ビジネスマンが、5Gにがっかりする前に知っておくべきこと

ついに5Gサービスが開始された。発表会レポートでも触れた通り、初めはかなり限定的な場所でしかネットワークを掴めない。せっかく端末を買っても試せない状況だ。また、体験ブースがある施設もコロナウイルスの影響で休館になっている。

3キャリア各社の5G発表レポート

東京オリンピック・パラリンピックをキッカケに、端末販売も力を入れていき、基地局も増やしていこうとしていたと思われるが、コロナウイルスの影響でオリンピック自体が延期になり、キッカケを失ってしまった。

また、中国から資材が届かないため、思うように計画が遂行しづらい状況でもあるという。

そんな中予定通り2020年春より5Gサービスが開始されることになった。発表会を見た結果、通信キャリアが打ち出すサービスのほとんどがXR、同時多視点での動画視聴、クラウドゲームといったサービスに収斂していた。これらは、以前から報じられてきていたことで、XRやゲームなどが近視感のあるサービスであるだけに「がっかりした」という声をよく聞く。

なぜ、発表された5Gサービスにがっかりする人がいるのか?

まず動画配信について、4Gの動画配信でも、スマホの画面サイズからすると現状それほど困らないということがある。高速大容量をうたうのであれば、むしろディザリングしてテレビなどの大画面で圧倒的な高画質の映像を楽しむスタイルが一般的になる必要がある。

また、撮影する機材が5Gクオリティに対応している機材を使う必要がある。利用者側も、もちろんヘッドマウントディスプレイなどのデバイスを別途購入しなければならない。しかも、高画質対応ができるものでないとあまり意味がないので、高度な通信処理と重い画像を処理する、高価なコンピュータを搭載したものである必要もある。

同時多視点はどうだろう。

大勢いるアイドルグループで誰か一人を追いかけたり、好きな視点でみることができる。スポーツ観戦などでも、これまで見れなかったような構図の映像が楽しめる。しかし、これを実現するには、ステージやグランドにかなりの数のカメラを用意する必要があり、施設にはライブ配信のための通信基地局が必要になる。

しかも、技術面をクリアしたとしても、カメラを操作する人や、映像をコントロールする人など、これまでより人件費が多くかかるのだ。

現状大半の人が4Gのスマホを持っている以上、配信は5Gの帯域を意識したものだけでなく、4Gの帯域を意識したものも準備する必要があるので、映像をコントロールするコンピュータ処理も重くなりそうだ。

最後のクラウドゲームはどうだろう。

リアルタイムに高精細な映像をダウンロードしながら、端末でゲームを楽しむ。当然、多くの人が同時参加して遊ぶことを想定しているわけなのだが、これまでもそういう遊び方は存在したので、それを知らない人が楽しむには、キラーコンテンツが必要となるだろう。

つまり、技術的、コスト的問題を乗り越えて、初めてキャリアのいう体験が実現できるのだが、それをするにも端末を持つ人が多くなければ事業者はやる気にならないので、コロナウイルスの問題は世界的にも5G進展に対して大きな影響を与えそうだ。

しかし、スマートフォンを前提とした通信を考えるからこういった課題が山積みなわけだが、スマートフォンから離れてみると明るい未来が見えてくる。

5Gで変わるオンライン会議

一方で、高速大容量通信がどこでも使えるとしたら、一番初めに使いたくなる機能は、私の場合オンライン会議だ。

昨今のコロナウイルスの影響でオンライン会議を体験したビジネスマンは、音質が悪かったり、音が飛んだり、映像が見づらい、など、とてもストレスを感じているはずだ。

相手が話し終わるまえに、会話を被せてくる人がいると、現実世界だと気にならないが、オンラインだととても気になる。

そこで、5Gの高速大容量通信をオンライン会議に使うととても心地よくなる。上りの通信速度も早くすることで、現実的になり、出張も減らせそうだ。

すでに、広角・高精細カメラが登場しているが、こういったデバイスも今後増えてくるだろう。

将来的には、IoTにより取得した様々な現実世界のデータをリアルタイムで見ながら会議を行うといったスタイルも登場する可能性は高い。

複雑な3Dデータなどを世界各地で参照しながら、実物の映像表示しつつ説明を加えたり、意見を出し合ったりするようなシーンもすでにイメージされている。

産業向け用途におきるベストエフォートの壁

産業向けというとスマート工場や遠隔医療など、法人利用を推進する傾向もあるが、無線通信には「ベストエフォートの壁」がある。

例えば、スマート工場の機械制御に5Gを使うとなった場合、高速で動く産業機械の制御を行うのに通信断は許されない。遠隔医療にしても、手術中に通信断が起きると思うと恐ろしい。

もちろん、そうならないように、手術であれば、一定の動きをまとめて遠隔地に送り届けてからロボットを動かす、といった対応は取られるはずだが、何らかの理由で手術途中に通信が切れたらどうするのか、ということに一定の理解と解決策は必要だ。

現状でも電気が必要な装置を使う場合、停電の可能性があるわけだが、備えとしては予備電源が設置されている場合が多い。つまり、遠隔医療といっても家庭で手術を受けらるというわけではなく、それなりの設備があるところである必要がある。

産業向けに5Gを使う場合、こういった、これまで考えてこなかった課題を顕在化し、実際に使えるレベルに持っていくためのPoCが必要になる。

一方キャリア側の対応も必要だ。例えば、遠隔医療のような帯域保証が必要なサービスと、1時間に1回データ通信ができれば良いといったサービスでは、通信品質に関する保証レベルが変わる。そこで、用途に応じた品質保障を行うような料金プランとサービスが必要になるはずだ。

同時多接続性でスマートライフが始まる

最後に、スマートライフについてだ。

これまでの通信キャリアのサービスでは、1契約1SIMが原則となっていた。アップルウォッチの登場で、親子SIMという考え方が登場し、1契約+数百円で二つの回線サービスを利用できるようになった。

しかし、親契約のSIMをiPhoneに刺しておかないと、子SIMは使えない(アップルウオッチ単体では通信できない)という状態だ。

5Gになって、1km2あたり、理論上100万個のSIMが接続可能となるので、街のなかの様々なデバイスをサポートすることが可能となる。一方で、1km2あたり100万契約となることはあまり考えられず、例えば、一人のヒトが、スマートフォンを持っていなくてもイヤホンや時計、パソコンなど複数のデバイスがそれぞれ通信可能な状態にしたいというニーズは既にある。

これに対応するには、現状1人1台のスマホの通信を捌ければ良かったが、今後は1人5−10台のデバイスにSIMが入ることとなるので、5G基地局の同時多接続性が活きてくる。

これに関しては、まだこれに対応した料金プランもないし、基地局自体も同時多接続対応をする必要があるので、すぐにとは言えないが近い将来あり得るだろう。

ドコモはこの時代を意識しているのか、先日の発表時に詳しくは語られなかったがが、「MY NETWORK」という考え方を打ち出している。

MY NETWORK

気温や体調に合わせて最適なドリンクを作ってくれたり、スマホ内の情報を洗面所の鏡に映してくれたり、AIによるリアルタイム翻訳が実現したり、位置情報と連携したARナビゲーションが提供されたり、と、様々な外部データと個人の持つデータがリアルタイムに連携してこれまで得られなかった体験が実現できるとしている。

こういった街のインフラの情報と一人一人の人の情報が高度にリンクすることでスマートシティも実現されていく。

「5Gにがっかりした」という論調は、通信キャリアのサービス向上とスマートフォンの機能向上に依存した、「スマホを買えばできること」だけを考えているからで、IoTを含めた、生活や作業のDXを視野に入れるととても多くの可能性があるといえる。

ビジネスマンは、生活者でもあるわけだが、こういった5Gの側面にも目を向けることが重要だ。

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