「2030年の街づくり」に向けて、官民一体となった取組を推進 ―IoT推進ラボ主催 第8回「IoT Lab Connection」

IoT推進ラボは2月27日、第8回「IoT Lab Connection」を開催した(場所:ベルサール六本木グランドコンファレンスセンター)。

「IoT Lab Connection」は、新たなビジネスモデル創出を目指す事業者・団体間の連携促進を支援するネットワーキングイベントだ。既存の産業分野を越えて新しい連携を創出するため、毎回異なるテーマを設定。第8回目となる今回のテーマは「2030年の街づくり」だ。

国内外のスマートシティの動向

当イベントの「第一部」では、二つの基調講演が行われた。初めに、株式会社日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門 プリンシパル 東博暢氏が登壇。テーマは「第4次産業革命期における街づくりのあり方とは-The City as a Service Platform for Citizen-」だ。

東氏は、未来の街づくりにおけるカギは、実空間とサイバー空間の融合により価値を生み出すサイバー・フィジカル・システム(CPS)の世界観にあると述べた。官民が一体となってCPSを確立し、生活者にとって本当に便利でいいサービスを実現する。そうした構築された「スマートシティ」によって生活者や企業、住民に公益をもたらすことが、これから求められる経済のあり方になるという。

「2030年の街づくり」に向けて、官民一体となった取組を推進 ―第8回「IoT Lab Connection」
第4次産業革命期における街づくりのカギは、実空間とサイバー空間をマネジメントする「サイバー・フィジカル・システム(CPS)」

続いて東氏は、世界での街づくりの事例をいくつか紹介した。たとえばニューヨークでは、グランドデザインの策定にはじまり、豊富なデータ収集を推進。この試みに対して約1万社のスタートアップが集結している。中国では、習近平国家主席の発案で1万人が暮らす街を更地からつくるというプロジェクトがスタート。香港と深セン間に新幹線のような高速鉄道を開通、あるいは香港と杭州を高速道路で結ぶといった計画も進められている。

一方、少子高齢化に直面する日本はこれらの国と違った街づくりを構想する必要があるが、その準備は整いつつあると東氏は説明。国交省の「スマートシティ計画」や内閣府の「スーパーシティ構想」を例に挙げ、「経産省、国交省、内閣府などが一つにまとまって新しい街づくりに取り組み始めている。これからの日本の街づくりのへの取り組みは面白いものになる」と述べた。

日本の取り組みにおいて欠けているのは「分野間データの結合」だという。「これは1プレーヤーで取り組める課題ではない。IoT推進ラボなどを媒介にしてスタートアップ企業と既存企業がチームを組むことで、自動走行や無人コンビニが当たり前の世界が実現できるはずだ」と東氏は述べ、講演をしめくくった。

IoT・AIで進む小売業の再定義

続いて、株式会社ABEJAの ABEJA Insight for Retail 事業責任者 伊藤久之氏が登壇し、講演を行った。テーマは「リテールテックが実現する未来の小売業」だ。

ABEJAはディープラーニングベースのAIプラットフォームを提供するAIベンチャーだ。小売業界向けには、画像解析などのAI技術を活用した店舗解析サービス「ABEJA Insight for Retail」を提供している。

伊藤氏は、「今、小売業の意義を再定義する時期に来ている」と述べた。「もともと小売業はBtoBで取引される大口の商品を小分けして消費者に提供するという役割を持っていた。つまり流通の一機能としての役割。しかし、これからは、顧客の最も近くにいる存在として、顧客の購買行動の価値向上に資することが重要になってくる」(伊藤氏)

顧客の理解を深めるためのツールとして、従来は会員登録によるデータやPOSデータがあった。最近では加えて、「IoTを活用することで購買に至る過程もデータ(リアル空間のデータ)も解析できるようになってきた」と伊藤氏は述べた。

お客様の体験価値向上のためのステップを示したスライド
お客様の体験価値向上のためのステップを示したスライド

伊藤氏はIoTの価値について、「これまで、小売業のリアル店舗ではベテランスタッフの経験値が、いわばデータの役割を果たしていたと言える。それが、IoTの発達によって、データとして可視化することができ、どのスタッフでも活用することができるようになった」と述べた。

「AIへの興味は引き続き非常に強いと感じているが、本来は手段であるはずのAI導入が目的にすり替わってしまっている企業もいる。IoTやAIはあくまでも手段。事業の本来の目的や課題が何かしっかりと特定し、その実現や解決のためにIoTやAIを導入すべき。そうすれば、変革期にある小売業においても、着実に未来の展望が開けるはずだ」と述べた。

シェアリングエコノミーの動向と街づくり

「2030年の街づくり」に向けて、官民一体となった取組を推進 ―第8回「IoT Lab Connection」
(左)経済産業大臣政務官 滝波宏文氏、(右)内閣官房シェリングエコノミー伝道師/シェアリングエコノミー協会事務局 積田有平氏

「第二部」では、一般社団法人シェアリングエコノミー協会が、シェアリングエコノミーの概要や同協会が進める取り組みについて紹介した。IoT推進ラボと一般社団法人シェアリングエコノミー協会の連携企画となる。

初めに、経済産業大臣政務官 滝波宏文氏が登壇し、「シェアリングエコノミーには社会課題を解決し人々の暮らしを豊かにする力がある」と述べた。ただ一方で、資金調達が困難だったり、ビジネスパートナーとのネットワーク構築の面で苦労が多かったり課題も多いと指摘。「経済産業省としてシェアリングエコノミーの可能性を最大限に引き出すためにさまざまな施策を講じていく」と述べた。

続いて、内閣官房シェリングエコノミー伝道師/シェアリングエコノミー協会事務局の積田有平氏が、同協会の活動概要やシェアリングエコノミーの基本的な考え方について説明した。

積田氏は、「シェアリングエコノミーとは場所や乗り物、人、スキル、資金などをシェアする新しいエコノミー(経済)の形だ。ポイントは、インターネットプラットフォームを通じてのマッチングと、個人間での取引であることの2つだ。これまで経済の中心は企業だったが、シェアリングエコノミーでは個人がその担い手となる」と述べた。

世界最大のシェアリング市場は中国。もうすぐGDPの10%がシェアリングエコノミーによって形成されるとの予測がある。一方、日本の市場規模はまだ小さく2016年の時点で約5000億円の規模だ。「しかし、焦る必要はない」と積田氏は述べた。「日本には日本流のシェアリングエコノミーのあり方があるはず。シェアリングエコノミー協会ではそれを推進していきたい」(積田氏)

「2030年の街づくり」に向けて、官民一体となった取組を推進 ―第8回「IoT Lab Connection」
シェアリングエコノミー協会の中期ビジョン

また、積田氏は地方創生におけるシェアリングエコノミーの役割について言及。「少子高齢化により人口が減少すれば税収は少なくなる。するとこれまでのような公共サービスの維持が困難になる。そこで、共助で地域を支えるシェアリングエコノミーが大事になる」と述べた。

2017年度に政府が閣議決定した成長戦略の中で、シェアリングエコノミーを活用した地方公共団体を30生み出すという目標が設定された。これを受け、シェアリングエコノミー協会は渋谷区と包括連携協定を結んだ。また、2017年11月には「シェアリングシティ」の第1号認定を行った。15の自治体が認定し、各自治体がそれぞれの行政課題に応じたシェアリングエコノミーの取り組みを進めている。

シェアリングエコノミー協会は2020年に市場規模1兆円を目指す。また、来年に迫った東京オリンピック・パラリンピックに向けてもシェアリングを推進し、「個人が社会や街づくりの担い手になる社会を推進していく」と積田氏は述べた。

「2030年の街づくり」に向けて、官民一体となった取組を推進 ―第8回「IoT Lab Connection」
(左)一般財団法人渋谷区観光協会渋谷区観光協会 理事長 金山淳吾氏、(右)シェアリングエコノミー協会 事務局 石原遥平氏

続いて、一般財団法人渋谷区観光協会 理事長の金山淳吾氏が登壇し、渋谷区で進めるシェアリングエコノミーの取り組みについて紹介した。

「渋谷には、ディズニーランドや東京タワー、スカイツリーのようなわかりやすい観光資源はない。ただ渋谷という街があり、その中で活動する様々な個性が存在するのが渋谷の魅力。こうした一人一人が持つ個性を活かすことで、海外からの旅行客に新たな観光体験を創造していく」と金山氏は述べた。

具体的には、渋谷の公共空間スペースや私企業の遊休スペースを利用して、渋谷区内のシェアエコノミーを推進する「一般社団法人share shibuya」の取り組みを紹介。企業や行政、町に存在する街のキーパーソンがつながりを持つことによって、新たなビジネスが生まれてきているという。

「2030年の街づくり」に向けて、官民一体となった取組を推進 ―第8回「IoT Lab Connection」
シェアリングエコノミーの認証取得サービス

次に、シェアリングエコノミー協会 事務局の石原遥平氏が、「シェアリングエコノミー認証制度」について説明。「シェアリングエコノミー認証制度」とは、第三者機関がシェアリング事業者/サービスの安全性・信頼性を評価してそれを公表することで、利用者の選択をサポートするための制度だ。

アンケート調査を行い、「何かトラブルが発生した時に心配だ」という日本人独自のメンタリティーが、シェアリングエコノミーの阻害要因になっていると分析したことが背景にある。心理的なハードルを下げる施策として認証制度がスタートしたのだ。

現時点では20社、21サービスが認証を取得している。同イベントでは、このほど新たに認証を取得したecbo株式会社、株式会社コメ兵、株式会社マクアケ、株式会社ネクストビート、軒先株式会社、株式会社Tadakuの6社がプレゼンテーションを行った。

「2030年の街づくり」に向けて、官民一体となった取組を推進 ―第8回「IoT Lab Connection」
(左)ecbo株式会社:「荷物を預けたい人」と「荷物を預かるスペースを持つお店」をつなぐシェアリングサービス「ecbo cloak」、(右)株式会社コメ兵:フリーマーケットアプリ「KANTE(カンテ)」
「2030年の街づくり」に向けて、官民一体となった取組を推進 ―第8回「IoT Lab Connection」
(左)株式会社マクアケ:クラウドファンディング「Makuake」、(右)株式会社ネクストビート:子育てのシェアサービス「キズナシッター」
「2030年の街づくり」に向けて、官民一体となった取組を推進 ―第8回「IoT Lab Connection」
(左)軒先株式会社:空き駐車場のシェアリングサービス「軒先パーキング」、(右)株式会社Tadaku:外国人が教える家庭料理教室「Tadaku」

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