IoT NEWS

ZMP、都市交通インフラの実証実験などMaaS戦略について発表

自動運転モビリティ「Robocar®Walk」とZMP・谷口氏

2019年7月23日、都内で開催されたZMPによるカンファレンス「ZMP World 2019」(7月23日~26日)内において、自動運転タクシーサービスなどZMPのMaaS(Mobility as a Service)戦略についての会見があった。会見では日の丸交通・JTBなどZMPのMaaS戦略に関わる企業も登壇した。

ZMPのMaaS方針と「Robocar Walk」

会見ではまずZMPの代表取締役社長・谷口恒氏よりZMPの全体的な事業ビジョンについての説明があった。その中で谷口氏はMaaS戦略については「公共交通が途切れている部分をつなぐ新たな移動手段を提供する」と語り、公共交通の維持発展と利便性向上に取り組んでいく方針を示した。

事業ビジョンの説明に続いて、自動運転モビリティ「Robocar Walk」(トップ画像)の発表があった。

「Robocar Walk」は、ZMPが宅配ロボット「CarriRo Deli」で培った自律移動技術およびコミュニケーションエンジンを応用し、空港、商業施設、観光地といった公共空間における移動を提供するもの。

会見では「Robocar Walk」の走行デモンストレーションが行われた。その中でZMP・谷口氏は、高齢者でも座りやすい形状のシートにしたことや、安全性を確保するためにドアを付けたことなど、移動困難を抱えるユーザーに向けたデザインであることを説明した。

さらに谷口氏はZMPの掲げるロボット・ミッションのひとつに「人の自立の支援」があることを強調し、「Robocar Walk」によって移動に不自由を抱える人々の外出を支え、移動の先にあるコミュニケーションの創出を目指すことを述べた。

次ページは、「日本のタクシー・サービス文化と自動運転技術の融合

日本のタクシー・サービス文化と自動運転技術の融合

「Robocar Walk」に続いて発表されたのは、7社合同による空港リムジンバスと自動運転タクシーを連携させた都市交通インフラ実証実験についてである。

まずZMP・谷口氏が登壇し、実証実験に至った背景とサービス全体の構想について説明を行った。

谷口氏によれば、そもそもの発端は2013年に姫路駅~香呂駅間で行った自動走行タクシー走行構想だという。その際に谷口氏が感じたのは、タクシー会社の廃業、路線バスの廃線といった公共交通網の疲弊だ。

こうした公共交通の問題を解消する一環としてZMPが日の丸交通と取り組んだのが、2018年8月に行った大手町~六本木間の自動タクシーサービスである。

これによりタクシー・ドライバー不足への対応や、ドライバーの重労働からの解放といった効果を狙うという。

ZMP・谷口氏は「日本のタクシー・サービス文化は世界各国と比較しても清潔で安全という、極めてハイレベルなものだ。これを自動運転の配車管理システムと掛け合わせることで新しいサービスを生み出そうとした」と、自動タクシーサービスを振り返った。

スマートフォンで複数交通手段を一括予約

そして上記の自動タクシーサービスをさらに発展させたのが、今回の空港リムジンバスと自動運転タクシーを連携させたサービスである。

ZMP、都市交通インフラの実証実験などMaaS戦略について発表
自動運転タクシーとリムジンバスをつなぐMaaSについて説明するZMP・谷口氏

これは丸の内パークビルディングと東京シティ・エアターミナル間を自動運転タクシーで結び、エアターミナルと成田空港・羽田空港の間を走る航空リムジンバスと連動させてスマートフォンで一括予約できるというものだという。

ZMP・谷口氏はプロジェクトに参画する各社の役割についても説明を行った。まず自動運転タクシーはZMPが開発、運行については自動運転タクシーを日本交通と日の丸交通の二社が、空港リムジンバスを東京空港交通が担当する。また施設提供については三菱地所と東京シティ・エアターミナルが行う。また、宿泊施設との連動といった旅行サービス化の検討されており、そちらはJTBが進めることになっている。

谷口氏は「本サービスはインバウンドへの対応も視野に入れながら2019年内に実証実験を行い、2020年には実証の結果を踏まえてサービスをさらに発展させる予定だ。」と今後を語った。

次ページは、「タクシー不足を白タクで埋めることはできない

タクシー不足を白タクで埋めることはできない

一方、実際に車両の運営を行うタクシー会社はMaaSへの取り組みをどのように捉えているのか。

ZMP・谷口氏の次に登壇した日の丸交通・代表取締役社長の富田和孝氏は、タクシー業界が抱える問題点と日本が目指すべきMaaSのあり方について語った。

まず富田氏はタクシー業界で起きている問題の中でも、特に人手不足が深刻化していることを強調し、都内の法人タクシーが76%しか稼働していない一方で、乗務員年齢分布のうち5割近くが60歳以上とドライバーの高齢化が進んでいることを説明した。

タクシー業界の問題を語る日の丸交通・富田氏

こうした問題を指摘した上で、富田氏は「稼働率の低下によって需給バランスが崩れ、タクシーがつかまらないという状況が起きてしまう。2020年の東京オリンピックなど、大きな行事による特需に対応できるかが不安だ。」とタクシー業界が直面する窮状を訴える。

では、こうした人手不足はライドシェア=白タクの利用によって解消できないのか。これについて富田氏は「競争の激化によるタクシーの品質悪化を招き、ドライバーによる犯罪も多発する可能性がある」として、白タク利用についてデメリットがあることを示した。

サービス多様化とテクノロジーを掛け合わせた日本型MaaSを目指す

タクシー業界の問題を総括した後に、日の丸交通・富田氏は日本の強みを活かしたモビリティーサービス・プラットフォームの形について説明する。

日本型モビリティサービスの目指すべき姿

富田氏が提唱するのは、シェアリングを主にした米国・中国型モビリティーサービスではなく、サービスの多様化とテクノロジーを掛け合わせたサービスだ。相乗りタクシーや子育てタクシーなどサービスの選択肢を増やす一方で、自動運転技術を取り入れていき、有人・無人タクシーを最適化させたプラットフォームの構築を目指すべきだという。

最後に富田氏は今回の実証実験について触れ、今回の運行に関しては日本交通との二社で行い、この実験を機会にMaaSに取り組むタクシー会社を増やしていきたいことなどを述べた。

次ページは、「MaaSは旅行会社における「第三の創業」

MaaSは旅行会社における「第三の創業」

日の丸交通・富田氏に続いて登壇したのはJTBコミュニケーションデザイン営業推進部・チーフマネージャーの黒岩隆之氏である。

旅行会社が取り組むMaaSについて説明するJTB・黒岩氏

黒岩氏からは「そもそもMaaSとは」という基本知識の整理や、旅行会社による交通手段から宿泊までを一括予約化するMaaSへの取り組みなどについて話があった。

「第一の創業は切符代売などの手配を主軸としていた時代、第二の創業は移動と宿泊などを合わせたパッケージ旅行を販売していた時代、そして第三の創業がOMO(Online Merges with Offline)したエコシステムでのサービス提供、つまりMaaSに取り組む時代だと考えている」と、黒岩氏は旅行会社におけるMaaSの捉え方を語った。

中国バス車両メーカーANKAIとの提携を発表

都市交通インフラ実証実験についての会見の後、ZMP取締役事業総括の市橋徹氏と、中国ANKAI・R&DセンターのディレクターであるCHEN SHUNDONG氏が登壇し、自動運転バス「Robocar Mini EV Bus」開発において2社が提携を行っていることを発表した。

ZMP・市橋氏と、ANKAI・RCHEN SHUNDONG氏

ANKAIは年間2万台のバスを生産する中国のバス車両メーカーである。今回の提携はZMPの自動運転プラットフォーム「RoboCar」に、ANKAIの開発するバス車両を合わせることで、自動運転バスの実現化を図るのが目的。2019年3月には既に国土交通省航空局による「空港制限区域内の自動走行に係る実証実験」の一環として、中部国際空港での実験に2社共同の「Robocar Mini EV Bus」を利用したという。

モバイルバージョンを終了