島根県益田市のLPWAを活用したスマートシティの取り組み

島根県益田市は、現在人口、47,697名で、毎年600名が減少しているという典型的な過疎化がすすむ地域だ。高齢化率35.3%で限界戸数も16.7%とそれに拍車がかかっている。

そこで、益田市と地元企業が中心になって、「若者が溢れる街にしたい、プラチナシティ益田」という標語のもと、人口の拡大を図りたいと考えている一方で、歴史や観光資源、空港などがあるにもかかわらず、過疎化が進んでいるという。

そこで、益田市に本拠地を置く、シマネ益田電子の平谷氏は、歴史や観光資源、空港などを活用して「もっと地元でいろいろできることがあるのではないか」と考えたのだという。

シマネ益田電子 取締役服車掌 平谷 太 氏
シマネ益田電子 取締役副社長 平谷 太 氏

 
シマネ益田電子は、通信モジュールに強い企業で、半導体の組み立て事業をおこなっている。先般、米国のスマートホームメーカーnestから直接契約を取るなど、世界を舞台に活躍している企業だ。

シマネ益田電子株式会社
シマネ益田電子株式会社

平谷氏は、「高周波技術とセンサー組み立て技術を生かして、益田市特有の問題解決をテーマとして、テストベットをする。スマートシティに関わらず、ロボティクスやドローン、セキュリティ、自動運転など、様々な研究開発やマーケティングも今後おこなっていきたい」のだという。

市と一緒になった取り組みができたり、全戸に導入されている光通信を含めたインフラが使えること、通信実験やセンサー組み立てが自前で行うことができるといった強みがある一方で、ハードもソフトも先端技術も人的ネットワークもないという弱みを県外企業を含めたアライアンス、「IoT益田同盟」で補完したいと考えているのだという。

IoT益田同盟のコンセプト

活動としては、これまでも、市職員向けのIoTセミナーを実施したり、益田川での推移監視実験をおこなったり、LPWA通信実験を行ったりしているのだという。

益田川での水位監視実験

水路氾濫予知システムの概要
水路氾濫予知システムの概要
益田市を流れる用水路
益田市を流れる用水路(水色の矢印部分)とセンサー設置位置(番号の振られているところ)

益田川は街の地下を流れる生活用水路を持つ。その用水路は河川の排水路ともなっていて、台風やゲリラ豪雨の時には溢れることがあるのだという。

しかも、ここが溢れると場所によっては家が水につかるという被害もあるということで、これまでは氾濫の可能性があるときは、不眠不休で水位を確認しにいき、必要に応じて水門を開けたり閉めたりしていたのだという。

益田市役所の皆さん
益田市役所の皆さん

しかし、この水門、大水になったときに開けることが本当に正しい対応なのか、ということについては実施に開けてみないとわからないことから簡単にあければよいということはならないのだという。例えばある水門を開けた結果、その先の水路が氾濫するかもしれないからだ。

そこで水位をセンサーでセンシングし、数箇所ある水門を必要に応じて開けるということが自動で実現できればよいのだが、ハード面を取り替えるというわけにもにかないため、まずは水位のセンシングから開始して問題がありそうな時には市職員に通知するという仕組みを実現したのだという。

水位センサーは、用水路に取り付け、センサーが検知した水位をLoRaWANをつかって市内に設置された観測センターに飛ばすのだ。

なにもこの仕組みは、河川の氾濫だけに使うわけではなく、河川の水位が常時取得できているということから、気候との関係性を紐解けば、将来的には次の都市計画の参考にもなるし、農業用水にこの用水路を使っている農家がいるのだが、その農家が水門を閉め忘れているケースなども早めに検知することができるということだ。

実証実験で明らかになった課題

実際に運用をしてみると簡単にはいかないことが浮き彫りになったのだという。

市職員によると、「センサーで取得した情報でアラートが飛んでくるので、気持ちが楽になった一方で、最近のゲリラ豪雨の場合1時間くらいで氾濫してしまうことがある。一方、センサーは10分おきに通信するので、1回通信ミスが起きると気付いた時には取り返しがつかない場合すら考えられる」というのだ。

水位監視システムのスマートフォン画面
水位監視システムのスマートフォン画面

LoRaWANを使うメリットは、低消費電力であることだが、そこを担保するためには通信間隔を広くするしかない。

一方、LoRaWANは非認可通信なので、だれでも設置できる一方で通信ができること自体は保証されない(自力で保証しなければならない)のだ。

また、通信を保証するために見通しは欠かせないが、管理センターまで距離がある場合、中継機を置くなどの工夫が必要となる。

中継機を立てるといっても、他人の敷地に立てて、電源も借りることになるので、もちろん勝手にやるというわけにはいかないのだ。

中継機と赤丸が監視センター
中継機と赤丸が監視センター

現状、水位測定の誤差も20cm程度あるということで、センサーの改善も必要だという。

しかし、こういった課題を浮き彫りにするのが実証実験の役割なので、益田同盟をプロデュースする豊崎氏をはじめとした、益田市の協力者はとても前向きに改善を進めていくのだという。

一方で、LoRaWANを選択したことで、センサーは単三電池3本で動き2年は取り替えの必要がないという。さらに設置コストや通信コストはかなり少なくて済む。現在6箇所にセンサーが設置されているが、設置に掛かった時間は1日にも満たないのだという。

益田市長の取り組み対する想い

益田市長
左から、シネマ益田電子 平谷 太 氏、益田市 山本 浩章 市長、アーキテクトグランドデザイン、IoT益田同盟のプロデューサー 豊崎 禎久 氏

この益田市の取り組みはシマネ益田電子の平谷氏が、益田市長に冒頭の話を持ちかけて始まったのだが、その頃を振り返り、山本市長は「はじめはIoTがどう役に立つのかわからなかった」と振り返る。

しかし、市の業務の困りごとを棚卸ししていく中で、技術で解決できることが見えてきそして、今回の益田同盟という県外企業とのアライアンスによって県外の企業がやってくることや、萩石見空港の利用にも期待をかけている。

「はじめはわかりづらかった専門用語も市職員向けに研修を続ける中で徐々に理解が深まり、技術を利用することで街の安全や安心を勝ち取ることができるようになってきているのが重要なのだ」「これまで行政に掛かっていたコストも、技術によって肩代わりされることで他の課題を解決することに振り分けることができるのだ」と山本市長はいう。

益田市は市町村合併によって山間部も市の範囲に入っており、積雪時には交通遮断が起きることもあるのだという。こういったことも「今後IoTを活用して事前に察知し、対応をしていきたい」とし、最後に、「こういった技術は益田市が独占するのではなく、想いを共有できる自治体とは積極的に組んでいきたい」と述べた。

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