埼玉県越谷市は東京という大規模市場を対象とした稲作等の都市近郊型農業が盛んで、市内には多くの水田・農地があるが、それらは小さな区画で細かく区切られており効率が悪く収益性が低い、農業人口の老化・減少などの理由から耕作がされず放置されている。
越谷市はこういった課題を解決するために、IoTを活用したメロンの水耕栽培に取り組んだ。
品質・収穫量に関わる環境データを収集
システム概念図はトップ画像の通りだ。
省電力センサーを用いて水耕栽培に関わる4つの環境データ(温度、湿度、照度、二酸化炭素濃度)をセンシングし、Raspberry Piから富士通クラウドへ送信される。
安価に最低限必要な基幹部品を1枚の基板に搭載したシングルボードコンピュータであるRaspberry Piで通信・セキュリティ管理を行うのは、導入・維持にかかるコストを下げるためだ。
タブレット端末へはハウス内でセンシングした環境データがリアルタイムに反映されるため、その場で細かな差異を確認しながら最適な環境へと調整を行うことができる。また、数値に変化があった際もその場で対応することができる。
セキュアな情報収集技術の開発

富士通はセキュアな情報収集を実現するために、IPA(情報処理推進機構)公開の指針をベースに自社のノウハウを活用し、動作するソフトウェアの堅牢化とトレンドマイクロ株式会社「Trend Micro IoT Security(TMIS)」が持つホワイトリスト機能(※)による不正動作の防止、セキュリティ証跡の一元管理、機器の物理的堅牢化(盗難、発熱対策など)を組み上げることで、多層防御によりシステム全体のセキュリティを強化している。
収集したデータの活用の先にある都市近郊型農業の展望
越谷市は今後、メロンハウス内で行っている作業記録をデジタル化、改善作業・環境データ・成長状態等を結び付けて管理・解析し、育成日誌として一元管理することで、効率的なメロンの栽培に向けて研究を進めていく。
高い品質を保ったまま一定数のメロンを収穫できるという予測が立てば、その販売経路についても予測を立てられるようになる。
都市近郊型農業は消費地までの距離が近いため輸送料が抑えられるだけでなく、鮮度も高い状態のまま納品、消費までを行えるという利点がある。
同市はその利点を伸ばしていくためにも、品質と収穫量のコントロールだけでなくその先の販売経路・消費者までを含む一連のサプライチェーンを見据えた戦略を立て、その手法を地域で共有し、農業を活性化させていくことを目標としている。
※ ホワイトリスト機能:事前に許可されたアプリケーション以外の起動を抑止するほか、登録されたアプリケーションの改ざんを防止する機能。
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