NTT ComとNCS、人工知能を活用した危険運転の自動検出に成功

NTTコミュニケーションズ株式会社(以下、NTT Com)および日本カーソリューションズ株式会社(以下、NCS)は、2016年9月に、車両から取得した各種データ(ドライブレコーダーや速度など)を人工知能(AI)により解析する共同実験により、交通事故の原因となり得る危険な運転を高精度で自動検知することに成功した。今後両社は、路面や交通状況など、AIにより自動認識できる対象を拡大するとともに、映像やセンサー情報のビッグデータ解析を進め、危険運転の検知・解析の高度化を目指す。

同実験では、NTTサービスエボリューション研究所(以下、NTT研究所)の移動状況推定技術(*1)を用いたAIにより、ドライブレコーダーなどで記録される時系列のマルチモーダルデータ(*2)を分析することで、飛び出してくる自転車などとの接触事故となりかねない危険な運転を約85%の精度で自動検出することに成功。このような「出会い頭」の事故は、交通事故の発生状況のうち「追突」に次いで2番目に多く、約24%を占めているという(*3)。

なお同AIは、「corevo(TM)(コレボ)」を構成する技術の一つ。

NCSは、カーリースを契約している企業に、安全運転促進のための自動車IoTツールとして「NCSドライブドクター(R)」(*4)を提供している。このサービスのオプションとして提供している「NCS交通安全プログラム」の映像解析サービスでは、現在専任スタッフが、多くの時間を要しながら、車載器に記録された膨大な映像データの中から、「交通違反」「ヒヤリ・ハット」などの危険運転シーンを抽出し分類する作業を行っている。

NTT Comは、2015年より時系列ディープラーニング(*5)技術を活用したAIの映像解析への活用に取り組んでおり、これまで警備会社との不審動作・不審者検知実験(*6)や、電機メーカーとの広エリアにおける不審者追跡実験(*7)などを行ってきた。これらの成果とNTT研究所のAI技術である移動状況推定技術を活用することで、映像や速度などマルチモーダルで時系列なデータから、危険運転を自動で判別し、人が実施する作業をより早く・正確に実施できると考え、両社で実験を開始した。

同実験では、「危険運転の対象を自転車などが車両の前面に飛び出してきて、車両と接触しそうになるシーン」を「ヒヤリ・ハットシーン」と設定。以下の実験手順を進め、9,000件のデータに対して約85%の確率でヒヤリ・ハットシーンの検出に成功したという。

(1) 「NCSドライブドクター(R)」から映像データ、各種センサーデータ(3軸加速度センサー情報、速度情報等)といった時系列なマルチモーダルデータを抽出
(2) 抽出したデータから時系列なマルチモーダルデータをディープラーニングに基づき分析する移動状況推定技術を用いて、ヒヤリ・ハット判定モデルを生成
(3) 生成モデルを用いて、ヒヤリ・ハットシーンが含まれるドライブレコーダーデータを自動検出

NTT Comは、同実験で得た時系列なマルチモーダルデータをAI技術により分析する知見を、映像分析の共通プラットフォームや各種IoTソリューションなどに広く提供していく予定としている。NCSは、今回対象とした接触事故につながる運転以外にも一時停止不履行や信号無視など法令違反も含めた危険運転データや地域性、時間帯、車種など個別の状況を踏まえた様々なケースの分析を行っており、これらのインシデントを自動検出するために、AIによる自動分析の高度化を検討していくという。

両社は、危険運転自動抽出実験で得られた成果をさらに進化させ、交通事故削減ソリューションのサービスの一層の向上を目指すとともに、映像およびセンサー情報のビックデータとAI技術を活用した新たなビジネスの可能性についても検討を進めていく。

(*1)ドライブレコーダー等で取得される、人やモノの動きに関わるセンサデータ(速度、加速度等)と映像の組合せから、対象物の動きと周囲の状況を理解し、「移動の状況」(対象物がどのような環境でどのような移動をしているか)を自動推定する技術。
(*2)複数のインターフェースを持つデータのこと。本件の場合は、ドライブレコーダーに記録されている映像データと各種センサーデータのことを指す。
(*3)(参考)警察庁 交通局『平成27年における交通事故の発生状況』データ
(*4)「NCSドライブドクター(R)」は走行中の運行データを自動的に転送することで、車両の運行状況や運転者の安全運転実施状況をWeb上で把握でき、運転映像も録画できるテレマティクス運行管理サービス。
(*5)深層学習と呼ばれる多層構造のニューラルネットワーク。従来型の機械学習と異なり、自動的に物事を解釈するために必要となる特徴・要素を抽出することが可能。人工知能(AI)の発展におけるブレークスルーとして注目されている。NTT Comでは、時間軸方向の情報も盛り込み3次元データを解析することで、連続した時間的変化をとらえることに成功している。
  (参考)人間の「動作」を理解する新しい人工知能(AI)「時系列Deep Learning」を開発、8割強の精度で識別に成功
(*6)人工知能(AI)を活用した映像解析技術により複数カメラを跨いだ不審者検出・追跡を高い精度で実現~ALSOKと連携した実証実験に成功~
(*7)三菱電機とNTTコミュニケーションズが、監視カメラを用いた新たなソリューション提供で協業~監視カメラシステムと人工知能(AI)による映像解析を連携して提供~

【関連リンク】
NTTコミュニケーションズ(NTT Communications)
日本カーソリューションズ(NIPPON CAR SOLUTIONS)

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