6月8日、東京都内にて「DLLAB 2 周年イベント ディープラーニングの社会実装を阻むものは何か?」が開催された。
ディープラーニングラボ(DLLAB)とは、Deep Learning Lab(ディープラーニング・ラボ)は、ディープラーニングを中心とした先端技術の持つ可能性を、実際のビジネスへ応用するべく、技術とビジネスの両面に精通したプロフェッショナルたちが集まるコミュニティだ。
本イベントはディープラーニングラボの設立2周年を記念して開催された。開催日は6月8日の土曜日と週末の開催であったが500名近い参加希望者が集まりブースやネットワーキングスペースも非常に盛況であった。
本記事では東京大学 教授の松尾豊氏の基調講演についてとりあげる。
松尾豊氏 基調講演
松尾氏は最初にディープラーニングに関して研究は進んでいるもののビジネス化はそこまで進んでいない状況に触れ、今の状況をあまり短期的な目線でとらえるべきでないと述べた。
イノベーションとしてのディープラーニング
写真の平成元年と平成30年の世界の企業の時価総額ランキングを見てみるとランキング上位の企業が大きく様変わりしていることが見て取れる、この変化は1990年代に技術進歩したインターネット技術によるところが大きい。
ディープラーニングはインターネットやエンジンに並ぶ数十年に一度のイノベーションであり、インターネットのように、20年ほどかけてビジネス化されていくだろうと述べた。
Guazi:経験なしの素人でも中古車査定を可能にする
ここで紹介されたディープラーニングの事例はカメラを装備した査定員が持ち込まれた中古車の決められた場所を見ることで中古車の価格が短時間で査定されるといったものだ。カメラの映像がクラウドにアップロードされAIによって自動的に査定が行われる。
いわゆる職人の目が必要だった中古車査定がカメラを身に着けた素人の査定員だけで行えるようになったという点で特徴的な事例といえる。
PoCからプロダクションへ
インターネット黎明期はホームページを作る技術があるだけでビジネスになったが今ではそうではないように、ディープラーニングも技術とビジネスの掛け算で企業価値を極大化させることが重要になってくる。
現時点でのディープラーニングのPoCは目的がはっきりしない事例が多いが、とりあえず作って終わりではなく「儲けてなんぼ」で最終的に顧客の付加価値に繋がるものでないと事業が長続きしない。
現在ITベンダーやスタートアップは開発案件の受託で利益を上げることができているがそういった時代はインターネットの時と同じように長続きせず、産業領域ごとに特化をしていかないといずれ競争力を失っていくだろうと述べた。
この章の最後ではAIブームについても触れ、なんでもかんでもAIというだけで評価が高い企業もあるがインターネットバブルが2000年代にはじけたようにAIブームもいずれ終息し玉石混交の企業がふるいにかけられる調整局面が訪れる可能性が高いことを示唆した。
まとめ
PoCから実用化事例が少ないがそこまで悲観することではなく、インターネットや半導体という日常生活に溶け込んでいる技術も最初は試行錯誤の連続であった。
現在のディープラーニング試行錯誤の中からも大きな付加価値を生みそうなものもいくつか出てきているという。
試行錯誤の情報交換の場としてとして本イベントの主催であるディープラーニングラボのようなコミュニティは非常に良い取り組みであり、最終的には顧客への価値や売上、利益に結び付く「儲けてなんぼ」を意識することが重要であると述べて講演を締めくくった。
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コンサルタント兼IoT/AIライター 人工知能エンジン事業の業務支援に従事するかたわら
一見わかりにくいAIの仕組みをわかりやすく説明するため研究中