現在、製油所、化学工場などのプラントは、より安全性の高いプラント運営が求められている。そのため、保安四法(※)等により指定された法定点検に加えて、異常の早期発見、予兆管理に資する高度な点検技術の開発、導入が進められている。
このほど、日本電気株式会社(以下、NEC)は、AIを活用したプラント向けの異常予兆検知を行うシステムを、岡山県倉敷市のJXTGエネルギー水島製油所のボイラー設備へ納入し、本年10月に稼働開始予定と発表した。
同システムには、NECのAI技術群「NEC the WISE」の1つである「インバリアント分析技術」を用いている。「インバリアント分析技術」とは、大量に収集したセンサデータの中に埋もれている、システムの特徴を表す普遍的な関係性(インバリアント)を、対象プラント・システムのドメイン知識に頼らずに自動的、かつ網羅的に抽出して、モデル化し、モデルと一致しない「いつもと違う」挙動をサイレント障害として検知するAI技術である。
同システムでは、ボイラーの運転を監視/制御している温度・圧力・流量・バルブ開度、水位など、約500箇所のセンサデータを収集し、異なるセンサ同士の関係性を自動的に発見する。この関係性をいつもの状態として解析・定義し、同関係性に変化が起きた際に「いつもと違う」状態としてアラームを出すことができる。これにより、人手で行うことのできなかった設備異常の予兆をトラブルに至る前に早期に自動検知できるようになる。
また、「いつもと違う」状態により異常の予兆を検知した場合、その影響範囲の絞り込みや原因の切り分けができるため、これまで多大な時間を要していた原因分析の時間短縮や作業負担の軽減および保全計画の最適化が期待されている。
NECとJXTGエネルギーは、同システムを用いて、同製油所のボイラー設備における過去の運転データを利用し実証を行った結果、これまでの閾値設定や傾向分析による監視システムに比べ約1週間早く異常の予兆を検知することができた。
※化学プラントにおける保安の確保を目的として適用される「消防法」「高圧ガス保安法」「労働安全衛生法」「石油コンビナート等災害防止法」の四つの法律のこと。
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