経産省、DXレポート作成の背景と政策展開について講演 ―eSOL Technology Forum 2019レポート①

DX推進ガイドライン・DX推進指標の狙い

講演の終盤では、企業がDX実現していくためのシナリオと、経産省が策定した「DX推進ガイドライン」と「DX推進指標」の狙いについて説明があった。

DX実現のためのシナリオ

先述した「2025年の崖」に落ちないために、企業は具体的にどのように動けばいいのか。そのための要綱を経産省では「DX実現シナリオ」としてまとめていると、和泉氏は語った。

経産省、DXレポート作成の背景と政策展開について講演 ―eSOL Technology Forum 2019レポート①
どの時期に何をするべきか、の流れをまとめた「DX実現シナリオ」

和泉氏は「DX実現シナリオ」の流れについては「2020年まではデジタル変革前の準備期間ということで、各企業にはこの期間で計画を組んでもらう。そして2021年から2025年の間をシステム刷新集中期間としてデジタル変革を行いながら、「みんなで渡れば怖くない」の気持ちで2025年の壁を飛び越えてもらいたい」と述べる。

DX推進ガイドライン

「DX実現シナリオ」を説明した後、経産省・和泉氏は2018年8月に策定された「DX推進ガイドライン」について紹介した。

「DX推進ガイドライン」とは経産省が18年12月に策定した、DXの実現やその基盤となるITシステムの構築を行っていく上で経営者が押さえるべき事項を明確にし、取締役会や株主がDXの取り組みをチェックする上で活用することを目的としたガイドラインだという。

和泉氏は「各企業にヒアリングを行うと、IT部門が経営トップに対して「何もわかっていない」と感じているのに対して、経営トップはIT部門に対して「経営の足を引っ張っている」と考えているなど、主観が対立している例が見られた」とし、DXを巡って経営幹部と事業部門の認識が一致していないという課題があることを指摘する。

そこで「新ビジネス創出のためのビジョンを取ってください、仕組みや体制にコミットメントしてください、システムのところに関しては体制をしっかり組んで、組織は分担をしっかりしてください、単純にシステム刷新だけではなくビジネスが上手くいくかどうかで評価してください」といった項目を経営者側に示し、DXのための環境を整えるために「DX推進ガイドライン」を策定したと、和泉氏は言う。

具体的なガイドラインの項目だが、経営の在り方については、

・経営トップのコミットメント
・DX推進のための体制整備
・投資等の意思決定のあり方
・投資等の意思決定のあり方
・DXにより実現すべきもの:スピーディーな変化への対応力

という項目が設けられており、DXに向けた経営体制のチェックができるようになっている。

また、実際にDXを行う上でのITシステムの構築については、

・全社的なITシステムの構築のための体制
・全社的なITシステムの構築に向けたガバナンス
・事業部門のオーナーシップと要件定義能力
・IT資産の分析・評価
・IT資産の仕分けとプランニング
・刷新後のITシステム:変化への追従力

という押さえるべき事項として挙げられていた。

DX推進指標

最後に経産省・和泉氏は2019年7月に策定された「DX推進指標」についての説明を行った。

DXを巡って経営部門と事業部門で認識の不一致が起こっていることは先述したが、そうした課題の是正を社内の人間が経営陣に対して直接提言するのは難しい。そこで日本企業が直面している問題を指標項目としてまとめ、自社の現状や課題、とるべきアクションについての認識を共有し、気づきの機会を提供するためのツールとして、「DX推進指標」は策定されたという。

経産省、DXレポート作成の背景と政策展開について講演 ―eSOL Technology Forum 2019レポート①

和泉氏は「経営トップの問題についてガイドラインだけで対応するのは今いち弱い。指標化し、各社が自己判断できるようにして、取締役会の実効性評価などと連携しながら、気づきのための環境整備を行う」と述べた。

投影されたスライド資料では、定性指標について以下の6段階でDX推進の成熟度を評価するという。

レベル0:未着手(経営者が無関心)
レベル1:一部での散発的実施(部門単位での試行・実施)
レベル2:一部での戦略的実施(全社戦略に基づく一部部門での実施)
レベル3:全社戦略に基づく部門横断的推進
レベル4:全社戦略に基づく持続的実施
レベル5:グローバル市場におけるデジタル企業

「DX推進指標」については、自己診断を行った企業から結果をもらい、ベンチマークを作成する予定だという。結果を集めることでデータ比較ができるだけでなく、「DXに関心のある企業はこれだけありますよ、と示すことができる」と、経営層の意識改革に与える効果が高まることを和泉氏は語った。