東京大学、リコーとブルーイノベーション、非GPS環境下でも安定した自動飛行が可能な小型無人航空機(ドローン)システムを共同開発

【概要】
■IMUセンサー(注1)と超広角ステレオカメラ(注2)の融合による小型無人航空機(ドローン)の室内自動飛行試験に成功。
■IMUセンサーと超広角ステレオカメラの融合により、非GPS(全地球測位システム)環境下でも安定した自動飛行が可能な小型無人航空機システムを共同開発した。
■GPSの受信が不安定または受信ができない環境下でもドローンによる精密点検や警備等が可能になり、危険作業や目視が難しい場所での作業に大きく貢献することが期待される。

 

東京大学 大学院工学系研究科 航空宇宙工学専攻 鈴木・土屋研究室の鈴木真二教授および土屋武司教授らの研究グループは、事務機器・光学機器メーカーの株式会社リコーと、ドローン・イン テグレーターであるブルーイノベーション株式会社と共同で、超広角ステレオカメラとIMUセンサーを搭載した小型無人航空機(ドローン)が非GPS(全地球測位システム)環境下でも安定して自動飛行することを可能にする小型無人航空機システムを共同開発し、室内での飛行試験 に成功した。

これにより、施設内・倉庫内の警備や危険作業を伴う橋の下やトンネルの中の点検などのGPSの受信が不安定または受信ができない環境下で もドローンによる精密点検や警備等が可能になり、危険作業や目視が難しい場所での作業に大きく貢献することが期待される。

同研究成果として共同開発した システムによるデモ飛行を、2016年3月24日~26日幕張メッセで開催されるジャパン・ドローン2016にて予定。

 

研究の背景・問題点

無人航空機は、安定した姿勢制御、自動飛行という機能を活かして、構造物点検、警備・監視、測量、物流など、さまざまな業種のサービスに幅広く活用され始めている。

この無人航空機が自動飛行するためには、GPSを利用する必要がある。しかし、橋の下やトンネルの中の点検のような施設内・倉庫内の警備などGPSの受信が不安定、または受信ができない環境下では、突然バランスを崩したり、自動飛行ができなくなり墜落したりしてしまうというリスクがあり、手動操縦に頼らざるを得ない。加えて、GPSは誤差が数mと大きいことから、仮にGPSが受信できる環境にあったとしても、自動飛行による精密な点検等はできない。

 

研究の内容

今回共同開発されたシステムは、ブルーイノベーションと東京大学が開発した安定した姿勢制御が可能な小型無人航空機システムに、リコーが開発した超広角ステレオカメラを搭載されたものだ。

IMUセンサー(加速度センサー、ジャイロセンサーを含む慣性計測装置)から得られる無人航空機の位置・速度・姿勢情報を、GPSから得られる位置・速度情報によって補正する技術*1を応用して、超広角ステレオカメラからの出力と、IMUセンサーの出力を融合させ、GPSに頼らない無人航空機の室内での安定した自動飛行に成功。

リコーは産業用ステレオカメラ*2などの3Dビジョンセンサーを商品化しており、今回はその技術を同システムへ応用した。

 

*1 特許第4726134号「移動体制御装置及び移動体制御方法」, 土屋武司, 成岡優, 平成23年4月22日

*2 3Dビジョンセンサー 産業用ステレオカメラ(RICOH SV-M-S1)

 

社会的意義・今後の予定

近年、無人航空機の有効利用は極めて重要であり、さまざまな取り組みが行われている。

このシステムの開発は、無人航空機を有効利用する上で、学術的、工学的にも極めて重要であると考えられる。今後は、更なる性能・信頼性向上のために現場での実証試験を行うことが必須だ。危険を伴う高所での点検や橋の下やトンネルの中の点検などの作業をするにあたり、同研究で開発された非GPS環境下で安定した飛行を行う無人航空機による高所・危険作業現場での精密点検が可能になることにより、安全作業をする上で無人航空機の社会的有効利用に拍車がかかることが期待される。

 

注1:IMUセンサー:加速度計、ジャイロなどにより移動体の3次元空間での移動を計測するセンサー装置。

注2:超広角ステレオカメラ:超広角なレンズを複数使用して広範なステレオ画像処理を行うカメラ。

 

【関連リンク】
東京大学航空宇宙工学専攻(Department of Aeronautics and Astronautics.University of Tokyo)
リコー(Ricoh)
ブルーイノベーション(BLUE INNOVATION)
ジャパン・ドローン2016
RICOH SV-M-S1

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