世界初の低遅延が実現される通信、「IOWN1.0」2023年3月スタート

NTT R&DフォーラムのプレスカンファレンスにNTT代表取締役社長の島田明氏が登壇し、IOWN1.0となる「IOWNサービス」の2023年3月開始を発表した。まずは、NTT東西のネットワークで活用されることとなる。

現在でも100Gbpsの専用線サービスは提供されているが、IOWNになることで「光電融合技術」を活用した超低遅延サービスが提供されることとなる。

IOWNに馴染みのない方のために簡単におさらいをすると、IOWNはNTTが進める新しい通信サービスで、「光電融合技術」と呼ばれる技術を使うことで実現されるものだ。

この技術は、データ利用が増大し、電力消費が増大している昨今、電力消費量を抑えることができる。

現在、IOWNは、1.0-4.0まで構想されていて、今回発表されたAPN(All Photonics Network)のレイヤーだけでなく、コンピュータボード、チップ内にも光電融合技術を活用するレイヤー、それらのコンピュータ技術をサーバに搭載することも構想されていて、これらが2030年に実用化されるIOWN4.0では、大容量、低遅延、低消費電力の通信が実現されることとなるのだ。

IOWNの展開計画
IOWN1.0は2022-3年度、2.0は2025年度、3.0は2029年度、4.0は2030年度以降という展開計画も明らかになっている

上の図を見てもわかるように、IOWN1.0で大きく変わるのは「低遅延性」だ。島田氏によると、従来の1/200の低遅延を商用サービスとして開始するというのは世界でも初めてということだ。以降IOWN4.0まで低遅延性は変わらない。

では、IOWN2.0以降で何が変わるのかというと、「電力効率」と「大容量化」だ。

電力効率に関しては、実はIOWNとしては本丸とも言える。

これは、冒頭でも書いた通り、今後の大容量通信には、電力消費が大きな問題となること、同時に進んでいる持続可能性の観点からも、消費電力の低減は国際的な課題であることからわかる。

そして、この低消費電力を実現するのが、IOWNの主要な技術とも言える、「光電融合技術」なのだ。

低消費電力を実現する光電融合技術

現在のネットワークは、コンピュータからネットワークにデータが送られ、送信先のコンピュータで受け取ることで成り立っている。

通信部分が光をつかった高速通信が実現されていても、コンピュータ内部は電気で動いている。

「光」と比べて遅く、かつ高消費電力な「電気」を使っている限り、超高速、超低遅延、超低消費電力を実現することは難しい。

そこで、NTTはオールフォトニクスと呼ばれる、全体的に光を使った通信を実現しようとしているのだ。

光電融合を実現するエンジン
現在はこの写真のような大きなエンジンが必要だが、将来的にはコンピュータのモジュールに入り込むようなサイズとなる研究も進めているということだ。

また、光電融合技術をデバイス上に実現していく取り組みに関してもマイルストーンが示された。

これによると2030年にはチップ内も光を採用するとなっていて、ここまでくると、通信部分だけでなくコンピュータのあり方も大きく変化してきそうだ。

光電融合デバイスのロードマップ

IOWNサービスのユースケース

遠隔手術


5G通信の際も、遠隔医療の話題が昇ったが、無線通信の場合、接続が途絶える可能性もあり、筆者は有線での高速・低遅延通信が必須であると考えいていた。

IOWNは有線接続であり、専用線を前提としているので、拠点間のネットワークは保証されるため、遠隔手術に関する期待は高まる。

映像は、R&Dフォーラムで展示されているもので、医療メーカー「メディカロイド」(神戸市)の手術支援ロボット「hinotori(ヒノトリ)」で実際に遠隔手術を行うデモだ。

現在、国の認可が降りていないため、今後の実用化が待たれる。

スマートファクトリー

現在、化学プラント内での高所エリアや、防爆エリアの遠隔操作など、人は入れないが低遅延通信が必要なシーンで試験が行われている。

eスポーツ

遅延が勝敗を分けるeスポーツの世界では、安定した高速通信が必要となる。IOWNを使うことで、低遅延になるだけでなく、遅延を調整することができるということで、プレーヤー間の環境依存をなくすような公平なプレーを実現することができるということだ。

データセンター

データセンター間をIOWNで接続することで、離れた場所でも同一のデータセンターのように利用することが可能となる。

複数のデジタルツインを連携し新たなサービスを実現

このほかにも、アーバンエット名古屋ネクスタビルでの、IOWNの実証実験が紹介された。

ここでは、快適空調制御、フードロス削減、ロボット配送、食事レコメンドの4つのデジタルツインが実現され、これらを相互に連携するという取り組みだ。

具体的にいうと、ランチ時にレストランに人が殺到すると、混雑し、空調も効かなくなる。そこで、ランチ時になると、フードロス削減サービスがフードロスを意識しながらレコメンドを行う。そして、人の混雑状態を見て、快適空調制御サービスを動かしたり、ロボット配送と連携し、レストランに来なくてもランチを楽しむことができる、そんな世界を実現しようとしているのだ。

こういった、複数のサービスが連携し、利用者の快適さを実現していくということが重要になるのだ。

最後に島田氏は、「世界初となる遅延が1/200になるということを踏まえ、『こういうところで使えないか?』というリクエストが来ることを期待している」と述べた。

無料メルマガ会員に登録しませんか?

膨大な記事を効率よくチェック!

IoTNEWSは、毎日10-20本の新着ニュースを公開しております。 また、デジタル社会に必要な視点を養う、DIGITIDEという特集コンテンツも毎日投稿しております。

そこで、週一回配信される、無料のメールマガジン会員になっていただくと、記事一覧やオリジナルコンテンツの情報が取得可能となります。

  • DXに関する最新ニュース
  • 曜日代わりのデジタル社会の潮流を知る『DIGITIDE』
  • 実践を重要視する方に聞く、インタビュー記事
  • 業務改革に必要なDX手法などDXノウハウ

など、多岐にわたるテーマが配信されております。

また、無料メルマガ会員になると、会員限定のコンテンツも読むことができます。

無料メールから、気になるテーマの記事だけをピックアップして読んでいただけます。 ぜひ、無料のメールマガジンを購読して、貴社の取り組みに役立ててください。

無料メルマガ会員登録