AIoT のパワーを解き放て―― AIとIoTを統合したAIoTを今すぐ導入すべき理由とは?

デンソーが提案する移動の再定義、「未来の移動はもっと楽しくあるべき」 ―デンソー山下氏・ワントゥーテン松重氏インタビュー

「共創」も新たなチャレンジの一つ

小泉: 松重さんは、今回のプロジェクトでは主にどういうところが大変でしたか?

松重: 一つは、VRとクルマの制御システムの間の調整です。VR映像の中で動く幅と体で感じる重力が違うなど、システム間でこまかく調整しなければならないことがたくさんありました。そのため、私も愛知県にあるデンソーさんの本社に何度も伺いました。まさに、共同作業です。

VRコンテンツの開発においても、今回はかなり高度な技術に挑戦しています。今回のVRは4層構造になっています。いちばん外側は、外のドライブ風景を実際に撮影した映像です。その一つ内側にクルマの3Dモデルを入れ、次のフロントガラスの部分にUIやARの映像データを貼りつけています。そして、いちばん内側にはこれも実際に撮影したヒトの360°映像データを入れています。

そもそも空間の作り方が違う映像を複数組み合わせているので、おそろしく歪みます。それをこまかくチューニングして、空間として成立させるのは骨の折れる作業でした。

デンソーが提案する移動の再定義、「未来の移動はもっと楽しくあるべき」 ―デンソー山下氏・ワントゥーテン松重氏インタビュー
左はVR体験を俯瞰したイメージ画像。このVRコンテンツは、外のドライブ風景、クルマ、UI(操作に使うモニター画面)、ヒトの4層に分けてつくりこみがされている。右はその4層をそれぞれ色分けした図だ。(外のドライブ風景:紫色、クルマ:緑色、UI:赤色、ヒト:オレンジ色)

小泉: デンソーさんとワントゥーテンさんは、事業内容も企業風土も随分と異なる会社だと思います。山下さんは今回、ワントゥ―テンさんとタッグを組まれて、気づいたことや学んだことは何かありましたか?

山下: 私は2年前にデンソーに入社し、今はコックピット開発部で量産車両向けの提案としてグラフィックやエクスペリエンスのデザインを担当しています。

エクスペリエンスデザインそのものは、まだ未成熟な領域だと思っています。しかし、それ故に技術開発の部門の中で理解を得るのは容易ではありません。そしてその中で、私の思考がブレてしまうときが幾度かあったんです。

そんな時、松重さんから、「山下さんが大事にしていたのはそんなことじゃないですよね」、「言っていることが前と全然違いますよ」と言っていただけたのはすごくありがたかったですし、刺激をもらいましたね。背筋が伸びる、と言いますか。

小泉: ワントゥ―テンさんらしいですね。

山下: ワントゥーテンさんはすごくフラットなんですよ。それがすごくよかった。

これからの時代、デンソーは今以上にオープンになっていかないといけないと思うんです。世の中はもっとフラットな環境で問いの創造に挑戦しているのに、なぜ僕たちは正解だけを追おうとするのか。そういう危機感もあるのです。そうした思いを社内で共有できたことが、今回のプロジェクトにつながっています。

あと、ワントゥ―テンさんと今回仕事をしてよかったと思うのは、ほぼすべての制作現場に呼んでくれたことです。

映像の監督さんがいるディスカッションの場にも呼んでくれました。オーディションにも、音声収録にも立ち会っています。実際にロケをして、撮影した映像をその場で簡易的にVRにしてみて、「あーでもないこーでもない」と、激しく議論したことはとても刺激的な経験でした。また、そうして築けた信頼関係でもあると思います。

松重: 弊社としても、今回のプロジェクトは初めから「共創」ととらえていました。デンソーさんから受け取った想いを、私たちの技術やアイディアだけでカタチにしていこうとしても、ただの「受発注」の関係で終わってしまいます。

ですから、両社が想いを共有し、アジャイル型で一緒にがんがん回していくのが正解だろうと思い、そのような形でプロジェクトを進めていきました。

デンソーが提案する移動の再定義、「未来の移動はもっと楽しくあるべき」 ―デンソー山下氏・ワントゥーテン松重氏インタビュー
「未来の移動体験」のVR開発を笑顔で振り返る、デンソーの山下晋吾氏(右)とワントゥーテンの松重宏和氏(左)

小泉: 今後は、デンソーさんが持つ個々の技術を高めていって、VRで提案した未来のコンセプトに近づけていくのでしょうか。

山下: はい。複数の技術がからみあって実現できることですから、どの部分の技術を進化させれば理想に近づいていくのか、見えにくいところがあります。ただ、これはある意味、技術者への問いでもあると思います。

そこに、技術者にとっての「?」があってほしいと私は思います。「これができたらおもしろくないだろうか?」とどんどん提案してほしいのです。今回のコックピットも、デンソー社内やお客様に体験してもらったのですが、多くの共感と関心を頂きました。嬉しかったですね。

小泉: あとは、今回のコンセプトをより多くの人に届けることも重要ですね。誰に届けたいですか?

山下: デンソーはサプライヤーなので、車両メーカー様と答えるのが普通なのかもしれません。でも、クルマを実際に買うヒト、乗る人、シートに座ってハンドルを握る人が、未来のクルマに対する期待感をつくらないと、クルマは「道具」になりさがってしまいます。

ですから、あくまでもエンドユーザーの方に届けたいです。「このクルマなら自動運転はありだな」と思ってもらいたい。「数年後に自分のクルマが自動運転になったら、子供をどこに連れていってあげようかな」とか、「その時には子供がもう自立しているから、妻とあらためてどこに行きたいかな」とか、そういうふうに僕らのメッセージを「自分ゴト化」していただいて、それぞれの「移動のものがたり」をつくってもらいたいと思います。

小泉: 本日はありがとうございました。

【関連リンク】
「移動を、ものがたりに。」(デンソー公式ページ)

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