【概要】
■特性が異なるWi-Fi接続、インターネット回線、クラウドサーバをSDNで一括制御
■高遅延・低速から低遅延・高速まで多様なIoTサービス向けネットワークをカスタムメイド
■屋内移動型ロボットのインターネット経由での遠隔操縦など、製造・物流での用途に期待
NICT、国立大学法人東京大学大学院情報学環、株式会社KDDI研究所は、株式会社日立製作所及び米国ユタ大学の協力を得て、NICTが開発した仮想化Wi-Fiを含めた複数の仮想網で構成される有無線マルチドメイン仮想網の国際実証実験に世界で初めて成功した。
同成果により、要件が多岐にわたる個々のIoTサービス向けに、異なる事業者からWi-Fi接続、インターネット回線、クラウドサーバ等を必要な容量で調達し、規模や通信量に見合ったカスタムメイドな専用ネットワークをインターネット上に構築することが可能になる。Wi-Fiエリア内を移動するロボットを、クラウドからインターネット経由でストレスなく操縦するといった用途に利用でき、特に製造業や物流分野での応用が期待される。
背景
Wi-Fi通信機能を内蔵するスマートグラスや移動型ロボット等の無線IoTデバイスと、遠隔のクラウドサーバとの常時通信を基本とするサービスの需要が、製造業や物流分野で急速に高まっている。最近では海外拠点のクラウドが利用される事例も増え、国際・国内回線やWi-Fi等の複数のネットワークを経由した利用が一般的だ。しかし、ネットワークごとに特性や運用ポリシーが異なるため、全体として一貫した通信品質を確保することが困難だった。
東京大学大学院情報学環、KDDI研究所らの研究グループは、NICTの委託研究「新世代ネットワークを支えるネットワーク仮想化基盤技術の研究開発」の一環として、複数の有線仮想網を共通の品質やポリシーで相互接続する技術等を共同開発した。しかし、無線仮想網の相互接続までは実現できていなかった。
一方、NICTは、ユーザ密集等によりWi-Fiが混雑する環境において、SDN技術に基づき、特定アプリケーションの通信品質を優先的に確保できる仮想化Wi-Fi基地局の開発を進めてきた。
今回の成果
同研究グループは、クラウドを含む有線仮想網とWi-Fi仮想網を相互接続する技術を新たに開発し、Wi-Fi-インターネット-クラウド間をつなぐ有無線マルチドメイン仮想網を日米間で構築する実証実験に成功した。
今回の成果は、通信方式が異なる複数の無線仮想網との相互接続にも応用可能で、新しい無線技術が次々と実用化されるIoT時代のSDN相互運用の高度化に向けて、大きな一歩を踏み出したと言える。
今回の実験では、東京大学、KDDI研究所が中心となって開発した「スライスエクスチェンジポイント(以下、SEP)」に、NICTが日立の協力を得て開発したWi-Fi仮想網接続機能を追加することで、SDNによる3つの仮想網の一括制御を実現した。国内からの海外クラウド利用を想定し、国内Wi-Fi仮想網と、ユタ大学の仮想化基盤ProtoGENI上に構築されたクラウドを、JGN-X上で運用される仮想化ノードによる有線仮想網が中継する構成。
今後の展望
同成果により、海外拠点のクラウドを利用したスマートグラス向けサービスや、屋内移動型ロボットの安全な遠隔自動操縦等、製造・物流を中心に、Wi-Fiとクラウドを利用したIoTサービスへの幅広い応用が期待される。
なお、同成果は、3月8日(火)~9日(水)に米国で開催される「24th GENI Engineering Conference(GEC-24)」で展示される。
【関連リンク】
・情報通信研究機構(NICT)
・東京大学大学院 情報学環・学際情報学府(III・GSII)
・KDDI研究所(KDDI R&D Laboratories)
・日立(HITACHI)
・ユタ大学(The University of Utah)
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