物流網は末端に自律分散される流れへ ―八子知礼 x 小泉耕二【第2回】

この企画は、IoTNEWS代表の小泉耕二と、株式会社ウフル専務執行役員で、IoTNEWSの運営母体である株式会社アールジーンの社外取締役でもある八子知礼が、様々なテーマについて、公開ディスカッションを行う連載企画だ。

第2回では、「IoT/AI時代の物流」をテーマとする。深刻なドライバー不足とEコマース市場の拡大で、物流業界はいまだかつてないほど厳しい状況に立たされている。そんななか、アマゾンのように自社物流網を持ち、IoT/AIをフル活用して最適化を実践する企業もある。

近未来の物流はどうなっていくのか。二人は、物流の専門家ではないのだが、物流を俯瞰した視点からの分析や考え方を語った。

IoTは物流網を最適化する

八子: いろんな企業が自社独自の物流網を持ちはじめている。楽天が自社物流を整備するというニュースもあったが、アマゾンを意識しているのではないかと思います。

そこで、アマゾンも、当日配送サービスを続けるべく独自の自社物流網をつくり、配送はサードパーティロジスティクス(3PL)企業に委託せざるを得ない状況にあるといえるのではないかと思います。

サードパーティーロジスティクス(3PL)とは、運送業務を請け負うだけでなく、荷主と物流業者とは異なる第3者として、荷主に効率的な物流システムを設計・提案する業態のこと。

小泉: (ネットスーパー以前)小売業が物流を持つというイメージがあまりなくて、通販企業が一部持っているのかもしれないです、COOPくらいしか持っていないと感じてました。

小売業が自前で物流網を持つという意味はどういうところにありますか?

八子: 自社の商品がタイムリーにどこにあるのか、ということがコントロールしやすいのがポイントだと思います。

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小泉: 今すぐに届けるという、対応タイミングの問題や、冷蔵・冷凍といった品質管理も自分できちんとできるところがいいのかもしれないですね。

八子: 細分化すると管理しずらいことが増えるので、自社物流の方が管理しやすいのではないかと思います。

小泉: 一方で、それなりの量がないと物流なんて持てないと思います。そんな中で物流網を持つということが企業にとっての負担にならないのでしょうか?

八子: なると思います。データ化するというところに関してはECが進んでいて、できるだけリアルタイムでやり取りしなければならない部分があるのですが、それをデータでやり取りしやすくなった環境にあるといえるのではないでしょうか。

小泉: 購買データもデータだし、どこの倉庫になにがあるかもデータになっているし、クルマの位置などもデータになっている。そういう意味では、注文から届くまでのすべてのプロセスで可視化が可能となっているのですね。

八子: そうですね。ストックポイントや中間物流が別のシステムで動いていた。これがコンセプトとしてのサプライチェーンではなく、データとしても結合し始めているということではないでしょうか。

小泉: サプライチェーンというと、20年くらい前からあって、デルモデル(Build to Order)などが有名で革命的ともいわれていましてが、最近のサプライチェーンというのはそのころと比べて進歩しているとみてもよいものでしょうか。

八子:考え方は同じだ思います。当時は物理的な拠点をインターネットでつないでいくことで、機能的に分化していたものがつなぎ始めたことが全体で管理できるようになっていたといえると思います。

今だと、モノの位置や、別々のシステムであったデータがつながったり、生鮮や医薬品などでモノの状態をリアルタイムで管理することができるようになってきた。それで、データシステム、業務プロセス、ヒト、モノの状態がつながってきているということが現状なのではないでしょうか。

小泉: 商品発注側は、なるべくいい状態で、早く届けたいと思っているということですね。

八子: 一品一品(小さな物量)を今日届けてほしい。というニーズが消費者側に出てきていますよね。

小泉: 理想を言うと、家の目の前に物流センターがあって、そこに取りに行けばよいというのが近代的な物流といえるのでしょうか。


(対談模様の動画のパスワードはログインすると見ることができます。22分36秒の動画です。)

メッシュネットワーク化するIoT/AI時代の物流 ―八子知礼×小泉耕二【放談企画 第2回】[Premium]
株式会社アールジーン社外取締役/株式会社ウフル 専務執行役員IoTイノベーションセンター所長兼エグゼクティブコンサルタント 八子知礼

動画のパスワードは、「yQpVxNdG」です。

八子: コンビニがストックのフロントヤードになるというイメージです。ゆくゆくは無人化が進むという意味では、「物流倉庫」になっていくということですよね。

小泉: なるほど。コンビニエンスストアではなく、物流倉庫に取りに行っているイメージですね。サプライチェーンの話はもはや物流の話だけではなく、お店も取り込むのですね。
オムニチャネルが浸透していくと、ECで買うのか、無人店舗に取りに行くのか、というイメージになりますね。

八子: 消費者が欲しそうなものを「予測発注」して取り置いておくというということもありえるという話があります。 

小泉: 例えば、シャンプーがなくなりかけているのを認識して、シャンプーを事前に予測発注して取り置いておくようなイメージですね。

八子
: かつて言われたサプライチェーンは、ストックヤードを集めていって、物流をメッシュ状に組んでいく、統廃合をしていくイメージでした。一方で、今の物流は、末端に近い方に分散化させていくモデルになっているのではないかと思います。クラウドと同じく、自律分散型モデルになりつつあるようにも見えます。

小泉: なるほど。物流センターというのはある程度の規模がないとダメというイメージがありましたが、今後も物流センターはあるとして、家に近いところに配送センターがあって、近隣の消費者の必要なものを自律的に把握していてい、親センターに発注するというようなイメージになっていきそうですね。

そこまで来ると、ラストワンマイルはロボットが運ぶというのもイメージできますね。


八子
: CES2018でトヨタが発表した、e-Paletteなどで、半分がストックヤードになっているようなコンビニをイメージする感じですね。それが地域をくるくる巡回していくようなデリバリーモデルになる可能性もあります。

近くに来たというアラートを鳴らして取りに行くというモデルになる可能性もありますね。

小泉: ヤマトなどの配送業が認可制から許可制になったことで、地元の酒屋さんが小さいコンビニになったりしたのですけど、それが一周回ってまた運送屋さんに戻るということなのかもしれません。

八子: 特に日本の場合、人口が減ってきて、ある程度まとまった物流をまとめていた人が集約するコストが持たず、それが分散していくということを予測、もしくは想定しておいた方が良いのかもしれません。

小泉: 物流というのは、モノがA地点からB地点に運ばれるものとみると、とても小さな話になりますが、実際はとても複雑である一方、すべてのポイントでデータがあがることで、複雑なことが複雑でもないようなことができるようになるという流れなのですね。

期待される、サードパーティーロジスティクス(3PL)の活躍

メッシュネットワーク化するIoT/AI時代の物流 ―八子知礼×小泉耕二【放談企画 第2回】[Premium]
株式会社アールジーン代表取締役/IoTNEWS代表 小泉耕二

小泉: 3PLというと物流をコントロールする会社ができてきて、物流をコントロールするようなコンセプトでした。実際は、ヤマトシステムなどの大手は目立っているのですが、現状3PL業者はどういう状況なのでしょうか。
3PLというととてもIoTを体現しているイメージです。

八子: トラックや、船、飛行機というのが別々に管理されていたのが、業態としてはまとまってくる、輸送手段としてもまたがったプレーヤーが出てくる、混載を前提としたものになっているというのが3PLの前提でしたが、現在はヤマトや日本郵政などが高度なオペレーションができるようになってきているのだと思います。

小泉: 物流が進化しているからこそ、リバイスされた3PLが出てくるというイメージでしょうか。

八子: パレットの載せ替えなどを、人力でおこなっていたところを、センサーやシステムで制御するようになってきたことで、高度なことができるようになってきたというのがポイントではないでしょうか。

小泉: 前より扱えるデータ量も増えてきているから、より細分化された輸送網をコントロールし、より細分化された発注をコントロールし、より細分化された倉庫管理をコントロールする、という流れになってきているのですね。

例えば、東京は空室が多いというのですが、それを活用した物流センターが出てきている。これまでは単位面積が狭いと担当者を付けておくことが無駄になります。しかし、自動化が進むと、ヒトがいる必要がないので、雑居ビルの空き部屋くらいの広さでも無人なのでコストはかからない。それを集合体として管理すると豊洲の大きな物流センターと変わらない。

利用者からすると、空きビルの方が近かったりして、輸送も含めたトータルコストを考えると、安くつくかもしれないじゃないですか。

この考え方を実行しようとすると、3PLのような考え方で散らばっている拠点の散らばっている在庫をコントロールして、どこの在庫をどこに持っていくべきかという指示をする。

そうすると、消費者に近い、コンビニのようなところに配送すればよいということになるのです。

八子: おっしゃるように、コンビニが都会におけるものが集まってくる場所になるという発想と同じで、現時点でもコンビニもバックヤードに持っている共同集配センターを持っているわけです。菱食などが運営している、共同集配センターは、ローソンやセブンイレブン、ファミリーマートなどが共同で運用しているのですが、これは大手の物流サービス企業が運営しているのです。

ECがどんどん発達してくると、それぞれのECサービスに対して物流をまとめて管理するような流れになり、かつての3PLが進化しているのではないかと思います。

小泉: 本なんかもAmazonでよく在庫切れになっていますが、ダイレクトに出版社の倉庫とつながっていれば、在庫切れはもっと減る可能性がありますよね。

八子: それは、どこまでシステムで連携できるのかという問題を、どこまで解決するか、ということだと思います。

別々の管理しているモノを、具体的に運ぶということに対する限界があるかもしれません。

小泉: 古くて新しい物流というか、データが連携することによって大きく様変わりしているなと感じました。

本日はありがとうございました。

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