鹿島建設株式会社は、測量機器とソフトウェアを提供する(株)ニコン・トリンブル、三次元計測等を手掛けるルーチェサーチ(株)と共同で、大分川ダム建設工事においてドローンによるレーザ測量を行い、高密度・高精度な測量結果を確認した。
開発の背景
従来は、光波測量器やGNSS測量器による測量が一般的だったが、近年では、高精度に測量が可能で三次元図面を出力できる3Dレーザ測量が普及してきた。また簡易に扱えるドローンを用いた写真測量も増え、これまで同社でもその精度を高め、大型造成工事等に適用してきたという。
大分川ダム建設工事においても、ダム堤体盛立・原石山工事の土量管理等にドローン写真測量を行っている。しかし、この方法では、高低差のある複雑な地形や、樹木伐採前の湛水予定池内の地形において、精度の高い測量データを得ることが難しく、課題となっていた。
そこでこれらを解決するため、ドローンによるレーザ測量に着目し、鹿島とニコン・トリンブル、ルーチェサーチで開発を進め、試験フライトを終えて大分川ダム堤体で計測を実施し、高密度・高精度のデータを得ることに成功した。
ドローンによるレーザ測量の特長
ドローンによる写真測量を行う際には、予め基準点(ターゲット)を地表面に複数設置する必要があるが、同測量では、地表面に向けてレーザを照射することで得られる距離と、機体に内臓されたGNSSとジャイロセンサーにより機体の位置情報を得られるため、基準点設置の必要がない。
また、レーザ照射は樹木の隙間を通り地表面まで到達するため、伐採・除根前に地山を計測することが可能。
測量した結果は点群データで出力されることから高低差が取れ、複雑な地形でも精度の高いデータが得られる。この点群データは、三次元CADやGIS(地理情報システム)に用いることが可能で、CIMへの展開も容易だという。
さらに、同機体は事前にPC上にて設定したルートに従い自律飛行が可能で、最大30kgまで搭載でき、風速10m/秒の状況においても安定飛行することができる。今回は、わずか13分の飛行時間で20haの広さを測量し、データ処理に要した時間は約6時間、高精度と言われる地上レーザ測量の結果と比較して、90%の測量点が±4.5cm以下の精度で測量することができた。
従来のセスナ機等による航空レーザ測量と比較して安価で、かつ現場内での離着陸が可能なため、現場の必要に応じて、都度測量できる。
ドローン写真測量との比較
近年、急速に普及してきたドローン写真測量と比較した場合、以下のような優位点がある。
・樹木に限らず、ある程度の隙間がある障害物があった場合でも、地山の測量が可能。
・写真測量に用いるカメラレンズの画角より、レーザ照射角の方が広いため、一経路での測量幅が広くなり、全体の測量時間が短くなる。
・空中に存在する対象物(電線等)の正確な位置(座標値)を図面上に反映できるため、施工計画立案時に支障物として考慮することができる。
・写真測量では困難な薄暮時でも測量可能。
今後の展開
同現場においては、さらにドローンレーザ測量の精度を高めて、出来形管理等にも適用していく。
鹿島は今後、ドローンによるレーザ測量と写真測量の両手法を適宜使い分けることにより、工期・コスト面で最適化を図る。
また、急斜面のような人が立ち入ることが困難な場所の事前測量や、短時間で高精度のデータ取得が求められる土木工事等により安価に適用できるよう、開発を進めていく方針としている。
【関連リンク】
・鹿島(KAJIMA)
・ニコン・トリンブル(NIKON-TRIMBLE)
・ルーチェサーチ(Luce Search)
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