現場のデータを活用し、予測型経営を実現する ーウイングアーク1st 佐野氏

2020年7月27日、ウイングアーク1st株式会社のウェビナー「サプライチェーンから考える「データによる予測型経営」の実現解」が開催された。

本稿では、同ウェビナーでのウイングアーク1stの佐野弘氏の講演内容について紹介する。

佐野氏は、現場サイドのデータを先行指標として捉え、分析を行うことで予測型経営が実現できるのではないだろうかとした。

データ活用が進まない原因と対策

損益分岐線のグラフには歪みや濃淡がある
実際には、損益分岐線のグラフに歪みや濃淡がある。

Web上で、「日本 データ活用」というワードで検索すると、「日本企業のデータ活用は最下位」、「なぜデータ活用が進まないのか」などというネガティブな記事が多いという。しかし実際は、ものづくりの過程で様々なデータが発生しているはずだ。出荷や販売などの一連の流れの中で購買データや標準原価データが取得できるほか、経費や勤怠に関するデータなど様々なデータがある。では、なぜデータ活用ができていないのだろうか。

佐野氏は、原価低減や稼働率向上の効果を期待してデータを活用しようと思うものの、投資に踏み切れないといったことをよく耳にするという。データ活用が上手く行かない原因として、設備の稼働率が上がったとしても、収益へのインパクトが見えないということが問題だ。

財務成果を意識することで、収益のインパクトを捉えることができる。

こうした問題に対して、佐野氏は、データからお金に視点を変えてみるという。基幹システムやIoTから変動費や固定費などのデータを取得し、製造原価を下げることができれば利益が増えるので、ROAなどの経営指標を高めることができる。現場で起きていることがどのように財務成果につながるのかを意識することで収益へのインパクトを捉えることができる。

また、現場のKPIを先行指標として捉えるという視点もあるという。材料費が徐々に上昇した結果、最終的には利益が悪化し、ROAが悪化することを考えると、現場のKPIを先行指標、経営のKPIを遅行指標と捉えることで、予測型経営が実践できるだろう。

また、先行指標は細かいデータという特徴がある。佐野氏は、顧客との現場データの活用に関する打ち合わせの冒頭で、「前期はざっくり黒字でした」と言われたことがあるという。

全社トータルで見ると、営業利益が出て黒字だったが、事業部単位で見ると全て黒字なわけではないことがある。事業部別で赤字の事業部があるかもしれないし、ある事業部が黒字であっても、その中で、製品別、得意先別で指標を見ると赤字のものもあるかもしれない。ある製品が黒字であったとしても、受注単位で細かく見ると赤字の受注があるかもしれない。原価要素を考えると、歩留まりが悪かった場合、材料ロスが発生し、材料費は赤字になることもある。

データ活用の壁
細かいデータで収益計算が行われていない。

これには、データ活用の壁があると考えているという。事業部のレイヤーでは収益計算がされているが、それよりも細かいデータでは見られていない。

また、損益分岐線のグラフはこんなに綺麗なグラフなのかと違和感があるという。実際の変動費の線は歪んでいるし、固定費も、人や設備がフル稼働していればよいが、設備が止まったり、生産の効率が落ちていたりといった濃淡が起きているという場合もある。

こうした変動費の歪みや固定費の濃淡をデータから検知することで予測型経営が実現できるのではないだろうかとした。

原価データの活用

原価データ活用のポイント
管理会計の視点を持って、予算原価と実際原価の差異について比較し、要因分析をするのが重要である。

では、実際にどの様にデータを活用すればよいだろうか。まずは、原価のデータの活用に関して掘り下げて考える。

経営層の視点から見ると、現場の改善活動が経営指標にどう影響するかが不明確なことがある。原価は月末締め、翌月中旬に数字が出るというのが一般的なので、打ち手が後手になってしまうことが課題としてあげられる。

現場からすると、製造原価は操業度によって変動するため、責任の所在が曖昧という問題がある。ざっくり黒字という言葉に代表されるように、要因分析が不十分なため、効果的な改善計画が難しいことが課題としてある。

原価データの活用のポイントとしては、管理会計の視点を持って、売上高から変動費を引いた限界利益が確保できているか、さらに固定費を引いた上で利益が取れているかについて、予算原価と実際原価の差異について比較し、要因分析をするのが重要だ。

原価のデータを細かく見ると、単価と数量を掛けたものとして表すことができる。原価差異の要員が単価に起因するものなのか、数量に起因するものなのかを見極めて対策を実施する必要がある。

在庫データの活用

在庫適正化ソリューション画面
カラー診断された在庫の状況を表す棒グラフと、折れ線グラフの流動数曲線を分析することで在庫の推移を確認できる。

次は、在庫のデータの活用に関して掘り下げて考える。

経営層の視点で見ると、在庫とはお金が一時的に姿を変えたものであり、在庫の滞留はお金の滞留を意味するものである。そのため、現場には在庫削減指示を出すものの、効果が持続しないことが課題としてある。

現場では、在庫がある方が販売機会を損失することがないことや、部品の欠品は生産遅延に影響を及ぼすことがあるため、在庫はたくさんある方が良いと考える。また、経営層から在庫の削減指示が来た場合、その現場で取り扱っている品目数が少なければ対応がわかりやすいが、多い場合に、どれから着手すべきかわかりづらくなる。

こうした課題に対して、ウイングアークでは、在庫適正化ソリューションを用意している。

よくある在庫適正化として、在庫管理システムからEXCELに在庫データを取り込み分析するケースがあるが、品目数が多いと上位品目だけでみてしまったり、一律10%削減などといった根拠に乏しい対策を行ったりしてしまう。

在庫適正化ソリューションには、2つのポイントがある。
要注意品目を見つけ出すことができることと、見つけ出した要注意品目に対し、様々な角度から分析することで適切な打ち手を見つけ出すことだ。

では、要注意品目をどうやって見つけ出すかというと、滞留状況をカラー診断する方法と、流動数曲線を分析する方法の2つの方法がある。

カラー診断とは、在庫の金額を表す棒グラフ上で滞留状況・期間に合わせて色分けを行うことで、滞留状況が分かる方法のことだ。テンプレートでは、棒グラフが赤いと滞留状況が悪いことを示していて、視覚的に要注意品目を見つけ出すことができる。

流動数曲線は、横軸が日付、縦軸が数量になっていて、3本の折れ線グラフが引かれている。テンプレートでは、赤線は入庫累積数、緑が出庫累積数、この2つの差分が在庫数としてグレーの線で表されている。カラー診断された棒グラフから要注意品目を見つけ出し、流動数曲線を確認すると、在庫の推移について分析することができる。滞留状況が悪いものでも、入庫頻度が少ないだけで、徐々に出庫されているのであれば問題ないと判断することができ、在庫が徐々に増えているものは調達を注意する必要がある場合がある。

実際にこのソリューションを使用している顧客は、この流動数曲線の形の良し悪しを見ながら判断している事があるという。そのためウイングアーク1stでは、パターン判定を機能追加しようとしている。流動数曲線の推移のパターンをAI的に自動検知する機能だ。

ウイングアーク1stでは、単にソフトウェアを提供するだけではなく、分析ノウハウをテンプレートとして提供していることが強みであるとした。

佐野氏は、日本の生産労働性を高めるためのお手伝いをしたいと語った。公益財団法人日本生産性本部のレポートによると、日本の労働生産性は非常に低いとされている。労働生産性とは、1人あたりが生み出した付加価値のことであり、限界利益として捉えることができる。限界利益がどれだけ確保できているかをデータを分析し、確認しながら徐々に改善を行うことで、日本の労働生産性を高めることができるのではないかとした。

参考:このイベントの他の記事は次のリンクから見ることができます。
ウイングアーク1st株式会社のウェビナー「アフターコロナに挑む製造業。デジタルの活用で、変化に強く儲かる工場を考える2days」

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