したい。

このトークセッションは、国内外のビジネスの事例や最近のトレンド、少し先の未来におけるIoT/AIビジネスの予想図を、日本と海外のイノベーションの創造の場の提供を行っているEDGEofのCo-CEOである小田嶋 Alex. 太輔氏、多くのIoT/AIプロジェクトを支援しているMAGLAB代表の武市真拓氏、IoT NEWS/アールジーン代表の小泉耕二氏の3人で行われた。

PoCの段階から具現化してきた現在

まずはじめに、「過去から現在で変わったものこと」をテーマに語られた。

小田嶋氏は、過去ではなかなか世に出てこなかったプロトタイプであった製品が世に出てくるようになったと話す。その理由としては、デバイスを作るコストが下がってきたこと、少しのロットで簡単に作ることができるようにラインが変わってきたことを挙げた。

EDGEofのCo-CEO 小田嶋 Alex. 太輔 氏

フレンチテックという政府が推進しているスタートアップエコシステムでは、奇抜なアイディアであっても製品化していくという。

小泉氏は、5年ほど前に思い描いていたイメージが少しづつ生活の中に入り込んできたと語る。現在ではやれることを形にしていくのではなく、形になってきたものをさらにどのように展開していくかという段階に来たという。

また展示会を例に挙げ、2015年頃の展示会ではネットワーク機器が主流であったが、ここ数年ではソフトウェアにシフトしているという。ソフトウェアに移行しているということはデータが取れてきていることを示していると語る。

データ取得のやり方のイメージはできていても、実装するのは難しく、実際にセンサーをつけてみてわかることも多い。しかしここ数年で様々な企業が試行錯誤を繰り返し、どこにどうつければどのようなデータが取れるかの知見が蓄積されてきたと感じると語った。

一方で新しいものを作り出そうとした時に法規制の問題があると小田嶋氏は話す。例えばパリでは電動キックバイクのシェアリングサービス化が普及しているが、日本で普及させようとすると、法定速度規制の問題などから、今までの法規制の延長線上で構築していくことは難しいという。

その措置として日本でも特区が少しづつ出てきていることに可能性を感じると語った。

次ページは、「多様なニーズに落とし込まれていくIoT

多様なニーズに落とし込まれていくIoT

次に「現在に影響を与えたもの」をテーマに、今の時代を作った印象に残ったものについて語られた。

小田嶋氏は、アップルウォッチをつける人が増加していることを指摘した。IoTというと機械のデータを取るという印象が強いが、人のデータを取るということが今年のテーマなのでは、と語る。人のデータをクラウドにあげAI分析をし、社会還元することへの意義があるという。

武市氏は、高齢者の方が倒れた際にアップルウォッチをつけており、通知され家族が気づけたという例を捕捉した。

小泉氏は、人のデータの取り方はウェアラブルを筆頭に、そこからさらに細分化していると語る。

IoT NEWS/アールジーン代表 小泉耕二 氏

例えばFit Bitはホビーユースなウェアラブル端末であり、睡眠や心拍数、運動状態などを測り、自分の健康状態の可視化と、どのように影響を与えているかがわかり、日々の健康向上に使われる。

一方、USのオムロンが提供しているHeartGuideだと、心拍や血圧をかなり正確に取ることができる。これは心臓に病気を抱えている人が階段を上る時などに心拍を測り休みながら動くことができるといったように、ある意味医療ユースとして使えるようなものだ。

同じ心拍を取るようなウェアラブルであっても念頭においているマーケットが違えば、そのための仕様も少しづつ変わってきているということだ。

そして、ロレアルやジョンソンアンドジョンソンなど消費者メーカーもデジタル業界に参入してきており、「化粧品テック」と言えるような新たな分野も登場し、話題になった。

さらに「ベビーテック」「スポーツテック」など、テクノロジーが様々な分野に取り入れられることで細分化してきており、必要なデータだけを収集するという流れになってきているという。

そして「スポーツテック」からさらに細分化され、アスリート向けのIoTも登場している。アスリートのデータを取り、分析し試合のコーチングの参考にするといったことが数年前からアメリカンフットボールには取り入れられており、現在ではサッカーにも導入され始めているという。

このようにIoTは細分化され、複合的に利用され始めていると語った。

また、海外の動向について小田嶋氏は、イノベーションの中心がアメリカからヨーロッパに移行してきていると話す。

シリコンバレーでは家賃や人件費高騰でアーリーステージのスタートアップを雇用できなくなってきているという。年収1500万だと貧困層になってしまうという過度なインフレが起こっており、新しいイノベーションが育ちづらい。面白いアイディアを持った企業であったとしても、商業的な価値が低いものは成り立たなくなっているのが現状だ。

一方ヨーロッパであれば、国を挙げてスタートアップ企業を優遇する環境にあり、様々な制度が受けられる。そしてエンジニアのスキルはシリコンバレーとほとんど変わらず、価格は抑えることができるという。

武市氏がそういったスタートアップ企業がそこまで物価の高くない日本になぜ参入してこないのか問うと、小田嶋氏は「英語」だと答えた。

左:MAGLAB代表 武市真拓 氏 右:EDGEofのCo-CEO 小田嶋 Alex. 太輔 氏

様々な国のコンベンションには100カ国以上の国から来場者が集まっているが、その中で通訳を連れてきているのは日本だけだという。英語がネックになり、日本企業が海外進出するのも海外企業が日本に参入するのにも障壁になっていると啓蒙した。

次ページは、「未来のあたりまえの作り方と、未来のあたりまえに対応する力

未来のあたりまえの作り方と、未来のあたりまえに対応する力

最後に「未来のあたりまえ」についてトークセッションが行われた。

小泉氏は、最近では未来の話になるとスマートシティが取り上げられることが多いが、もともとあるものを変えることの大変さから、すぐに実装されるのは難しいと語った。

未来のあたりまえとは一から作り上げ、全てが最適化した状態であり、今とは全く違うものであるということを前提とし、「家」が未来のあたりまえを作るのではないかと話した。

現在でのスマートホームとは昔の習慣を自動化するという流れだが、もっと柔軟で大胆な「家」の発想をし、それを実現していくためにテクノロジーを取り入れることで、今とは全く違う「家」が誕生するのではないかと語った。

一方小田嶋氏は、未来のあたりまえが到来した際、今後は「アート」が重要になっていくのではと話す。今後AIが進んでいくとほとんどのことで人の作業が必要ではなくなるということを前提にした時、本質的に人でなければできないことへの追求がなされていくという。

テクノロジーの発達で人の価値基準が全く変わった時に必要なのが、「アート」の感覚を持って物事を考えるということであり、AIにはできないことだと語った。

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