川口スプリングとビジネスエンジニアリング、「共創ビジネス」によって「mcframe SIGNAL CHAIN」を組み込んだ自動塗装設備ラインを提供開始

株式会社川口スプリング製作所(以下、川口スプリング)とビジネスエンジニアリング株式会社は、2021年5月25日に共同プレスブリーフィングを開催した。

両社は、新たなビジネスモデルである「共創ビジネス」としての取り組みを開始した。これは、ビジネスエンジニアリングの新たなビジネスモデルであり、今後のビジネスの柱として考えているものだ。

両社は「共創ビジネス」の最初の取り組みとして、川口スプリングが設計及び制作を行う塗装設備に、ビジネスエンジニアリングが提供している「mcframe SIGNAL CHAIN」を組み込んだ塗装自動設備ライン「Kawaguchi Spring Manufacturing Internet of Coating System(以下、KS-MICS)」を販売開始する。

共創ビジネスの狙い

共創ビジネスにより、顧客のビジネスモデルの構築を支援し、新たな価値を生み出す狙いがある。
共創ビジネスにより、顧客のビジネスモデルの構築を支援し、新たな価値を生み出す狙いがある。

ビジネスエンジニアリングは、20年以上製造業企業のシステム構築を行ってきた企業だ。中でもERPと呼ばれる生産管理や在庫管理、販売管理といった業務システムの効率化を進めている。最近では、業務効率化のためのデジタル化だけではなく、他社との差別化のためのデジタル化、IoTやAIに関する機能強化を進めてきたという。

これまでのERPやIoT、AIの導入によるデジタル化というものは、ビジネスエンジニアリングが開発した製品を、製造業企業に納入するというビジネスモデルであった。これは、各業務を個別最適化するという段階から始まり、その個別最適された業務同士をつないでバリューチェーンとして価値を出すというビジネスモデルである。

しかし、ビジネスエンジニアリングがこれからのビジネスの柱としていこうとしているのは、システムを一方的に納入するのではなく、ビジネスエンジニアリングの製品を組み込んだ製品を顧客とともに開発し、更にその先の顧客へ販売するというビジネスモデルだという。

このビジネスモデルを、ビジネスエンジニアリングは「共創ビジネス」と呼んでいる。ビジネスエンジニアリング自体のビジネスモデルを変えることであり、顧客のビジネスモデルを変えて価値を生み出すということでもあるとした。

ビジネスエンジニアリング 取締役社長である羽田雅一氏は、共創ビジネスについて、「顧客の中に入り込み、ビジネスモデル構築を顧客とともに進めていきたい」と述べた。

川口スプリング製作所が提供する自動塗装設備ライン「KS-MICS」

「KS-MICS」は、自動塗装設備の管理データテンプレートを持っているため、塗装対象に合わせてデータ項目を選択し収集することができる。
「KS-MICS」は、自動塗装設備の管理データテンプレートを持っているため、塗装対象に合わせてデータ項目を選択し収集することができる。

川口スプリングは、スプリングの生産や、自動車内装やスマホの筐体、高級化粧品のボトルなどを塗装するための自動塗装設備を、設計開発から納入までワンストップで行っている製造業企だ。売上の65%が自動塗装設備によるものである。

前述のような製品を生産している多くの企業は、表面を塗装する工程を、塗装を専門に行う企業に外注して対応している。そのため、川口スプリングの自動塗装設備を購入し利用している企業は、製品開発企業の要求に応じて多品種生産に対応する必要がある。

また、塗装工程は設備を購入したらすぐ生産を開始できるわけではなく、化学物質を吐出することで生じる様々な環境への課題に対応する必要がある。塗装によって、光化学大気汚染の主要な原因である揮発性有機化合物(VOC)が発生してしまうこともあるため、正しい対策をしなければならない。

しかし、下請けで塗装を行う企業は中小企業であることが多く、多品種生産に対応するための生産状況の可視化や、環境対策に対応するための生産現場の監視などといった対応を自社で行うことは難しい。

そこで開発されたのが、「KS-MICS」である。川口スプリング 代表取締役社長である鬼塚博幸氏は、VOCなどの環境問題にも対応しながら、日本の設備メーカーが海外市場でも競争力を持つことができるようにIoTを活用していきたいとしている。

従来の塗装自動設備ラインでは、部分的にしか可視化ができておらず、作業者による手作業によってデータを収集するということが多かった。川口スプリングは、塗装自動設備の全体を設計製造しているという強みを活かし、設備全体の可視化及び最適化を行うという目的で「KS-MICS」を開発したという。

「KS-MICS」によって設備から収集できるデータは約500種類あり、納入先の状況に合わせてデータを選択することが可能であるという。すでに納入したものは、約50種類のデータを集約し監視と分析を行っているとした。

「KS-MICS」の特徴

「KS-MICS」の大きな特徴として下記の3点がある。

  • 塗装ライン全体の稼働状況の監視と分析
  • 塗装ライン各設備の状態監視と分析、アラート発報
  • 設備PLCの設定情報の蓄積とオフラインでの設定変更

塗装ライン全体の稼働状況の監視と分析を行うことで、設備稼働率の向上や施設全体の安全性の監視、設備の予防保全の効果が期待できる。

川口スプリングの顧客には、海外工場を持つ企業も多い。「KS-MICS」を導入することで、生産不具合に対して、日本から遠隔で稼働状況の監視や分析を行い、対応策を発信することが可能になる。新型コロナウイルス感染症の影響で海外への渡航が難しい現状の中、日本から遠隔で支援ができることは必要になるだろう。この全体の監視というものは、現場の作業者というより、生産技術者や管理者が確認をすることが想定されている。

各設備のモニタリングを行うことで、製品品質や歩留まりの向上が期待される。塗装品質において、温湿度や風速、塗料の流量などが重要になる。こうした項目を毎分毎秒モニタリングしたり、しきい値を設定し異常が出た際にはアラートを発報したりすることで、不良を防いだり不良が発生した際に過去のデータから不良の分析を行ったりすることができる。

塗装設備は、各設備で塗装する製品が変わると塗装条件を変更する必要がある。元々の塗装設備では、塗装条件を各設備のパネルでしか確認することができず、工場間の横展開ができていない状況だった。「KS-MICS」では、各設備の塗装条件をPLCから収集して、横並びに比較を行うことができる。塗装条件がうまく出せない場合に、条件がうまく出ている設備の設定を反映させることも可能だ。

「KS-MICS」に組み込まれている「mcframe SIGNAL CHAIN」

「KS-MICS」には、データを収集し蓄積し可視化するという「mcframe SIGNAL CHAIN」の機能が組み込まれている。
「KS-MICS」には、データを収集し蓄積し可視化するという「mcframe SIGNAL CHAIN」の機能が組み込まれている。

ビジネスエンジニアリングでは、この「KS-MICS」の実現のために、「mcframe SIGNAL CHAIN」の「稼働モニタリング」と「IoTプラットフォーム」という機能を塗装設備に組み込んでいる。

「KS-MICS」は、川口スプリングのノウハウとビジネスエンジニアリングのソリューションが組み合わされて開発されたという。設備からデータを収集し可視化するという取り組みは、必要なデータがどこに格納されているのかを探したり、集めてきたデータの形式などを揃えて可視化ができるように整理をしたりといった手間をかける必要があり、人手と資産が必要な取り組みである。川口スプリングのノウハウがあることで、データの収集などに手間取ることなく可視化を行うことができるようになっているという。

今回、「KS-MICS」に「mcframe SIGNAL CHAIN」を組み込むにあたり、「mcframe SIGNAL CHAIN」のカスタマイズは行っていない。「mcframe SIGNAL CHAIN」の基本機能やオプションの機能は「KS-MICS」でも利用することができる。これは、「mcframe SIGNAL CHAIN」がまだ開発を続けて成長していく製品であり、今後の製品の成長は「KS-MICS」の成長につながるものであるからだという。逆に、川口スプリングが設備開発をすすめる上でのノウハウも「mcframe SIGNAL CHAIN」にフィードバックしていくという。

「共創ビジネス」の共創という言葉は、ビジネスの機会を共有するということだけではなく、テクノロジーの分野でも、ともに成長していくという意味が込められているという。

今後の展開

川口スプリングは、今後の展開について、納入先企業向けのサービスを計画しているとした。設備から収集されたデータをもとに、遠隔からの品質歩留向上支援サービスを提供したり、遠隔保守による予兆探知と事前対応による安定稼働実現サービスを帝京したりすることを考えているという。データに基づく最適化によって、稼働率や生産効率の向上だけでなく、環境負荷低減にも寄与していきたいとした。

ビジネスエンジニアリングは、「共創ビジネス」を川口スプリング以外の他社とも連携して進めている過程であるとした。自社だけではデータを活用して新たなビジネスを生み出すことができない企業が多く、そうした企業と共創を検討し、新たな価値を生み出していきたいとした。