サイトアイコン IoTNEWS

パナソニックの画像解析プラットフォーム「Vieureka」 -パナソニック 藤田氏、茶木氏インタビュー

Panasonic Vieureka

IoTによって、数百万台〜数十億台がつながる世界。意味のある画像を収集するデバイスとして必要な要件として、エッジ側である程度の画像処理を行えることは言うまでもない。

一方で、数百万台というデバイスが、スーパーや駅などありとあらゆるところに配置されるとしたら、それらの個別のデバイスマネージメントには何が必要なのだろう。

実運用を考えると、複数あるカメラデバイスの上で動くファームウエアやアプリのバージョンがすべて揃っているということはあり得ない。そこで、利用企業(ユーザ)単位、設置場所単位、カメラ単位、でそれらを管理することが必要になる。

今回、こういった課題を解決するビジョンセンシングプラットフォームができたということで、パナソニック株式会社 ビジネスイノベーション本部 Vieurekaチーム チームリーダーの藤田真継氏と、営業責任者の茶木健志郎氏にお話を伺った。
(聞き手:IoTNEWS代表 小泉耕二)

世界の今をデータ化する社会インフラを作りたい

小泉: 今回のVieurekaプラットフォームについてご説明をお願いします。

藤田: 画像をエッジ側で処理しクラウドと連携する、ビジョンセンシングのプラットフォームが、Vieurekaです。このVieurekaというプラットフォームは、「ディープラーニングを使った画像解析」「IoTエッジデバイスとクラウドの間での分散処理」「デバイスアプリケーションの個別マネージメント」が特徴となります。

パナソニック株式会社 ビジネスイノベーション本部 Vieurekaチーム チームリーダーの藤田真継氏

このプラットフォームを使うと、ユースケースに応じてエッジデバイスとなるカメラにアプリケーション・ブロックをデプロイすることができます。

属性推定や不審者検知などのアプリケーションを入れると、小売店舗で使えるデバイスになるという感じだ。このアプリケーションを入れ替えることで、小売店舗向け、介護施設向け、など様々な利用シーンで使うことができるようになります。

Veurekaの概念図

このデバイスは、画像認識処理ができ、USBインタフェースで外部センサを繋いでカメラをハブのように使うことができる。LTEドングルをさせばLTE通信可能なカメラともなるのです。

また、SDKが提供されていて、サードパーティによるアプリケーションの開発が可能になります。現在はパナソニックが作ったアプリケーションが利用可能となっています。

サービスを提供するメリットとしては、「ゼロからの開発が不要となり、アプリケーション開発が容易となる」「問題があったとき、駆け付けないといけないわけだが、遠隔監視がされているので、小規模事業者でもサービス提供を行いやすい」「遠隔でのアプリケーションのアップデートが可能なので、提供するサービス自体を進化することが容易となる」の3つがあります。

また、Vieurekaマネージャというソフトウエアでデバイスやアプリ、ファームウエアなどのバージョンの管理が可能となります。

これらを自社で統合的にやってみせたのが、小売店の事例で話題になった、トライアルカンパニーなどで使われている来客分析の事例となっています。

次ページ「Vieurekaマネージャと、エンドユーザ向けアプリ

Vieurekaマネージャと、エンドユーザ向けアプリ

小泉: 実際の利用シーンを見せていただけますか。

Vieurekaマネージャーの画面、ファームウエアやアプリケーションの個別バージョン管理も可能となっている 

藤田: これはエンドユーザ(小売店)が見る画面ではなく、サービス提供企業が見る画面です。例えばとある店舗にカメラが数十台配置されているという状況を見ることができます。カメラにはファームウエアやアプリケーションが搭載されていて、それぞれのバージョン管理もされている様子がわかります。

これを使うことで、障害時の保守やアプリケーションのアップデートが簡単にできます。カメラのログもすぐに取得できるので、技術者による切り分けもできます。カメラのメモリ使用状況もわかるので、徐々に増えてくるとメモリーリークが起きているのではないかとみることもできます。

また、エラーが起きるとメールが飛ぶのでユーザ企業より先にサービス提供事業者が障害に気づくというケースもあります。

どの通路にどれくらいの人がいたかを可視化できるアプリケーションの画面イメージ。こういったエンドユーザ(例えば小売店)向けのアプリケーションは、自由に構築することが可能だ。

また、このプラットフォーム上で、小売店舗向けの来客分析アプリも別途提供しています。

ある一日の1時間ごとの来店者数や属性(性別、年齢)などがわかるようになっています。

また、一つのカメラに写っている滞留時間もわかるようなアプリケーションとしていています。これを棚の前に置くことで、棚の前にどれくらい滞留していたかがわかるのです。さらに、フロア全体でみると、ヒートマップ表示をすることも可能となります。

小泉: カメラの中でどういうことをやっているのですか。

藤田: まず人物の上半身を検出しています。フレーム間でトラッキングしているので、どこから、どう移動したかもわかります。

茶木: また、同時に顔の検出も行い、属性を推定しています。マスクをしていたり下を向いていると男女が不明となったりもします。

パナソニック株式会社 ビジネスイノベーション本部 Vieurekaチーム 営業責任者の茶木健志郎氏

次ページ「AWSとの連携も実現予定

AWSとの連携も実現予定

小泉: AWSIoTをエッジ側(カメラ)に入れているというわけではないのでしょうか。

藤田: これまでは、エッジ側、クラウド側共に自前で作っていましたが、今後AWSが提供しているAWS IoT Greengrassを搭載していこうとも考えております。AWSのAIモジュールである、Amazon SageMaker Neoも取り入れていってパートナーを増やしていこうと考えています。

併せて、現在エッジ側の開発言語が、C/C++のみとなっていて、ディープラーニングのエンジニアにとっては、Pythonを使う人が多いのでここを使えるようにしたいと考えています。

コモディティ化されているPaaSやIaaSのサービス開発に時間がかかっているところを、Vieurekaプラットフォームを使うことで極小化することができるのです。これが、使っていただくメリットとなると考えています。

小泉: エッジ側にGreengrassを使うとエッジ側に証明書を準備するなどが必要となることについては、セキュリティが高まる一方で、コストが上がらないかと思うのですが、その点はどうでしょうか。

藤田: そこのコスト面はそれほど高くならないと思います。セキュリティ対応の方が重要だと考えています。

小泉: クラウド側のアプリケーション開発者も、エッジ側の開発者も、AWSの資産をうまく使うことができるということなのですね。

藤田: そうです。

次ページ「ヒトの行動を分析するのに必要なカメラのスペックとは

ヒトの行動を分析するのに必要なカメラのスペックとは

Panasonic Vieureka カメラ

小泉: Greengrassの必要なコンピューターパワーを持ったデバイスを実現するには、ハードウエアの良さが出るなと思うのです。

藤田: 確かにカメラやソフトの開発資産はありますが、今回のカメラに関してはスペックに関してはかなり割り切って作っています。その分、安価なサービスがご提供可能となっています。

24時間365日動き続かないといけないということは保証する必要があると考えています。他社の開発キットのようなカメラではこういった保証はされていません。映像品質としては、画像認識ができればよいというレベル感で考えています。

通常の監視カメラでは、「高画質」「高感度」をうたっているものがほとんどですが、画像認識をする上ではそこまで重要ではありません。

小泉: 特徴点はそれでも取れるということなのですね。

藤田: ヒトの動きを見たいだけであれば、ディテールは不要になります。表情をとりたいとなると、解像度が必要になると思っています。

距離に関しても、4-5mくらいは取得できています。これも例えば、文字を認識するとなるともっと解像度が高い必要があります。

カメラが人物をトラッキングしている様子

小泉: カメラはオリジナルでつくられているのでしょうか。

藤田: はい、1機種作っていますが、Vieurekaマネージャとやり取りができる必要があります。今後、ハードウエアパートナーを募ろうかとも思っています。現在セカンドバージョンも企画が進んでいます。

小泉: パナソニックがですか。

藤田: 屋外用とか、魚眼カメラとか作っていただいて、我々はライセンス認定するような計画もあります。

茶木: カメラ以外でも、温度センサーや照度センサーなど様々あります。今後はカメラにこだわる必要もないと考えています。

小泉: 今後の展開も楽しみです。本日はありがとうございました。

モバイルバージョンを終了