サムスンが描く「AIリビング」 ーCES2026レポート1

毎年、年初にラスベガスで開催されているCES。IoTNEWSでは、AIによる変化を中心にレポートしていく。

今年最初のレポートはサムスンから。

今回、サムスンはCES会場とは別のWynnホテルに「First Look」と題された、自社コーナーを構え講演や展示を行っている。

講演で語られたのは、AIによる生活の変化だ。

テレビ、冷蔵庫、洗濯機・・・「もう進化は頭打ち」と思われていた家電に、AIが再び変化を持ち込もうとしている。

「本当にそれ、必要なの?」とも感じるような、家電製品の未来を語るムービーが多くある中で、AIによって「家電の未来」はどこまで現実になりつつあるのか。

今回のサムスンの講演と展示において、AIが「言われたことをこなす道具」という枠組みを脱却して、「リビングの仲間」へと変化した具体的な姿を見ることができた。

では、実際、年間約5億台ものデバイスを出荷するサムスンが、モバイル、テレビ、家電、ウェアラブルのすべてを「One Samsung」として統合し、AIをその中核に据えたことで、私たちの日常はどう変わるというのだろうか。

本稿では、今回の講演で語られた「AIによる生活の変化」そして、具体的な展示の内容からそこを紐解いていく。

「没入」と「パーソナライズ」が変えるエンターテインメント

まずはテレビだ。これまでのテレビは、画質の良さを競う「ディスプレイのスペック競争」としての側面が中心だった。ここにもAIは使われているが、直接的に体験を大きく変えたという印象を持つ人は少ないだろう。

その後、インターネットテレビが普及し、テレビ番組とサブスク動画、YouTubeなどが並列に並べられるようになり、利用者はより多くのコンテンツをテレビで楽しむことができるようになった。

テレビのAIといえば、Alexaなどの音声アシスタントによる操作がまず思い浮かぶだろう。これによりボタン操作からも解放されたことを思い浮かべる読者も多いのではないだろうか?

そんな中、サムスンの発表は大きく体験を変えると思わせる機能だった。

視覚と聴覚の新たな体験

今回の講演で、世界初の130インチ Micro RGB TVを発表したサムスン。

CES2026 サムスン Micro RGB TV

このテレビは、単なる巨大な画面であるというだけではなく、これまでにない純粋で鮮やかな色彩を実現したという、ディスプレイの進化だが、真の革新は、その内側にある。

「Vision AI Companion (VAC)」 と呼ばれるAIエンジンが、画面上の映像のリズムを読み取り、ユーザーが今何を求めているかを予測して、体験を最適化するというのだ。

具体的な生活の変化として興味深いのは、スポーツ視聴の例だ。

AI Sound Controller Pro(観客・解説・BGMの音量を分離制御)により、「解説者の声だけを消してスタジアムの熱狂に浸る」、あるいは逆に「周囲の騒音を消して解説に集中する」といった選択が初めて可能になった。

講演では実際に、音声指示を行うことで、実演された。

下の動画を音声をオンにしてみて欲しい。左下に音声指示をしているのが表示される。

① 観客の声をミュート(解説者の声が相対的に強調される)
② リセット
③ 観客の声を大きく(臨場感が増す)

この指示の後、実際に観客の音声が小さくなったり大きくなったりするのがわかる。

これは、AIが音の文脈を理解し、個人の好みに合わせて音響を編集することができる時代が到来したことを意味している。

7年間のOSアップグレード保証

さらに、サムスンは2026年モデルから7年間のTizen OSアップグレード提供を打ち出した。

通常、テレビは一度購入したら古くなるまで使って、また新しいものに変えるのが当たり前だった。

しかし、AI技術は、日々進化している。

そこで、スマートフォンのように、AIの進化に合わせてテレビもアップデートされ、賢くなり続けることができるということだ。

つまり、これまでテレビは購入後年数が経てば「古く」なっていたモノだが、今後は「共に成長する」モノになるという、大きなパラダイムシフトが実現されたと言える。

「家事の解放」と「インテリジェントなキッチン」

次に冷蔵庫だ。

冷蔵庫といえば、冷蔵庫の中をカメラで捉え、何が入っているかを認識する冷蔵庫や、タブレットがドア面に設置され、レシピが見られたり、エンタメ要素を楽しめたりといった進化が、これまでの主流だった。

しかし、今回のサムスンの講演ではAIによって家事のストレスを軽減することに成功した。

Google Geminiとの融合によるキッチン革命

まずは、性能の改善からだ。「AI Vision Inside」という、庫内を「見る」技術が、Google Geminiと統合された。

Geminiの画像認識力を知っていれば、イメージしやすいが、これはかなり正確だ。

このことで、冷蔵庫はこれまで以上に冷蔵庫の中身を正確に把握することができるようになるだろう。

AIが食品ラベルを読み取り、テキストと視覚情報を統合してアイテムを特定することで、外出先からの在庫確認や、賞味期限に基づいて補充を利用者に提案する機能がより正確になる。

下の動画では、

① トマトを冷蔵庫に入れる
② 冷蔵庫がトマトを認識し、扉面のディスプレイに追加される(のちに既存分とマージされる)
③ ブルーベリーのケースを取ると、取り出しを認識し、ディスプレイ上からもブルーベリーが消える
④ ブルーベリーを戻すと再び認識され、ディスプレイに表示される
⑤ 音声でドアを閉める(手が汚れていても閉められる)
⑥ 調理動画から作り方を抽出し、ステップ・バイ・ステップで説明する
⑦ その際、冷蔵庫にある/ない食材を識別し、ない場合はオーダーもできる
⑧ オーブンとも連携し、調理方法をオーブンに送る

というデモが行われている。

食材の認識までであれば、「これまででも、できていそうなことが改善されただけ」と思う読者もいるかもしれない。

しかし、実は、これだけではない。料理のプロセス自体にもAIが伴走するようになったのだ。

新しい冷蔵庫は、料理動画をAIが解析し、「ステップバイステップの手順」へと自動変換することができる。

通常料理動画を見ながら料理を進めていると、途中で止めたり、少し巻き戻したりしたくなることがよくある。

しかし、この機能が搭載されることにより、手が塞がっている調理中に動画を一時停止する手間が省け、冷蔵庫やオーブンの画面でスムーズに手順を確認できるようになるということだ。

さらに、冷蔵庫とオーブンは連携することができるので、オーブン料理の際にはオーブンのディスプレイに調理方法を表示するといったことも可能になる。

一見小さな改善に見えるが、調理中の「止める・戻す・手を拭く」といったストレスを確実に減らすことが実現されたのだ。

労働から解放される洗濯・掃除体験

また、洗濯においても、進化がある。

新しいエアドレッサーには「オート・リンクル・ケア」機能が搭載され、シャツを掛けておくだけで、AIが強力な空気とスチームを制御し、シワのない状態に仕上げるので、今後はアイロンがけをする必要がなくなる。

CES2026 サムスン エア・ドレッサー

さらに、ロボット掃除機(Jetbot Steam Ultra)は、コーヒーやジュースなどの「液体」を識別する能力を身につけた。

床にあるものに合わせてインテリジェントに回避・対処する姿は、まさに「家の中を把握し、自律的に動くパートナー」そのものといえる。

健康をプロアクティブに守るというビジョン

今回の講演で最も印象的だったのは、介護・看護の概念が「リアクティブ(問題が起きてから対処する)」から「プロアクティブ(予測して防ぐ)」へと変わるというビジョンだ。

睡眠と環境のシームレスな連携

AIリビングでは、Galaxy WatchやGalaxy Ringが検知した睡眠データが、直接エアコンと連携する。

CES2026 サムスン Galaxy Watch, Ring

例えば、ユーザーの体内時計(サーカディアンリズム)に合わせて、寝室の温度や照明が自動調整され、最もリフレッシュした状態で目覚められる環境が作り出されるというのだ。

専用アプリでは睡眠の状態なども取得できる。

CES2026 サムスン 睡眠状況などの可視化

これは、個別のデバイスが動くのではなく、家全体が「一人のユーザーの快眠」という目的のために連携し、調和する体験が生まれると言える。

家族の健康を見守る

AIは、本人さえ気づかない微細な変化も捉える。

例えば、ベータ版ではあるが、認知機能の変化の兆候を検知する機能では、Galaxyデバイスを通じて日々の睡眠パターンや発話の調子の変化を分析することができる。

AIは、これに対して、診断を下すのではなく、「いつもと少し違う」という気づきを家族に共有することで、早期の対策を支援するというのだ。

日常生活を邪魔することなく、背景でそっと見守り続ける「静かなケア」が実現できるともいえよう。

Galaxy Z TriFold

こういった様々な家電製品だけでなく、昨年末に発表された、今回新しい3つ折りケータイとなる、「Galaxy Z TriFold」も展示されていた。

CES2026 サムスン Galaxy Z TriFold

10インチディスプレイを搭載し、展開時の最薄部はわずか3.9mm、実際に持ってみたところ、軽いなと感じた。

広げるとディスプレイが広いのは当然だが、下の写真のように様々な画面分割を活用できたり、パソコンのキーボードに慣れている人にとってはありがたい、大きく打ちやすいキーボードを表示することも可能であるということだ。

CES2026 サムスン Galaxy Z TriFold
参考:サムスンニュースルーム

テレビや冷蔵庫といった家電と、手元のスマートフォンのアプリが連携することで、より生活に変化が生まれそうだ。

AIリビングを支える基盤

AIが私たちのプライベートな領域に深く入り込む以上、その基盤には「信頼」が必要だ。

サムスンは、Samsung KnoxおよびKnox Matrixをすべての体験の中核に据え、セキュリティとプライバシーを最優先事項として掲げた。

また、AIによる「予測」は、具体的な経済的利益にも繋がっているという。

SmartThingsを通じて、水漏れなどのリスク軽減機能を保険会社と共有することで、住宅保険の保険料を軽減する「スマートホーム・セービング」が導入された。

これは、AIがリスクを低減させることで、家計の節約に直結する仕組みともいえる。

さらに、TM Roh(CEO and Head of DX Division)氏は、AIが人々をエンパワーメントする手段であるべきだと強調した。

サムスン・イノベーション・キャンパスなどを通じて、次世代の若者が生成AIなどのスキルを学び、コミュニティの課題を解決できるよう支援する姿勢は、AIが単なる「消費」の道具ではなく、「創造と解決」のパートナーであることを示している。

AI everywhere for everyone

2026年の「First Look」が示した未来、それは「テクノロジーが消え、体験が残った」世界だといえる。

AIはもはや設定が必要な複雑な機能ではなく、私たちの生活の文脈(コンテクスト)を理解し、必要な時にだけそっと手を差し伸べる存在となった。

テレビが個人の好みを察して音声を整え、冷蔵庫が健康状態に合わせたレシピをオーブンに送り、ウェアラブルデバイスが安眠のために室温を操る。

これらすべてのデバイスが「One Samsung」として機能することで、私たちは家事や管理という煩雑な作業から解放され、自分にとって本当に大切な時間、つまり「人間らしい時間」を取り戻すことができるのだ。

AIリビングは、私たちがより豊かで、健康的で、創造的な人生を送るための、力強い味方として常に私たちのそばにいてくれる。

無料メルマガ会員に登録しませんか?

膨大な記事を効率よくチェック!

IoTNEWSは、毎日新着ニュースを公開しております。

週一回配信される、無料のメールマガジン会員になっていただくと、記事一覧やオリジナルコンテンツの情報が取得可能となります。

  • AIに関する最新ニュース
  • 実践を重要視する方に聞く、インタビュー記事
  • 業務改革に必要なAI活用方などのノウハウ

など、多岐にわたるテーマが配信されております。

また、無料メルマガ会員になると、会員限定のコンテンツも読むことができます。

無料メールから、気になるテーマの記事だけをピックアップして読んでいただけます。 ぜひ、無料のメールマガジンを購読して、貴社の取り組みに役立ててください。

無料メルマガ会員登録