CES2025レポートの第四弾は、スマートホームだ。
CES、そしてCTAのロゴが変わり、節目の2025年にCESの中心的な存在であるサムスン、LGともにキーノートへの登壇はなかったが、プレスカンファレンスの内容は示し合わせたかのようにシンクロしたもので、両者ともにスマートホームのあるべき状態を可視化してきた。
LGは愛情あふれる気遣いができるAIを提供

LGのプレスカンファレンスは「Less artificial. More Human(より人工的でなく、より人間的に)」で幕を開けた。
そして最初から最後までAffectionate Intelligenceをテーマにプレゼンテーションが展開された。
Affectionateは直訳すると“愛情深い”となるが、「便利」ではなく「愛情あふれる気遣い」を感じる進化した暮らしの実現を目指していることがわかる。
まずLGは独自のLLMであるFURONが、デバイス間連携プラットフォームであるThinQのコアとなっている。
これまでのThinQは、基本的にLG製品が対象となっていて拡がりに課題があったのだが、昨年オランダのAthomを買収し、170以上のブランドのIoTデバイスとの接続を可能となった。

サムスンが2014年にスマート・シングスを買収したが、これと同じ動きだ。
さらに、AI領域においてマイクロソフトとの協業も発表し、LGが目指す「AIによるより人間的な暮らしの提供」を加速させていく模様だ。
ところで、プレスカンファレンスではいくつかの具体的なシーンが紹介されていた。
例えば、2025年後半に発売予定のスマートホームAIエージェントと位置付けられている対話型ロボット「Q9」が生活者と家電の間に入り、天候の予測と共に洗濯機にある衣類についての対応提案をする様子や、家族が寝ている時に咳をしていたから温度調節をして、その後は咳が治まったというようなやりとりがあった。
また車に乗車すると、心拍などをセンシングしてストレスの状態を察し、リラックスできる音楽を選択したり、会議に遅れそうになるとその場でビデオ会議を提案していた。

「AI for ALL」をうたう、サムスン

一方、Samsungは「AI for ALL」がここ数年のコンセプトだが、これからはAIの「Everyday, Everywhere」を実現していくという。
サムスンのAIは自社独自のBixbyで、Galaxy AIとの統合が昨年発表されたが、アンドロイド世界トップシェアでもあるGalaxyやウェアラブルとの連携は大きな強みである。スマートフォンから撤退したLGが遡及しにくい、“Everywhere(どこでも)”がサムスンの特徴の1つになりそうだ。
サムスンのAIスマートホームにはスマートシングス・アンビエント・センシングという機能があり、家庭内の接続されたデバイスを通じて、人の動きや周囲の音までも分析することができるのだという。
誰が毎日どのようなライフスタイルを送っていて、どんなルーチンが最適なのか、ということはもちろん、いつもと何がどう違うのか、ということを家庭内にある、複数のデバイスで把握でき、適切なデバイスでフィードバックが可能となる。
さらに、Galaxy WatachやGalaxy Ringなどのウェアラブルも活用したヘルスケアソリューション「サムスンヘルス」で、健康促進だけでなく心身の異変をいち早く察知し、休息や診察の提案など、AIが適切な対応を促すことも行っていく。
またサムスンは常に「Knox」というセキュリティソリューションもセットで遡及をしている。
個人データをブロックチェーンを用いて高いセキュリティで保護しつつ、いつでもどこでも必要に応じてスムーズに活用できる環境を構築しているという。
ちなみにLGも「LG Shield」というセキュリティソリューションを提供している。
加えて、コンセプトモデルだったAIエージェントロボット「Ballie」をついに2025年の前半に発売開始するという発表もあった。

2020年に初代Ballieが発表され、昨年のCES2024で2台目Ballieがお披露目され、遂に、という印象だ。
既にアマゾンからは、アストロが発売されていて、LGもQ9を今年後半に発売予定、2026年以降は家庭用AIエージェントロボットの市場が盛り上がりそうだ。
スマートホームはAIの普及と連携がベースとなり、利便性・快適性が増していく流れが基本となりそうだ。
以前の単純にネットにつながるだけのスマートホームではなく、インテリジェンスな住まいが現実となると、家事や自宅での過ごし方が大きく変化していくだろう。
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未来事業創研 Founder
立教大学理学部数学科にて確率論・統計学及びインターネットの研究に取り組み、1997年NTT移動通信網(現NTTドコモ)入社。非音声通信の普及を目的としたアプリケーション及び商品開発後、モバイルビジネスコンサルティングに従事。
2009年株式会社電通に中途入社。携帯電話業界の動向を探る独自調査を定期的に実施し、業界並びに生活者インサイト開発業務に従事。クライアントの戦略プランニング策定をはじめ、新ビジネス開発、コンサルティング業務等に携わる。著書に「スマホマーケティング」(日本経済新聞出版社)がある。