製造業向けIoTを支えるフィールドサービス業務支援企業 サービスマックス 日本代表 垣貫氏インタビュー

IoTというと、大きく生活者向けと産業向けに分けられるが、今回は産業向けIoTの話だ。

製造業を支えるフィールドサービスという分野がある。機械の設置、修理、点検をするフィールド技術者たちをソフトウェアソリューションでサポートするのが、サービスマックス社のサービスだ。

もともとフィールドサービス支援を手掛けていたサービスマックスが、産業向けIoTが進んでいることを受け、製造業が持っているセンシングされたデータなども繋いで最適化を進めている。その詳細を、サービスマックス株式会社 垣貫 己代治 代表に伺った。

製造業向けIoTを支えるフィールドサービス業務支援企業 サービスマックス 日本代表 垣貫氏インタビュー
左:IoTNEWS代表 小泉耕二/右:サービスマックス株式会社 日本代表 垣貫氏

 
-どのようなサービスを提供しているのか教えていただけますか?

フィールドサービスの業務支援クラウドサービスを提供しており、我々の本社は北米・ヨーロッパになりますが、昨年の10月に日本の事業を正式に始めました。

フィールドサービスといっても領域は広いのですが、お客様の多くは欧米の製造業です。モノを作っていらっしゃる製造業の方々が、自社の製品をお客様にデリバリー、インストール、それに対して保守サービスを提供するというところの中で、いわゆる現場で作業をする方々に対して、どれだけ必要な情報を提供するか、現場に出向いていく方々、作業員の方々を、どれだけ最適な形で要員配置をしていくか、という点を管理することができるサービスを提供しています。

それからもうひとつは、お客様の今の状況、どのお客様にどんな製品が使われていて、その中で例えばそんな障害履歴があるのかということもわかります。いわゆる保守サービスという観点でいうと、保守サービスのお客様から障害のコールを受けて、担当する作業員をアサインし、それに対してサービスを提供して実際に作業報告書などをお客様に渡して、さらに社内に対して報告するといったこの一連の流れがあると思うのですが、ここを一気通貫で提供しているというのが、大きなポイントです。

従来のそういう機能そのものは、社内に自社で開発した仕組みとして持ってらっしゃるケースがありましたが、ほとんどのケースが分断された仕組みになっており、かつまだまだ紙を利用するケースが多いと認識しています。

具体的に言いますと、例えばお客様からの障害連絡をコールセンターで受けます。コールセンターにはCTIやCRMという仕組みがあって、お客様から電話がかかってくると、お客様情報がポップアップされるというところまでは出来ています。片や補修用のシステムが別にあって、お客様と会話しながら補修用のシステムを立ち上げつつも、そのCRMでポップアップしたデータをコピーペーストしてこっちの方に転換をしているといった、そんな運用をしていらっしゃるところに対して、保守サービス・フィールドサービスで必要となる一連の機能を一気通貫で提供するソリューションとなっています。

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サービスマックス株式会社 日本代表 垣貫氏

もうひとつは、いわゆるフィールドサービスというサービスを提供していくという点、特に現場で作業を提供していく方々に対して、きちんと情報武装をしてもらおうと思っています。

紙の状況からできるだけデジタル化し、iPadやAndroidなどのタブレットを使って情報武装していただいて、お客様へ最適なサービスを提供しつつ、従業員そのものの満足度も上げていこうという考え方があります。そして、もうひとつは今日の一番の話題になるIoTという話です。

どうやってマシンと繋がり続けるか。マシンと繋がるという事はお客様とも繋がるという事です。そのお客様の情報をお客様先に出向いていく作業員に対して、正確に伝えて最適な作業をさせることができる環境を作っていかなければいけないのです。

我々の仕組みはサービスの中にありますが、その両端には片やモビリティ、片やもうひとつにはIoTという考え方があって、その三つを組み合わせてフィールドサービスという領域を最適化していこうというのが、我々のソリューションの基本的なコンセプトになっております。

 
-これまで累々と事例が積み重なっていて日本進出されたということですが、具体的な事例はありますか?

IoTの仕組みと我々のソリューションを組み合わせて使っていただいているところは、実は結構多く、一番大手のお客様はGEです。

GEというと、いわゆるIoTやインダストリー4.0の分野で先駆者中の先駆者です。そういう方々が既に自社のIoTの仕組みを使って、いろんな事業部門で我々のソリューションを使っていただいています。いわゆる予防保全・予知保全という流れから将来的なサービタイゼーションの流れに持っていくという点は、既に使い始めていただいています。

IoTの仕組みを使っていないにしても、例えばPTC社のPLM(製品ライフサイクル管理)の仕組みなどをお客様に提供していく中で、じゃあその設計製造の過程の中で、どういう考え方で、どういうデータを飛ばして、そのデータを蓄積することによって、将来的に精度の高い予防・予知保全を提供できるのかという事を、お客様に出して色々ご提案ができる環境を持たれているようなところと一緒にやらせていただく事で、少しずつ前に進んでいく世界なのかなと思っています。

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IoTNEWS代表 小泉耕二

 
-御社の中では、そういうアドバイスもされるのでしょうか。

我々はそこまではやらないですね。PTC社との関係でご理解いただけるように、我々はIoTの仕組みそのものに手を出すつもりはありません。

餅は餅屋だと思っています。ですので、IoTの仕組みを持っていらっしゃって、それをその製品の特性なり業種的な要因も含めたところで、きちんと解析分析した結果を元に我々に対して何かしらのシグナルを飛ばしていただくことが必要です。

そこから先のいわゆるフィールドで発生する作業の部分に関しては、我々が機能を提供するといったような流れが全体の流れになっていますので、ここの部分に関して我々としては勿論ノウハウは溜まってきてはいますけれども、どちらかというと、まだまだその製造メーカーがいろいろ独自に検討してらっしゃるところです。

この分野、そのIoTなり予防保守・予知保全という中で、我々がお客様と進めていこうと思っている、いわゆるその会社としてのロードマップ、製品としてのロードマップというのは、最終的にはサービタイゼーション(製造業のサービス化)のエリアです。アメリカではアウトカムベースサービスモデルとよばれるビジネスモデルです。

 
-アウトカムベースですか?

アウトカムベースは、我々が使っているサービタイゼーションと同じような意味合いです。ですから、いわゆるモノを売るのではなくて、モノからうまれる機能なり価値なりに対して対価をお客様から頂くという考え方です。

この流れにどうやってお客様と一緒に進んでいけるかという中で、色んな必要な要素があると思いますが、いわゆるモノから提供される価値、分かりやすい事例ですとソーラーパネルがあります。

ソーラーパネルが欲しくて買う人はいなくて、ソーラーパネルからうまれる電力が欲しい、電力を自宅で使うことによって、自宅の光熱費を下げるというメリットがあるから価値があります。それから、これからは外にも売って少しは家計の助けになるというところを目的にしている訳ですので、そういう考え方に基づいて、じゃあアウトカムベースのサービスモデルを作っていこうと思った時に、今まではモノを売ってそこで利益を出していました。

場合によっては、モノに対して保守サービスを提供する事によって利益を出すというような考え方だったと思うんですけれども、そのサービタイゼーションのアウトカムベースサービスモデルになっていくと、自分たちが作ったモノが動いていて初めてお客様から対価が得られる訳ですから、このモノが動かない=利益・収入の源泉が無くなってしまう訳ですよね。

そうなってくるとモノが常に動いているというのは、最低条件であって、モノが常に動いてる状態を作るためにIoTの仕組みを作って、モニタリングをしてプロアクティブに保守サービスを提供する事で、その仕組み自身が常に稼働している状態を作っていくという事は、多分サービタイゼーションである中で必須の項目になってくるんじゃないかと思っています。

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-なるほど、保守や継続的な価値をなるべくキープしようとする、いわゆるリカーリングモデルをサポートされてる形ですね。GEの事例が有名ですが、売り切りではなくて継続的にお金を貰いながら改善活動もしつつ、最終的な価値、例えばジェットエンジンなら飛行機が飛ぶだとか、タービンなら電気が発電するだとか、そういう価値を出すためにセンサーを色んなモノに埋め込んだというのがIoTの夜明けだったと思うんですね。

それらのサービスを関連会社や子会社など、様々な企業を含んだトータルサービスが、なかなか自前でやりきれないから、御社みたいな会社にお願いをして繋いでいってもらうイメージでしょうか。モノを作っている人たちだけじゃなくて、保守をしている人だったり故障を直す人、部品屋さんなど、関わるプレーヤーを繋いでいくような役割をやられていく会社なのかなというイメージを受けました。

我々は保守サービスそのものは提供しません。そこで必要になるITのインフラとしての機能を提供する、それをクラウドサービスとして提供するというところになりますけれど、おっしゃるようなサービスを提供する様々なプレーヤーが関わる「エコシステム」のプラットフォームとして位置付けられるものだと思いますね。

 
-これはクラウドサービスなので、さまざまなシステムと接続するのだと思いますが、PTC社のThingWorxやSalesforceなどにも接続できる形になっていますね。

我々の仕組み、アプリケーションそのものがSalesforceのプラットフォーム上に構築しています。よって、Salesforce上に作られた完全にクラウドを大前提とした仕組みの中で作っていますので、入口の部分としてのCRM、いわゆるカスタマーエクスペリエンスの一環の中でフィールドサービスを考えると、Salesforceを含めたCRMやSFAの連携も当然必要になります。

それから今製造業のお客様の中で課題になっているのが、モノを作るという行為と、売るという行為、それに対してサービスを提供するという行為が、システムだけじゃなくて社内的にも分断されてしまっています。ですので、そこを繋げていかなければいけないという事で、PTCのPLM、SalesforceのCRM/SFA系、ERP系との連携というのが非常に多いです。

 
-クラウドサービスで、様々なシステムと繋いでいくことができるのですね。

そうですね、「餅は餅屋」の発想ですので、本当に自分が得意でフォーカスするコアの機能を提供します。それ以外の、会計や、製造の部分や、部品関連、ここは我々の専門分野ではないので、専門分野をやっているソリューションと繋げて行きましょうという発想になってきます。

 

-これからの日本の展開というのは、どのように考えられているのでしょうか。

製造業のお客様を中心に我々のサービスを必要とする意識レベルの高い企業が多く、日本のマーケットにも非常に注目をしています。グローバルで言うとフィールドサービスは大体2兆円のビジネス規模です。その中で日本国内は少なく見積もっても多分2000億円から2500億円位のマーケットがあり、非常に大きなマーケットだと感じています。

なかなかフィールドサービスが日本に広がっていかなかったのは、勿論いいソリューションがなかったという事もありますし、今のようなサービタイゼーションのような流れがなかなかこなかった事があると思います。

ここ1年くらいでボーイング社のように「プロダクト イズ サービス」的な発想で、サービスを提供する会社に変わっていく企業が出てきていますので、非常にいい流れの中で日本のビジネスが始められたのではないかと思います。

製造業向けIoTを支えるフィールドサービス業務支援企業 サービスマックス 日本代表 垣貫氏インタビュー

 
-IoTの話の中で必ずその話になりますし、特にBtoBの世界、製造業においては、やり方を変えなければいけないと言われて久しいですけど、「実際、どう変えるんだ」という話や、「変えるって言うけど何を変える?」のという話が普通に起きています。様々な事を人手ですごくキメ細やかに行われていて、かつ値段も下げられていたので、「何かわざわざシステム入れるの?」という点などなかなかやりづらい環境だったと思います。

日本の特徴的な部分もあります。まず一つは今おっしゃられた属人的だという事。属人的なゆえに社内のいわゆるナレッジの共有ができる環境がなかなかありませんでした。

もう一つ言えるのは、高齢化や少子化の影響で経験豊富な作業員の方々がだんだん年を取っていかれて、もう現場に出て行けません。すると、実際に現場に出向くのが若い作業員の方々になるのですが、この方々にどうやってお客様に満足頂けるサービスを提供していくのかという新しい課題が出てきました。

その日本的な、属人的な閉じた世界でやっていく事が通用しなくなってきているという事に皆さんも気が付いていますので、弊社のソリューションのデモをお見せすると、「まさにこれを探してました」というお客様が非常に多いです。

 
-20年ほど前のコールセンターのアウトソーシングの流れが、割と似ているかなと思っています。CRM、CRMって叫ばれた時に、結局本質的なCRMなんか誰も見てなくて、コールセンターのシステムを入れるぞという話とCRMを入れるぞという話が一緒になって、少し誤解された時代があったと思います。今は全体的にこのCRMってものを考えなきゃいけない時代になってきていますよね。ここでようやく繋がるのかなという期待感をすごく感じます。

そうですね、我々はサービスイノベーションを起こすイネブラーになりたいと思っています。実際に「何をしていいか分からない」といったようなそんな状況の中で、我々も今日現在で既に500社のお客様がいらっしゃいます。

500社のお客様の中には、GE、コカ・コーラ、P&G、日系企業で言うとソニー、リコー、山善など、製造業の中では各分野のトップ企業に使ってもらっています。サービスを使っていただいている企業から、必要になるサービスマックスの機能というのをどんどんリクエストで上げて頂いており、年に3回、機能のアップデートをかけています。

これは我々にとっても非常に大きな財産だと思っていて、このリクエストを実際に製品に実装をします。そしてこの実装された製品の機能は、他のお客様も使う事ができるんです。常にフィールドサービスという領域の中で、最先端を走ってらっしゃるお客様から頂いた機能を実装する事で、常に最先端の機能を保持し続けることができます。ここがまさにお客様と価値を一緒に作っていく「価値共創」の考え方になります。

インフラの部分を競合他社に知られたくない云々という考え方は、こういった先進企業のお客様の中では少なくなってきていると思います。あくまでもサービスを提供するインフラの部分と、その上にどうやって自社の付加価値をつけていくのかという、企業のコアとコンテキストがクリアになってきていますので、日本のお客様も今後そうなっていくと思います。

アメリカに限らず日本もそうですけども、メーカーがいてそれに対してサービス子会社がいたり、販売代理店がサービスを提供したり、片やこっちにサードパーティーメンテナンス会社などがあります。まったく資本関係がないけれど、複数のクライアントさんから保守サービスの受託を頂いて、ほかのサービスを提供していきます。

で、我々日本で考えているところというのは、そのいわゆるサードパーティー保守もしくはBPO型ビジネスモデルに則したライセンスモデルを作っていこうと思っています。メーカーとして、いわゆる管理業務を含めて使っていかないといけない機能と、そこで管理業務の中で指示が出された保守子会社などが実際に現場で作業するための機能、それからそういった方々をクライアントとして持って、社内に社員を抱えて、サードパーティーメンテナンスを提供して、いわゆる保守サービスのTPOサービスを提供する。こういったところに対して、それぞれのライセンスを個別に作っていこうと思っています。

 
-最近のBtoBの世界では、保守をする時にウェアラブルグラスをつけておくと、対応方法などがVRで表示されるというモノがありますが、そういったものも繋がっていくのでしょうか。

そのエリアはもう技術的には可能です。ただ、日本国内の場合はもう少し待ったほうがいいかなと思っているのは、お客様サイドでのセキュリティー要件が理由です。工場内にカメラを持ち込めませんので、スマホのカメラにシールを貼らないと工場に入れないお客様もまだまだ多いです。そういう中で、お客様のデータセンターなり機器の設置場所に行って、ウェアラブルかけてそこでワイヤレスなり何なりで通信している姿っていうのは、ちょっとまだ想像が出来ません。

しかし我々の製品は、例えば物理的な環境で通信が出来ない環境でも使えるように、オフラインでの機能も持っています。そこは我々いわゆるフィールドサービスという業務を熟知していると理解していますので、そういったリアリティーのある機能があります。

製造業向けIoTを支えるフィールドサービス業務支援企業 サービスマックス 日本代表 垣貫氏インタビュー

 
-でも、何かIoTきっかけで発展していくかもしれませんね。

そうですね、日本のお客様と色々お話していて、遠隔保守という考え方がアメリカより進んでいるように感じます。すでにいわゆるIoTのインフラが出来上がっているんですね。一応データを取る仕組みあり、データも貯まっていることも多いのです。

ただしその蓄積されたデータを「どう使っていいか分かりません」とおっしゃいます。そこに対して方向性を出していきゃなきゃいけないのが、我々のようなベンダーなのかなと思っています。実務の中で、IoTでどうやって効果を出すかというところに対しては、非常に受け入れていただきやすいソリューションではないかなと感じています。

今まではマシンから出てきたデータを蓄積して、その世界の中で設計データと照らし合わせてこういう振る舞いがある、ああいう振る舞いがあるという事をやっていくんですけども、それとそこの、その設計データをもとに解析・分析した内容と、実際にお客様先で起こる障害っていうのは、多分別の種類の事が起こる可能性が多いんですね。

ですのでここだけで解析分析しているだけでは足りなくて、実際にこのマシンが吐き出したデータをもとに、お客様先の製品で実際に何が起こったのかというデータもフィードバックさせてあげないと、その精度というのは上がっていかないと思うのです。

 
-今まで基本的にそうですよね。一般の方でも分かる世界で行くと、例えば何か機械を作ったとして、その機械は実は毎日毎日使い続けると30日後に温度が高くなって壊れるという事が分かりました。でも「そんな事が分かりました」というデータが来るのは、1年後くらいにようやく、クレームの電話が来てやっと分かるということですよね。でも、御社のサービスがきちんと入っていると、なるべく早い段階でそういう事が知ることができる、と。

工場関係者は「工場の情報は外に出せる訳がない」などとおっしゃって、なかなかIoT化が進みませんでしたが、最近は経営者が「IoTやらなくていいのか?」という意識になってきていると聞きます。

今後のIoTは、マシンデータを外に出す出さないみたいなそういう次元の話ではなくて、どうやってメーカーがお客様と直接繋がっていられるかということを考えるための、必然的なインフラになってくるのだろうと思います。

 
-本日はありがとうございました。

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