富士通、世界最速クラスのディープラーニング基盤と、業種・業務に対応したAIサービスを提供

富士通は、2015年11月に「Human Centric AI Zinrai(ジンライ、以下、Zinrai)」として体系化したAI(人工知能)に関する知見や技術をベースに、顧客のAI活用を加速させる「Zinrai」関連のサービス5種を開発し、順次提供を開始する。同社はこれらを、顧客のビジネス革新を加速する「FUJITSU Digital Business Platform MetaArc(メタアーク)」の中のサービスに位置付けている。

今回提供するサービスは、300件を超えるAI関連の問い合わせや実証実験から導き出された、特にニーズの高いAI機能30種をAPI(注1)として提供する「FUJITSU AI Solution Zinraiプラットフォームサービス(以下、Zinraiプラットフォームサービス)」と、世界最速クラスの処理性能を実現したディープラーニング基盤サービス「FUJITSU AI Solution Zinraiディープラーニング(以下、Zinraiディープラーニング)」、顧客のAI活用に向けたコンサルティングから導入、運用までをトータルに支援する「FUJITSU AI Solution Zinrai活用コンサルティングサービス(以下、Zinrai活用コンサルティングサービス)」、「FUJITSU AI Solution Zinrai導入サービス(以下、Zinrai導入サービス)」、「FUJITSU AI Solution Zinrai運用サービス(以下、Zinrai運用サービス)」だ。

「Zinraiプラットフォームサービス」と「Zinraiディープラーニング」を、コンサルティングや導入、運用に関するサービスと組み合わせて活用することで、顧客は高品質で高速なAI活用システムを短期間で構築することが可能になるという。

背景

近年、顧客のさらなるビジネス拡大や業務変革に向けた様々なデータ活用が本格化しており、それをさらに高度化・効率化する重要な技術として、AIへの関心が高まっている。

同社は、1980年代より株式会社富士通研究所(以下、富士通研究所)(注2)が中心となり培ってきたAIの知見および技術を、2015年11月に「Zinrai」として体系化した。また、国内トップのカスタマーベースを生かし、顧客とともに、300件を超えるAIの業務システムへの導入に向けた検討と実証実験を行ってきた。今回提供するサービスは、その中で明確化された、顧客がAIを活用していく上で特に必要としている技術やノウハウをサービス化し、提供するものだ。

新サービスの概要

1.AI技術をAPIとして提供する「Zinraiプラットフォームサービス」

「Zinraiプラットフォームサービス」は、AI活用に関連した300件を超える問い合わせや顧客との実証実験から抽出された、特にニーズが高く、実用性の高いAI機能をAPIとして提供するサービスだ。学習モデル構築機能により、あらかじめ用意された学習モデルを活用するだけでなく、顧客自身で業務に必要となる新たな学習モデルを容易に生成することも可能。また、ディープラーニング基盤を必要とする顧客には、本サービスに含まれる世界最速クラスのディープラーニング基盤「Zinraiディープラーニング」を提供する。

「Zinraiプラットフォームサービス」では、AIの要素技術ごとに「知覚・認識」、「知識化」、および「判断・支援」の3分野に分類された基本API 21種と、要素技術を利用シーン別に組み合わせ、顧客業務でのAI活用をより容易にする機能やナレッジで構成した目的別API 9種の合計30種を提供する。顧客は、その中から必要なAPIを選んで利用することで、AI活用システムを迅速に実現できるという。

第一弾として、「画像認識」や「音声テキスト化」、「知識情報検索」などの基本API 7種と、「需要予測」などの目的別API 2種を2017年4月より先行提供し、2017年度中に30種まで拡充する。

富士通、世界最速クラスのディープラーニング基盤と、業種・業務に対応したAIサービスを提供

2.世界最速クラスの学習能力を提供する「Zinraiディープラーニング」

「Zinraiプラットフォームサービス」の一環として、富士通研究所が開発したスーパーコンピュータの並列処理技術と高速なディープラーニング処理を実現するソフトウェア技術(注3)、および米国NVIDIA Corporation(注4)の最新GPU(注5)「NVIDIA Tesla™ P100」を実装することで世界最速クラスの学習処理能力を実現したディープラーニング基盤サービス「Zinraiディープラーニング」を提供する。本サービスをベースとして、顧客ごとに最適なAPIと組み合わせて利用することで、高速・高品質なAI活用システムを実現することが可能になる。

3.AI活用をコンサルティングから導入、運用までトータルに支援する各種サービスを提供

顧客のAI活用における企画から導入、運用までをトータルに支援するため、同社のAI専任コンサルタントが顧客の経営課題やニーズから最適なAI活用シナリオを導き出す「Zinrai活用コンサルティングサービス」と、AIを活用したシステムの短期間での設計、構築を支援する「Zinrai導入サービス」、AI導入後の学習モデルのメンテナンスを行う「Zinrai運用サービス」を提供する。

今後の展開

AIの活用領域がさらなる広がりを見せる中、同社は、富士通研究所が中心となって開発したAIの要素技術のさらなるAPI化を推進するとともに、通信の端末やロボット、自動車などのエッジデバイスでのAI活用を強化するため、「Zinraiプラットフォームサービス」にそれらの機器への学習済モデル配信機能を実装する。

また、AI活用システムを自社内に構築したい顧客向けに、「Zinrai」のハードウェア、ソフトウェア、サービスをパッケージ化したオンプレミス商品を提供していく。

さらに、スーパーコンピュータ「京」(注6)で培われた同社のプロセッサ開発技術と最先端のCMOS(注7)テクノロジーを採用した、独自のディープラーニング専用AIプロセッサ「DLU™」(注8)の開発を進め、2018年度からの出荷開始を目指す。

 

東京大学大学院 工学系研究科特任准教授 松尾 豊氏のコメント

ディープラーニングは、AIにおける50年来のブレークスルー技術であり、インターネットの発明に匹敵する大きな社会変化をもたらします。富士通が開発するディープラーニング専用プロセッサ「DLU™」が日本の産業競争力を高め、世界に貢献していくことを期待しています。

エヌビディア合同会社 日本代表兼米国本社副社長 大崎 真孝氏のコメント

知的産業革命とも言われるAI活用の原動力になっているのはディープラーニングです。ディープラーニングは大きな可能性を秘めていますが、一方で膨大な計算力が必要です。エヌビディアの最新のハイエンドGPUである「Tesla™ P100」と富士通が長年培ったスパコン並列化技術を組み合わせることで、ディープラーニング分野で世界最高速の学習環境を構築でき、大規模ニューラルネットワークによる高精度モデルの開発を加速し、両社で新たなサービス・商品の創出に貢献していきます。

株式会社システム計画研究所/ISP 事業本部副本部長 稲荷 和典氏のコメント

同社は、京都大学大学院医学研究科 ビッグデータ医科学分野 奥野研究室(奥野恭史教授)様と2016年4月1日より開始した研究テーマ「ディープラーニングを用いた化合物の活性予測」において、「Zinraiディープラーニング」のアーリーアクセスに参加させていただきました。今回、「Zinraiディープラーニング」の強力なマルチGPU環境と同社開発の高速データフィードを可能とするフレームワークを活用することで、研究を大いに加速することが可能となりました。この成果は、2016年10月25日にCBI学会2016年大会にて発表させていただいております。株式会社システム計画研究所は、奥野研究室様との共同研究を推進するとともに、AI技術の各産業分野への応用に関して、富士通とのより強固なパートナーシップ構築に向けて取り組んで参ります。

注1 API:
Application Programming Interfaceの略。あるコンピュータプログラム(ソフトウェア)の機能や管理するデータなどを、外部の他のプログラムから呼び出して利用するための手順やデータ形式などを定めた規約のこと。
注2 富士通研究所:
本社:神奈川県川崎市、代表取締役社長:佐々木 繁。
注3 高速なディープラーニング学習処理を実現するソフトウェア技術:
2016年8月9日プレスリリース「Deep Learning学習処理の高速化技術を開発」。
注4 NVIDIA Corporation:
本社:米国カリフォルニア州、創設者兼CEO:ジェン・スン・フアン。
注5 GPU:
Graphics Processing Unitの略。主に画像処理に特化したプロセッサ。昨今では、その高い処理能力により画像処理以外の目的に応用されることが多い。
注6 スーパーコンピュータ「京」:
文部科学省が推進する「革新的ハイパフォーマンス・コンピューティング・インフラ(HPCI)の構築」プログラムの中核システムとして、理化学研究所と富士通が共同で開発を行い、2012年に共用を開始した計算速度10ペタフロップス級のスーパーコンピュータ。
注7 CMOS:
Complementary Metal-Oxide Semiconductorの略。相補型金属酸化膜半導体。 静止状態では、ほとんど電流が流れないため、消費電力が少ない特長がある半導体。同社メインフレーム/スーパーコンピュータのプロセッサに採用。
注8 DLU:
Deep Learning Unitの略。

提供:富士通

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