MESを導入することでデータを収集、フィードバックさせる ーシーメンス MOM

シーメンス株式会社ポートフォリオ開発本部の境田千洋氏に、シーメンスのソフトウェア製品の1つであるMOMについてお話を伺った。

MOMとは

MOMとは、製造指示やスケジューリング、実績分析などを行うためのシステムである。
MOMとは、製造指示やスケジューリング、実績分析などを行うためのシステムである。
MOMとは、製造オペレーション管理システムのことで、MES(Manufacturing Execution System:製造実行システム)やQMS(Quality Management System:品質管理システム)の機能を含んだシステムであり、製造指示やスケジューリング、実績分析などを行うためのシステムである。

MOMを使用することで、生産を自動化し最適化することができる。しかし、自動化するためには、製品設計で使用される3DCADのデータや、そこから作成されるBOM(Bill of material:部品表)やBOP(Bill of process:工程表)のデータが正しく連携されている必要がある。エンジニアリングチェーンをデジタルで繋げることで、設計から生産までをスムーズに繋げられるという思想だ。

ただ、現実的には、作業指示が紙図面によって行われていたり、部品表がEXCELで作成されていたり、エンジニアリングチェーンがなかなかうまく繋がっていないのが現状だ。そうすると、MOMだけを導入しても通常は効果が出にくい。

しかし、そういった状況においても、シーメンスではMOMを導入することを推奨している。

シーメンスがMOMの導入を推奨する理由

シーメンスのデジタルエンタープライズというコンセプト。3つのデジタルツインの間でデータをフィードバックさせる。
シーメンスのデジタルエンタープライズというコンセプト。3つのデジタルツインの間でデータをフィードバックさせる。
シーメンスはデジタルエンタープライズというコンセプトを掲げている。このコンセプトは「3つのデジタルツイン」と「クローズドループ」に分解できるという。

3つのデジタルツインというのは、製品のデジタルツイン、製造のデジタルツイン、パフォーマンスのデジタルツインのことであり、それぞれのデジタルツインの間でデータをフィードバックさせることで、開発設計から製造や運用までの一貫したデータプロセスを作成するというコンセプトである。

MOMを導入し、生産を行うことで、製造指示を行うことができる。生産を行った結果として何らかのデータを取得することができる。エンジニアリングチェーンにシーメンス製品を使用している場合、取得したデータを設計部門や製造部門が使用しているツールにフィードバックを行うことができる。

フィードバックされた情報は、次回以降の開発や生産を行うときに使用され、より精度の高い開発や生産を行うことができるようになる。

このように、データをフィードバックさせてループさせるということを、シーメンスは「クローズドループ」と呼んでいて、この「クローズドループ」を行うことができるという点がMOMの導入を推奨している理由である。

このフィードバックされるデータは様々なシチュエーションで使用が考えられる。

グローバルでの設計と製造

グローバルでの設計と製造を行う場合、データをフィードバックさせてばらつきを防ぐ。
グローバルでの設計と製造を行う場合、データをフィードバックさせてばらつきを防ぐ。
グローバル企業では、設計部門と製造拠点が国をまたいで分かれるということが起きうる。本社で設計を行い、海外拠点で製造を行うというイメージだ。

このとき、本社で作られた図面や部品表といった設計アウトプットを製造拠点へ展開し、このアウトプットを基に各工場が製造プロセスを検討したり、実際に製造を行ったりする事が多い。

このやり方では、各製造拠点で作業が多く発生する。さらに、ある製造拠点のトラブルによって設計変更が起きたときに、その変更を本社や別拠点がキャッチアップできないという問題が発生する。

こうした問題を解決する方法の1つとして、MOMを使いデータをフィードバックさせるという方法がある。

各製造拠点での生産の結果をデータとして収集し、何か変更があったときに本社の設計部門にフィードバックを返す。そうすることで、本社と製造拠点や製造拠点同士の連携を取ることが可能になる。どこかで起きた製造起因のトラブルをフィードバックすることで、他の製造拠点では同様のトラブルを起こさないということが可能になる。

品質保証

次に、製品の品質保証の観点だ。製品を製造するときには、品質を満足させるために守るべき項目が予め決められている。こうした項目を守ることで良品ができるようになっているが、この項目が製造時に満足できているかどうかを管理する必要がある。

製造の結果をデータとして残すことで、品質評価を行う各プロセスで問題があるかないかをフィードバックすることができる。

仮に、品質問題が起きてしまったとしても、データを振り返ることで対象範囲がどこまでかをすぐに見極めることが可能になり、対応した結果を設計や生産にフィードバックさせて再発を防ぐこともできる。

医療機器製造での副次的効果

MOMを使用することで、規制対応も実現した。
MOMを使用することで、規制対応も実現した。
医療機器の製造においてMOMを使用することで、副次的効果が得られた事があるという。

どの業界でもそうだが、医療業界では特に、トレーサビリティデータが重要になる。

例えば、アメリカで医療機器を発売するためには、FDAという機関の承認を得る必要があるが、この承認を得るためには、製品の設計情報や製造条件、不具合情報などをすべてレポートとして提出する必要がある。FDAが工場の監査を実施し、必要なトレーサビリティデータが取れていない場合、出荷や通関を停止させるということもあるという。

これまでは、承認を取るために手書きやエクセルでレポートを作成していた。医療機器を販売するためには必要不可欠な作業であるが、製造業において付加価値を産まない作業である。

FDAも、重要なのは、正しいことを示すレポートがきれいであることではなく、正しいプロセスで製品が作られ、それが第三者からも観測可能な形で証明できることだと言っているという。

MOMを使いデータを収集することで、製造条件や不具合情報をまとめることができる。MOMを使用する効果として、生産の自動化や製品品質を向上させるということ以外にも、レポート作成にかかっていた時間を削減し、製品に付加価値を付与する時間を増やすことが可能だ。

すべてのソリューションを一括導入する中国の新興企業

IoTNEWS代表の小泉の私感として、レガシーにこだわらない中国企業が、MOMを始めとするエンジニアリングチェーンを繋げるすべてのソリューションを一括で導入したら、管理面で日本企業は全く叶わなくなってしまうのではないかと考えているという。

モノづくりの本質は、製品の設計や製造にあるべきで、データの管理や組織の横串によるムダといったプロセス間の齟齬はなるべく無くす必要がある。

データをつなぎ、エンジニアリングチェーンをシームレスに回していくということが重要であり、今後モノづくりの本質に集中していく上で必須になっていくのではないかと考える。

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