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ローソンが初出展、「共創」で目指す未来型コンビニ —CEATEC JAPAN 2018レポート1

CPS/IoTの総合展「CEATEC JAPAN 2018」が、千葉県の幕張メッセで開催されている(10月16日~19日の4日間)。

CEATEC JAPANは2016年に「脱・家電見本市」を宣言し、「CPS/IoTの総合展」へと転換した(※CPSはCyber-Physical Systemの略:物理世界とサイバー世界が融合したシステムや世界観のことを指す)。

コンセプトは「つながる社会、共創する未来」だ。公式サイトの開催概要には次のように書かれている(CEATEC JAPANホームページより)。

CPS/IoTを活用し、あらゆる産業・業種による「共創」を基本としたビジネス創出と、技術および情報交流などを一堂に会する場を開催し、経済発展と社会的課題の解決を両立する「超スマート社会(Society 5.0)」の実現を目指す。

すべてのモノがつながるIoT時代には、産業と業界の境目がなくなっていく。そこから生まれる新たなビジネスの創出のためには、企業どうしの「共創」が欠かせない。

そうして、生活者にとってはモノ(製品)の進化のみならず新しいサービスや顧客体験がもたらされ、社会が大きく変わっていく未来を見せてくれる。そのような展示会へとCEATECは変化してきた。

今年の最も象徴的な展示の一つは、初出展で「未来型コンビニ」を提案したローソンだった。コンビニはもはや日用品を買うための「便利な店舗」ではなく、健康やおもてなし、地域のコミュニケーションをもたらす場所へと変わっていく姿を示した。

しかし、当然ながらローソンだけでは実現できない。同展示ではさまざまなパートナー企業とのエコシステムが展開されていた。

ロボットが働き、遠隔医療が受けられる未来型コンビニ

ローソンが初出展、「共創」で目指す未来型コンビニ —CEATEC JAPAN 2018レポート1
2体の「COBOTTA」が協力して餃子づくりをしている様子。手前の「COBOTTA」は餃子の皮をつかもうとしている。

ローソンが目指す未来のコンビニにおいては、「人協働ロボット」を導入していくという。完全にロボットに任せるのではなく、単純な作業をロボットに任せることで、接客に重点を置くことが目的にある。

ブースでは、デンソーウェーブの人協働ロボット「COBOTTA」を使った餃子づくりのデモが行われていた。この際、ヒトの作業は餃子の皮と餡の用意することと、包み終わった餃子を焼くことだけ。餡を皮に包む作業は「COBOTTA」が行う。

餃子づくりはあくまで一つのデモであり、人協働ロボットの利用もコンセプトの段階だという。しかし、こうしたデモを来展者と共有することで、さまざまな人協働ロボットの可能性を探っていきたいとのことだ。

顧客がローソン内の遠隔システムを通して、医師の問診を受けるデモンストレーションの様子

過疎化が進んだ地方では、医師の数が不足していたり、高齢のため病院まで行くのが難しかったりと、住民が十分に医療を受けられない場合がある。

そのような課題を解決するために、ローソンでは遠隔医療を受ける「場」を提供するとして、ブース内ではリモート会議システムを用いた問診を受けるデモンストレーションが行われた。

このデモのコンセプトでは、住民は医師の顔と問診票をモニターで見ながら、診断を受けることができる。手元には血圧や脈拍、不足した栄養素などのバイタルデータを瞬時にチェックできるデバイス(ContinUse Biometrics社製)が用意されており、住民はバイタルデータを医師と共有したうえで、問診を始めることが可能だ。

また、問診のあとには、医師が処方したサプリメントを、専用のデバイス(dricos社製)から受け取ることができる。

あくまでコンセプト段階であり、医療の場合は国の認可も必要だ。しかし、こうした遠隔サービスのしくみは医療以外にも弁護士相談などさまざまな用途での応用が期待される。

次ページ:ウォークスルー決済を体験

「ウォークスルー決済」を体験

「ウォークスルー決済」体験コーナーの陳列棚。CEATECの開催中、来展者は実際に商品を購入することができる。RFIDタグが貼付されている場所は、商品の底面や透明のプラスチックの蓋の表面などさまざま。

次は、「ウォークスルー決済」の体験コーナーを紹介する。

商品にはすべて電子タグ(RFID)が貼付されている。その商品を買い物袋(ローソンのエコバッグが配られた)に入れて出口へ向かい、スマートフォンのアプリ画面に表示されるQRコードを読み取り機にかざす。

そして、7秒以内に商品を入れたバッグをRFID読み取り用の専用レーンに通すことで、自動的に決済が行われる。レシートはアプリから確認できる。

来展者は事前にアプリをダウンロードし、クレジットカードの登録などを行っておけば、実際に買い物をすることが可能だ(商品は3点まで。また今回のデモの場合、RFIDタグのシールは出口で回収される)。

QRコードを読み取り機にかざしている様子。奥に見える、青色の線がある壁の下の部分がRFID読み取り用の専用レーンとなっている。
(左)「ウォークスルー決済」専用アプリのQRコード、(右)決済が行われた後のレシート

「ウォークスルー決済」の実用化に向けたカギはRFIDタグの普及にある。現実的には、RFIDを貼付する分だけ商品の仕入れ価格が上がるために、店舗側として簡単に導入するわけにはいかない。RFIDを導入するメーカーが増えればコストも下がり、実現に近づくと期待される。

「今回の展示を体験して、RFIDタグはやっぱり必要だ、RFIDタグが普及した社会はすばらしい。そう思ってくれるようなきっかけになれば嬉しい」と株式会社ローソン 経営戦略本部 オープン・イノベーションセンター マネジャーの宮田尚武氏は説明する。

ローソン「未来型コンビニ」のパートナー企業

「ウォークスルー決済」のシステムは、マイクロソフトのIoTプラットフォーム「Microsoft Azure」によって構築されているという。また、使われているRFIDタグはサトーホールディングスが提供。商品にRFIDを貼付する自動機械は大王製紙グループのダイオーエンジニアリングが提供している。

このようにさまざまなパートナー企業と創られたローソンの「未来型コンビニ」が、IoTによるビジネス創出の可能性を強く感じさせてくれる。

SHOWROOM株式会社とローソンが共同開発した「バーチャルクルー」(仮想の店員)がお出迎え。ローソンの未来型コンビニでは、こうしたバーチャルクルーがさまざまな場面で顧客をサポートするという。

【関連リンク】
CEATEC JAPANのローソン紹介サイト
デンソーウェーブ(DENSO WAVE)
ダイオーエンジニアリング(DAIO ENGINEERING)
ContinUse Biometrics
ドリコス(dricos)
ショールーム(SHOWROOM)

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