NTTコミュニケーションズが放送コンテンツの5G伝送実験を実施、非圧縮での4K/8K映像の無線伝送実現へ

4K/8Kに代表される放送コンテンツの高精細化に伴い、増大する映像・音声などのデータを効率よく伝送するため、放送業界では従来用いられてきたSDIなどの専用方式からIT技術を活用したIP伝送、いわゆるVideo over IP方式への移行が進んでいる。

放送に関する国際的標準として広く用いられているのがSMPTE規格だ。SMPTEとは、米国映画テレビ技術者協会、および、この協会が定めた標準規格である。このSMPTEが定める規格の中で主流なIP伝送は、SMPTE ST 2022規格であり、同期を維持しながらオーディオ、ビデオおよび補助データを含むストリームを分割し、それぞれが別々にルーティングされ、エンドポイントで再び集約することを可能とする。

しかし、複数の中継映像・音声データのタイミングのずれを補正する時刻同期を別の機械で実施する必要があり、専門的なスキルと多大なコストが必要となる。そこで近年、時刻同期が可能なST 2110規格が提唱され、複数個所の中継における新たな伝送規格として注目されている。

一方、中継現場から高精細な放送コンテンツを遅延なく伝送するためには、非圧縮映像が伝送可能な高速回線が必要となる。しかし、有線ですべてをカバーするのは機材コストやオペレーションの面で負担が大きく、柔軟性も低いため、高速・大容量・低遅延という特長を持つ第五世代移動通信システム(以下、5G)での映像伝送技術の開発が期待されている。

今回、NTTコミュニケーションズ(以下、NTT Com)は、5Gで、SMPTE ST 2110規格による音声および時刻データを人手を介さずに伝送する実験を実施した。

同実験では、カメラおよびマイクから取得した音声情報を圧縮処理することなくSDIからST 2110規格IPデータに変換(※1)し、GMC(※2)を通じて取得した正確な時刻情報と組み合わせて、「ドコモ5Gオープンパートナープログラム」の5G環境を活用した伝送を行い、成功した。

これは、5Gでの画質劣化や遅延が少ない非圧縮映像の伝送実用化に向けた第一歩であり、専門機材やケーブルが柔軟に設置しにくい災害現場やスポーツ会場における4K/8Kの無線中継などの実現に貢献する。

NTT Comは、今回の実験成果をさらに高度化させるため5G環境における映像伝送の検証を行い、関係事業者や放送機材メーカーとも共同で実用化に向けた検証を続けるとした。

※1 IP変換装置にはembrionixのEB22HDRT-LM-0514を、SDI変換装置にはembrionixのEB22HDRT-LM-0516を使用。
※2 GMC(Grandmaster Clock)とは、PTP(Precision Time Protocol)による高精度時刻同期を行う際の、基準時刻の提供元である。時刻情報の生成については、セイコーソリューションズ株式会社の協力を得て実施した。

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