2019年12月5日、日本マイクロソフトはビジネスリーダーを対象にした「Microsoft Envision The Tour 東京」を開催した。
基調講演では「デジタルフィードバックループ」という概念についての説明、そしてこの概念を実践する事例の紹介があった。
「デジタルフィードバックループ」の意味
「デジタルフィードバックループ」とは何か。その概念を説明する前提として、マイクロソフトコーポレーション コーポレートバイスプレジデント クラウドビジネス担当 沼本健氏は現在のビジネスプロセスがリアクティブ(=反応的)なものであることをまず述べた。

例えば工場の生産ラインで使われているデバイスに何らかの障害が発生し、ラインが止まったとしよう。顧客はコールセンターに電話をし、メンテナンスを行う側は障害を記録して、現場に作業員を派遣し、修理を実施する。つまり物事に不具合が生じてから対応を行う、という流れこそがリアクティブなビジネスプロセスだということだ。
この問題を解決するためには、データを連携させてリアクティブなプロセスをプロアクティブなプロセスに変えることが必要だという。
現在はありとあらゆる場所で膨大なデータを取得することが出来る。そこで「自分の組織の中ではどういったチームがどういった形でデータを活用しているのか」「お客様とのエンゲージメントはどうなっているのか」という事に着目し、様々なデータを有機的に連携させることで、リアクティブなプロセスからプロアクティブなビジネスプロセスへと変わることができるというのだ。
再び生産ラインでの障害を例に出す。ラインで障害が起きた場合、プロアクティブなビジネスプロセスならばどうなるのか。例えばデバイスからデータを集めてAIで異常検知を行い、異常を予測して障害を防ぐこと出来る。つまりタイムベースのメンテナンスではなく、コンディションベースのメンテナンスが実現するのだ。
このプロアクティブなビジネスプロセスを可能にするのが、「デジタルフィードバックループ」という概念だという。
通常、様々な分野のシステムは個々が閉じたものになりがちだ。そうした状況は例えば顧客情報システムに顧客データが溜まっている一方、「顧客が実際にどのように製品を使用したのか」というデータは別のシステム上にあり統合されていない、といった事態を引き起こす。これでは上手くシステムを有機的に連携させ、データをフィードバックしてプロアクティブなビジネスプロセスを構築することができない。
それを解消するのが「デジタルフィードバックループ」だという。データを中心に上手くつなげることで、1つのシステム分野が他のシステム分野の決行をより良くすることが出来る。例えば顧客情報システムに入っているデータと製品使用のデータを合わせることで、次の製品開発のアイディアになる。あるいは各従業員がどういった形で作業を実施しているのか、といったプロセスを分析することで、バックエンドオペレーションをどう改善するのか、といったことにつながるというのだ。

マイクロソフトはデータを基盤にクラウド、ソフトウェアと積み上げていく図(上記写真)を示し、それぞれのレイヤーがその下のレイヤーと整合性の取れた形でソリューションを提供することで、顧客の「デジタルフィードバックプール」の実現を促す、といった趣旨の発言も加えた。
プロアクティブなビジネスプロセスを実現する
沼本氏より「デジタルフィードバックループ」の説明があった後、日本マイクロソフト 業務執行役員 エヴァンジェリスト 西脇資哲氏(トップ画像)より、マイクロソフトのクラウドサービスを活用した複数の事例紹介があった。
以下では
- データを連携してフィードバックさせること
- プロアクティブなビジネスプロセスを作り出すこと
の2点に着目して事例を取り上げたい。
まず1つは鹿島建設による建物管理の例である。鹿島建設は日本マイクロソフトと連携し、建物管理プラットフォーム「鹿島スマートBM」の開発・提供を行うことを12月4日に発表している。

デモ画像として始めに映し出されたのは、建物内の機器の状況を管理する画面だ。機器の交換時期をセンシングして通知し、交換作業状況を可視化する。しかし、これだけではデータを連携したプロアクティブなビジネスプロセスとは言い難い。そこで映し出されたのは以下の画面である。

これは気温の変動データと、電力デマンド予測を並べたものだ。気温が変化すれば空調が調節され、電力量が変化する。つまり気温の変化を予測すれば、使用電力量の予測ができるのだ。電力管理は現場の知恵と経験が必要だが、それを人工知能によって予測させれば、効率的な電力マネジメントの後押しすることが出来る。鹿島建設ではこのようなデータ同士の相関関係を見て、建物管理にフィードバックさせているのだ。
2点目は工場のデジタルツイン。講演では以下のような中国で稼働している工場をデジタルツイン化した画像が映し出された。

生産ラインには多くの製造機械があり、それ以外にもリフトやベルトコンベアが稼働していることが分かる。デジタルツイン上では各機械が正常に動いているか否かを常に報告されている。
故障機器に対して遠隔から様々なオペレーションをすることも出来る。故障機器があれば生産ラインが一時停止し、出荷数量に影響が出てくる。通常であれば故障が発生した後に「生産量が減っているな」と後追いで気付くが、デジタルツインを構築していればプロアクティブに工場内の設備を管理し、故障予兆まで実現することができるのだという。

1986年千葉県生まれ。出版関連会社勤務の後、フリーランスのライターを経て「IoTNEWS」編集部所属。現在、デジタルをビジネスに取り込むことで生まれる価値について研究中。IoTに関する様々な情報を取材し、皆様にお届けいたします。
