情報通信研究機構(NICT)、機械学習の導入によって通信・電力インフラに影響を与える太陽フレアの発生予測精度を5割から8割に向上。

 国立研究開発法人情報通信研究機構(以下、NICT)は、電磁波研究所及び先進的音声翻訳研究開発推進センターにおいて、機械学習とビッグデータを用いた予測モデル開発により、宇宙天気予報の精度を格段に上げることに成功した。

 NICTでは宇宙天気予報を毎日配信しており、予報精度の向上が長年の課題だった。今回、複数の機械学習の手法を太陽観測データ解析に応用することで、大量の情報処理による統計的な太陽フレアの予測を可能にした。その結果、従来の人の手による5割程度の手法に比べると、8割まで予測精度を上げることに成功した。

また、太陽フレア発生前に現れる特徴を、統合的に機械学習によるデータ分析から明らかにした。そのことにより、太陽フレアの謎を解く鍵が得られたとともに、従来の一日一回の予報からリアルタイム予報への道が拓け、宇宙天気の影響による災害に対して、より早期の対策準備ができるように実用化を進めていく予定だ。
 
この成果は、米国の専門誌「Astrophysical Journal」に、1月25日(水)(日本時間1月26日(木))に掲載された。なお、本研究の一部は、JSPS科研費(JP15K17620)の助成により実施されたものである。

背景

NICTでは毎日、宇宙天気予報を行い、広く一般に情報配信をしている。宇宙天気の源となる太陽面爆発フレアは、黒点周辺に蓄えられた磁場の歪みエネルギーが基になって発生し、大量の放射線や有害な粒子が地球に降り注ぐ。

宇宙天気による通信障害や航空機運用及び電力網への影響といった様々な社会現象に対して、より早期に対策を取るため、太陽フレアの予測が求められており、近年、太陽衛星観測による監視体制が整ってきているが、膨大な量の観測データの処理の困難さなどのため、従来の宇宙天気予報の予報精度は長い間上がらず、新しいアプローチによる精度向上が喫緊の課題となっていた。

今回の成果

今回、電磁波研究所の宇宙天気予報研究チームは、先進的音声翻訳研究開発推進センター(ASTREC)の機械学習専門グループと連携し、複数の機械学習の手法を太陽観測データに適用することで、人では処理しきれない大量の情報による統計的な予測を行う新しい技術を開発した。学習データ作成には、NASAのSDO衛星観測による高分解能データ30万枚というビッグデータを用い、約60個の黒点の特徴に注目した。特徴の検討には、長年にわたる宇宙天気予報の経験を反映した。

その結果、従来5割弱程度だった太陽フレアの予測精度から、8割を超える精度を達成した。また、機械学習を用いた分析により、どの特徴が、どの程度予測に有効かを統合的に示し、新たに選んだ黒点の特徴が従来考慮されてこなかった太陽フレアの前兆を示すことを初めて明らかにした。

今後の展望

現在、国際民間航空機関(ICAO)では2020年頃を目標に、海洋上・極域航路での通信、宇宙放射線被ばく、更にGPSを利用した測位などに影響を与える宇宙天気の情報を、通常業務で利用しようという計画が進められている。

このような状況において、本太陽フレアの予測モデルが、リアルタイムで、より精度の高い予測情報として活用されるよう、今後、検証しながら実用化を進めていく予定だ。

【関連リンク】
情報通信研究機構(NICT)

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