今年も、コンピューターのイベント、COMPUTEXが台北で開催されている。
COMPUTEXとは、PC産業が発展した台湾だからということもあるが、PC関連のテクノロジーとPCそのもののトレンドがわかる見本市という側面がある。
会場に入るとすぐにネオンライトで輝くPCの筐体が視界に入ってくる。
これらの筐体の多くに水冷のシステムが搭載されていて、PCの熱処理に需要が高いことがわかる。
日常生活では見慣れない「TDP」という項目がそこかしこに散見される。「TDP」とは熱設計電力のことでThermal Design Powerの略だ。TDPは発生する熱量や、冷却する熱量の単位として使われる。自作でPCを作成する際に、どの程度熱量が発生するCPUを搭載するのかによって必要な冷却装置の性能が決まってくるという仕組みなのだ。

PCは成熟したデバイスと見られることも多いが、実は、まだまだ進化は続いている。
特に3Dの映像制作やゲーム開発などエンターテイメントクリエイションの領域ではさらに高性能なスペックが求められている。
PCを自作するためのパーツの多さはクリエイティブな仕事をする人はPCにもクリエイティビティを求めるということもあるのだろう。
IntelはCOMPUTEX2019の開幕直前に、新しいCPU 「Core i9-9900KS」を発表した。8つのコアが全て同時に5GHzで駆動する異常な高速性を持ったCPUだ。
2019年5月現在におけるスマホ向けの最新SoCであるQualcomm 「Snapdragon855」も同じ8コアだが、最高約3GHzであり、もちろん全てのコアで最高処理能力を出すことはできない。

そもそもこのHzはクロック周波数のことだが、これが何を表しているかというと、1秒間に頭脳の切り替えができる回数と捉えるとわかりやすいだろう。
例えば単純計算、掛け算や足し算で良いが、それを脳で処理するとき、他の処理が入ってくると考えられなくなるようにCPUも基本的には同時に1つのことしか処理できない。その処理の切り替えを1秒間に何回できるのかを表した単位がHzである。つまり「5Ghzだと1秒間に50億回の処理の切り替えができる」ということになる。
当然この数字が高いほど、処理能力が早く、高性能ということになる。この最高5Ghzのコアが8つ存在し、同時に動作するのがCorei9-9900KSなのだ。
最近は「SoC」と呼ばれることが多く、CPUのコアが複数搭載されることが一般化してきているため、単純なクロック周波数だけで性能を判断することはできないが、この数字が高いほど高スペックと見て大きな間違いはない。
また高スペック、つまりクロック周波数が高く、コアが多いCPUほど熱が多く発生するため、冷却装置も高性能なものが求められる。
この需要と供給を直接的に創造し合う構造は、ビジネスの視点から見ると素晴らしい関係だと感じた。またゲームを楽しむための専用のイスや、コックピットのようなものまで登場し、その周辺でも新たなビジネスが顕在化している。

コンシューマー向けPCではゲーミングPCの存在感が大きい。
VRなどのトレンドもあるが、基本的にはPCをゲーム機にする市場が現状も成長を続けており、ゲーム自体のクオリティも並行して向上している。
そしてネットワークの高速化もあり、ネットワークを介する高解像度のゲームも一般化してきた。
映像表現の優れたゲームで必要になるのはCPUよりもGPUである。GPUはGraphics Processing Unitの略であるように、3Dグラフィックスなどの画像描写を行う際に必要となる処理を行う半導体チップだ。
CPUが1つの処理を高速で繰り返すのに対して、GPUは1つ1つの処理が単純化されていることが必要だが、処理を同時に行うことができる。GPUの進化で映像表現が進化し、ゲームのクオリティも大幅に向上した。

これ以上の進化が必要なのか、ということがこの映像領域でも気になってくるところだが、さらなる進化が明らかに必要な領域でもある。
実はこれまでの映像表現は長方形、主に16:9のディスプレイサイズと限定的な解像度に依存していた。
これからはVRのような視野が限定されないディスプレイが必要になる。8K(7,680×7,680)の360度、3D映像を再生する場合、現状のGPUでは当然フレームレートに限界がある。
このような解像度が高く、3Dで動く映像をレンダリングするためには超高性能なCPUが必要になるのだ。
このようにそれぞれのスペック進化が連動することで、市場が進化し、拡大している。

ゲームを中心にエンターテイメントの進化ニーズもあり、PCの中心と言えるCPU、GPUは未だ進化を続けている。
そしてその進化は、AIカメラの画像認識や立体的に細かく街を管理するためのシステムにも活用されている。
GPUについては、ユーザーの手元のディスプレイに映像を描写する用途に特化されていて、サーバー側にはあまり必要性がなかったパーツだ。一方で、今やディープラーニングや画像を高速で認識をするAIサーバーには無くてはならない存在になっている。
このように捉えると、ゲームやエンターテイメントと監視や防犯などの領域は、一見無関係に見えるが、活用技術の相関は多い。
無関係と思っていた業界は、デジタル化とネットワークに繋がることが前提になったことで、既に繋がり始めているのだ。

未来事業創研 Founder
立教大学理学部数学科にて確率論・統計学及びインターネットの研究に取り組み、1997年NTT移動通信網(現NTTドコモ)入社。非音声通信の普及を目的としたアプリケーション及び商品開発後、モバイルビジネスコンサルティングに従事。
2009年株式会社電通に中途入社。携帯電話業界の動向を探る独自調査を定期的に実施し、業界並びに生活者インサイト開発業務に従事。クライアントの戦略プランニング策定をはじめ、新ビジネス開発、コンサルティング業務等に携わる。著書に「スマホマーケティング」(日本経済新聞出版社)がある。
