顧客はテクノロジーより価値をくれという ーシュナイダーエレクトリック デジタルサミットレポート1

シンガポールで開催された、仏シュナイダーエレクトリックのデジタルイノベーションサミット2018に参加した。キーノートスピーチにおいて、CEOのジャン=パスカル・トリコワ氏は、冒頭「現在のデジタルというと、デジタルを学んだ世代だが、現在の10代の子供達はすでにテクノロジーに依存していて、電気やWifiなどの技術はなければならないというだろう。」。「デジタルは未来ではなく現在で、インターネットの第一章は50億の人と人をつなげることだったが、第二章はIoTである」と述べた。

昨今、人の数より多い「モノ」がつながることで生まれる巨大なデータを機械学習し、未来を予測することができるようになってきている。今後、様々な設備などから発生するデータを活用して人はその恩恵にあづかることができるのだ。

シュナイダーエレクトリックは、パワー、ビル、IT、マシーン、プラント、グリッドの6つの分野で、すでに自社製品からのデータを取得し、エッジ側でコントロールを行うことが実現できている企業だが、IoTの流れからこういったデータをインターネットに吸い上げ、機械学習などの技術を活用することで、未来を予測し、様々な事業活動に対してアドバイスを行うサービスを実現している。

このサービスが、「エコストラクチャ」だ。

このイベントが開催された、マリーナベイサンズでもシュナイダーエレクトリックのビル管理システムが使われていて、エネルギー削減を実現している。

シュナイダーエレクトリック CEOのジャン=パスカル・トリコワ

エコストラクチャは、どの分野の事業に関しても、3層の構造からなることを前提としたアーキテクチャだ。

1層目がデバイスの層、2層目がエッジコントロール、3層目がクラウドだ。

エコストラクチャで実現された様々な事例

インドネシア病院INDRIATIでの、ビル管理のシステムにおいて、稼働時間100%を目指し実現できた事例や、韓国のHoongaという企業において、ARを活用したメンテナンスによって20%削減を実現し、設備稼働率も10%向上を実現した事例が紹介された。

他にもオーストラリアの鉱山で、50Mtの採掘量増を実現し、オーダーから出荷までの期間を1/3にした事例。リモートコントロールで何千キロも離れた炭鉱をモニタリングすることができるようになった事例も紹介された。他にも、タイのSUPERNAPというデータセンターでは、リアルタイムで稼働状況が把握できるだけでなく、100%の電源確保を実現できたということだ。

インドのNaya Raipur(ナヤ・ライプル)のスアートシティにおいても、100,000箇所以上の接続を実現しているのだという。この事例では他の企業のサービスもエコストラクチャに接続することができる事例となっているのだ。

エネルギーの未来

シュナイダーエレクトリック CEOのジャン=パスカル・トリコワ

CO2削減のこともあり、電気の消費の問題は社会問題となっている。再生エネルギーが安くなり、送電、配電、消費の近いところで今後は発電し、供給することになるのだ。その一方で、ITが加速する中、電力消費は増えている。

太陽光発電は化石燃料での発電コストを下回るのか、電気自動車も普及しだしているし、この20年以内にエンジン駆動を製造しないという企業も登場しだしているのだ。

こういったエネルギー環境を背景に、今後はデジタイズしてコネクトする。そして、クラウドで中央集中するということで、これまでできなかったこともできるようになるのだという。

シュナイダーエレクトリックのエコストラクチャ

エコストラクチャは、冒頭で述べたように、3階層からなる。IoTとしては一般的な構造だと言えるだろう。これまで製造し世界中に広がってきた、1階層のデバイスレイヤーの製品群があることが前提になっているため、いわゆるクラウド上のIoTプラットフォーム「だけ」を作る企業より具体的だ。

データを可視化するだけでなく、分析し、クラウド上にデータを集めることで高度な解析を可能とし、未来を予測したアドバイスを行うというのだ。

20のオイル・ガス企業、9の鉱山、11のトップ飲料メーカー、120カ国の水道、100万棟のビル、10のユーティリティ企業、3のトップクラウドプロバイダーのデータセンター、8のパッケージマシンビルダー企業ですでに使われているのだという。

シュナイダーエレクトリック CEOのジャン=パスカル・トリコワ

多くのソフトウエア企業を買収し、様々な業界の、プラン、ビルド、オペレーション、メンテナンスの各フェーズに使える様々なサービスを組み込むことで、業務プロセス全体をサポートするソリューションとなっている。

特にオペレーションのプロセスにかかるコストは、甚大だ。そこをデジタル化することで、コスト削減が実現でき、アクシデントに備え、予知保全ができるようになるのだ。

エネルギー効率や、生産性向上、安全性や信頼性、サステナビリティといった様々な効果が期待できるということだ。

ジャン=パスカル・トリコワ氏は、最後に「世界がどんどんデジタル化されている中、企業はこれからどうしていくか考えなければならない。イノベーションを実現することが成功のためには必要なことだ。」と述べた。

シュナイダーエレクトリック CEOのジャン=パスカル・トリコワ
シュナイダーエレクトリック CEO ジャン=パスカル・トリコワ氏

※具体的な取り組みやエコストラクチャの画面などは、次回紹介する。

参考:
シュナイダーエレクトリック

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