NTT・早大ラグビー部など、hitoeを活用した科学的なトレーニング支援技術を開発し有効性を実証

近年ラグビーは戦術がさらに高度化、複雑化するとともに、それを遂行するために必要とされる体力的要求も増大している。早稲田大学ラグビー蹴球部のラグビー選手のストレングス&コンディショニング(以下、S&C)部門はその要求に対して、かねてより科学的トレーニング手法を導入することでチーム強化の基盤を作ることをめざしていた。

そこに株式会社ユーフォリアが様々なデータを一元的に管理できるシステムを、株式会社アシックスがウェア設計技術を、日本電信電話株式会社(以下、NTT)が機能素材「hitoe」をベースとしたウェアラブル生体センサ、先端的なデータ解析技術と、対話研究で培ったワークショップ(以下、「WS」)の知見を、それぞれ提供して、選手達の取り組みを科学的にサポートする実証実験を4者の協働で行った。

hitoeとは、東レ株式会社とNTTが開発した機能素材だ。最先端繊維素材であるナノファイバー生地に高導電性樹脂を特殊コーティングすることで、衣服や帽子など人の体に密着した形に縫製できる。家庭洗濯などの耐久性にも優れ、非金属素材であるが心拍数や心電波形などの生体信号を高感度に検出できる。

実証実験の結果、S&Cにおける選手のトレーニングにおいて選手の客観的な状態を数値化するアスリートモニタリングと、選手のトレーニングに対する主体性を引き出すアスリートセンタードコーチングというアプローチに対し、今回新たに開発したNTT技術を適用することで選手育成を支援することに成功した。

アスリートモニタリングでは大量のデータが必要とされるため、まず選手のデータを安定的に測定する必要がある。アシックスの動作分析から得られた設計技術によりコンプレッションウェアの快適性と運動追従性が向上した。そこにNTTがラグビー選手の筋肉の付き方を考慮した電極配置を見出し、「hitoe」を電極として縫製することで、ラグビー選手のトレーニングに対しても格段に信頼性の高い生体データ計測ウェアを実現した。

このウェアと計測機を介して取得された選手の生体データはユーフォリアのコンディション管理システム「ONE TAP SPORTS」で一元的に管理するが、そこにNTTの心拍数解析技術の1つを応用し、ワークロードを推定できることが実証された。

これはチーム全体のワークロードを効率的に把握しながら練習を行うことに役立てられ、その一部成果は生体医工学分野の国際会議にて発表されている。将来的には傷害・体調不良のリスクを抑えた効果的な練習プランニングなどにも貢献する。

また、アスリートセンタードコーチングでは選手のトレーニングに対する主体性を引き出すために、選手が自分自身で意思決定する過程が重要になる。そこで同取り組みでは、選手が自分自身でS&C強化のための目標を設定・遂行する過程に着目し、そこにNTTが対話研究で培ったWSの知見を活用することで、選手同士が対話をしながら自分自身で具体的な目標を設定するWSを設計・実施した。

その結果、選手の目標が具体化され、目標記述の具体度とストレングスの数値向上との関連(r=0.344,p=0.043)が確認できた。このことから、WSでの目標設定を通じて選手の行動変容が促され、ストレングスの数値向上が実現されたと考えられる。同取り組みは、選手自身が体力的基盤の増強を計画実行する過程を通じて、柔軟かつ迅速に意思決定する選手の人間的育成に役立つ可能性がある。

これらの成果は、早稲田ラグビー蹴球部で科学的トレーニングをめざすS&C強化に実際に活用された。

同実験の成果を踏まえ、NTTは引き続き選手たちの取り組みを科学的に支援する技術の研究活用を進めるとした。

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