多様なニーズに落とし込まれていくIoT
次に「現在に影響を与えたもの」をテーマに、今の時代を作った印象に残ったものについて語られた。
小田嶋氏は、アップルウォッチをつける人が増加していることを指摘した。IoTというと機械のデータを取るという印象が強いが、人のデータを取るということが今年のテーマなのでは、と語る。人のデータをクラウドにあげAI分析をし、社会還元することへの意義があるという。
武市氏は、高齢者の方が倒れた際にアップルウォッチをつけており、通知され家族が気づけたという例を捕捉した。
小泉氏は、人のデータの取り方はウェアラブルを筆頭に、そこからさらに細分化していると語る。

例えばFit Bitはホビーユースなウェアラブル端末であり、睡眠や心拍数、運動状態などを測り、自分の健康状態の可視化と、どのように影響を与えているかがわかり、日々の健康向上に使われる。
一方、USのオムロンが提供しているHeartGuideだと、心拍や血圧をかなり正確に取ることができる。これは心臓に病気を抱えている人が階段を上る時などに心拍を測り休みながら動くことができるといったように、ある意味医療ユースとして使えるようなものだ。
同じ心拍を取るようなウェアラブルであっても念頭においているマーケットが違えば、そのための仕様も少しづつ変わってきているということだ。
そして、ロレアルやジョンソンアンドジョンソンなど消費者メーカーもデジタル業界に参入してきており、「化粧品テック」と言えるような新たな分野も登場し、話題になった。
さらに「ベビーテック」「スポーツテック」など、テクノロジーが様々な分野に取り入れられることで細分化してきており、必要なデータだけを収集するという流れになってきているという。
そして「スポーツテック」からさらに細分化され、アスリート向けのIoTも登場している。アスリートのデータを取り、分析し試合のコーチングの参考にするといったことが数年前からアメリカンフットボールには取り入れられており、現在ではサッカーにも導入され始めているという。
このようにIoTは細分化され、複合的に利用され始めていると語った。
また、海外の動向について小田嶋氏は、イノベーションの中心がアメリカからヨーロッパに移行してきていると話す。
シリコンバレーでは家賃や人件費高騰でアーリーステージのスタートアップを雇用できなくなってきているという。年収1500万だと貧困層になってしまうという過度なインフレが起こっており、新しいイノベーションが育ちづらい。面白いアイディアを持った企業であったとしても、商業的な価値が低いものは成り立たなくなっているのが現状だ。
一方ヨーロッパであれば、国を挙げてスタートアップ企業を優遇する環境にあり、様々な制度が受けられる。そしてエンジニアのスキルはシリコンバレーとほとんど変わらず、価格は抑えることができるという。
武市氏がそういったスタートアップ企業がそこまで物価の高くない日本になぜ参入してこないのか問うと、小田嶋氏は「英語」だと答えた。

様々な国のコンベンションには100カ国以上の国から来場者が集まっているが、その中で通訳を連れてきているのは日本だけだという。英語がネックになり、日本企業が海外進出するのも海外企業が日本に参入するのにも障壁になっていると啓蒙した。
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