タクシー不足を白タクで埋めることはできない
一方、実際に車両の運営を行うタクシー会社はMaaSへの取り組みをどのように捉えているのか。
ZMP・谷口氏の次に登壇した日の丸交通・代表取締役社長の富田和孝氏は、タクシー業界が抱える問題点と日本が目指すべきMaaSのあり方について語った。
まず富田氏はタクシー業界で起きている問題の中でも、特に人手不足が深刻化していることを強調し、都内の法人タクシーが76%しか稼働していない一方で、乗務員年齢分布のうち5割近くが60歳以上とドライバーの高齢化が進んでいることを説明した。

こうした問題を指摘した上で、富田氏は「稼働率の低下によって需給バランスが崩れ、タクシーがつかまらないという状況が起きてしまう。2020年の東京オリンピックなど、大きな行事による特需に対応できるかが不安だ。」とタクシー業界が直面する窮状を訴える。
では、こうした人手不足はライドシェア=白タクの利用によって解消できないのか。これについて富田氏は「競争の激化によるタクシーの品質悪化を招き、ドライバーによる犯罪も多発する可能性がある」として、白タク利用についてデメリットがあることを示した。
サービス多様化とテクノロジーを掛け合わせた日本型MaaSを目指す
タクシー業界の問題を総括した後に、日の丸交通・富田氏は日本の強みを活かしたモビリティーサービス・プラットフォームの形について説明する。

富田氏が提唱するのは、シェアリングを主にした米国・中国型モビリティーサービスではなく、サービスの多様化とテクノロジーを掛け合わせたサービスだ。相乗りタクシーや子育てタクシーなどサービスの選択肢を増やす一方で、自動運転技術を取り入れていき、有人・無人タクシーを最適化させたプラットフォームの構築を目指すべきだという。
最後に富田氏は今回の実証実験について触れ、今回の運行に関しては日本交通との二社で行い、この実験を機会にMaaSに取り組むタクシー会社を増やしていきたいことなどを述べた。
次ページは、「MaaSは旅行会社における「第三の創業」」
無料メルマガ会員に登録しませんか?

1986年千葉県生まれ。出版関連会社勤務の後、フリーランスのライターを経て「IoTNEWS」編集部所属。現在、デジタルをビジネスに取り込むことで生まれる価値について研究中。IoTに関する様々な情報を取材し、皆様にお届けいたします。