建設とテクノロジーの掛け合わせConTechとは

ある産業分野とテクノロジーを組み合わせた取り組みは「○○Tech」と表現されることが多い。よく耳にするものとしては、金融(Finance)とテクノロジーをかけ合わせた「FinTech」があるが、最近では、第1次産業、第2産業にもテクノロジーをかけ合わせていくという流れがある。

そうした流れのなかで、建設(Construction)とテクノロジーをかけ合わせる「ConTech」に関する取り組みが増えつつある。

なぜ今ConTechに取り組むのか

バブル崩壊後、建設投資は減少局面に入り、ピークの1992年に84兆円だった投資は、2015年には48.5兆円となっている(2015年 国土交通省 建設投資見通し)。一方、建設就業者数はピークの1997年に685万人、2015年は500万人となっており、建設投資と比較すると減少幅が緩い。(2015年 総務省 労働力調査)。

具体的な減少幅をみてみると、ピーク時との比較において、建設投資は42%減少しているのに対し、就業者数は27%の減少にとどまっている。そのため、これまでほぼ一貫して、労働力が過剰となっており、省力化につながる建設現場の生産性向上が見送られてきた。

しかし、今後は建設工事の直接的な作業を行う技能労働者が減少するという見込みがあり、生産性向上が必要とされている。

技能労働者が不足する理由とその影響

なぜ技能労働者が減少するのだろうか。日本建設業連合会の「再生と進化にむけて―建設業の長期ビジョン―」によると、2014年度時点の技能労働者の数は343万人となっており、そのうち50歳以上の労働者が153万人(44.4%)を占めているという。しかし、2025年を迎えると、153万人のうち80万人が71歳以上、73万人が60歳~69歳になる。

そこで、同資料においては、2025年には、高齢者に期待することを避ける意図で、71歳以上は全員離職、60歳~69歳は4割程度が離職すると見込む。その結果、153万人のうち109万人が離職する計算となる。技能労働者数343万人に対して、約1/3が離職してしまうので、大量離職時代が待ち受けていると同資料では説明されている。

このような深刻な技能労働者不足に加え、建設産業では激甚化する災害に対する防災・減災対策や老朽化するインフラの維持、管理、更新といった建物の安全性を確保することが期待されており、ICT技術を活用する機運が高まっている。

建機が自動で土砂を運搬する

大成建設と諸岡は、諸岡社製クローラダンプMST-2200VDRをベースマシンとして人体検知システム、自動走行システムを搭載した自動運転クローラダンプ「T-iROBO Crawler Carrier」を開発し、実証実験を行った。なお、人体検知システム、自動走行システムは家電総合メーカーパナソニック株式会社の関連会社である、パナソニック アドバンストテクノロジー株式会社のモビリティー技術を活用している。

ショベルとクローラーダンプ
Source:大成建設

画像の左の機械がショベルで、右の機械がクローラダンプだ。搭乗員がショベルで掘削した土を排出するため、クローラダンプに積み込みを行っている。積み込まれた後、クローラダンプは指定された場所で排土し、再度積み込み場所へ戻る。この一連の運搬作業が自動で行われる。

T-iROBO Crawler Carrierには、4つの特徴がある。

  1. 走行ルートは、座標入力かトレース走行により指定できる
  2. 人工知能による画像処理技術を活用するため、人体を検知し、減速や停止が可能
  3. 人体検知と同様、障害物も検知し、自動で迂回するか停止する
  4. 5G通信にも対応する
人体検知の様子
人体検知の様子
Source:大成建設

実際の造成現場で、土砂運搬作業を行った結果、平均時速5km/hの速度で、1時間あたり7回~8回分(合計40㎥)の作業ができることが確認されたようだ。

ネジ型の応力センサで応力を遠隔監視する

SmartNeji
Source:NejiLaw

精密応力センサ化技術を軸とするNejiLaw製の緩まないネジに、G-SHOCKで培われたカシオ計算機の耐衝撃・耐振動性・低消費電力の技術を搭載したIoTネジ「SmartNeji」が開発されている。※2020年本格始動。

開発の背景にある日本が抱える社会課題は、強靭化、省人化、時短化、スマート化だという。例えば、2033年に全国の63%にあたる46万橋の道路橋が建設後50年超となっており、老朽化が進む。また、日本の人口は2060年に8,674万人と予測されている。

このような人口減少社会で効率的なインフラ維持管理を実現するために開発されているのがSmartNejiだ。SmartNejiを構造体の接合部に用いることで、強度部材としても働き、かつ、遠隔モニタリングをするデバイスとしても働く。SmartNejiは締結作業時の締結軸力や状態の一括管理を可能とするだけでなく、その後の経時状態をモニタリングすることができる。

建設物の揺れをAIによって制御する

Laboro.AIは建物の揺れ制御に関する研究開発において、機械学習の1つである強化学習を用いたカスタムAIを大林組に提供し、従来の制御システムよりも高い効果で揺れを制御する実験に成功した。

実験内容は、大林組技術研究所内に造られた橋を実験の場として利用し、実際に人が歩いた際の振動を制御するというものだった。

自動制御実験の様子
Source:大林組

橋の中央部に設置されたAMD(アクティブ・マスダンパー)は、人の歩行による揺れを感知すると、重りに上下方向の力をあたえて、橋の揺れを抑える。重りに与える力の大きさは、ブリッジの揺れ方に応じて最も揺れを抑えられるように、コンピューターが計算する。この制御力の計算に強化学習が用いられており、AIはどのように行動(制御)するのが、最も揺れを抑えられるのかを試行錯誤していく。

人が実際に歩行する前に、シミュレーション環境で約2万回に及ぶ実験が繰り返されたという。シミュレーションにおいて、1回目は、AIは何も学習していないので、揺れを抑えるどころか増幅させてしまうような動きを見せてしまったが、22,000回目には1秒ほどで揺れを抑えられるようになったという。

このシミュレーション結果を橋の制御システムに転用し、実際に人が歩いた結果、どのくらい揺れたかを従来手法と比較したところ、揺れを半減できたと報告されている。

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