「Team Cross FA」が進めるスマートファクトリーの構築と実例 —「Smart Factoryセミナー2019」レポート2

【実例2】西部技研~スマートファクトリーを新設、グランドデザインから詳細設計まで

続いて、株式会社西部技研 第一工場 工場長マネージャーの松尾幸司氏(まつおこうじ、トップ写真・右)が登壇し、Team Cross FAと進める新工場建設プロジェクトについて紹介した。

西部技研は福岡県古賀市に本社を構えるものづくり企業だ(社員数:約320名)。ハニカムローターを用いた空調設備や、食品工場や製薬工場向けの除湿器、オフィスビル、工場、学校向けの全熱交換器を製造している。中国、アメリカ、スウェーデンに子会社を構え、世界40か国以上に販売実績を持ち、売上の40%以上は海外だ。

同社の課題は、幸いにも売上が急増していることにあった。「ここ数年で売上は倍増した。しかし、それに応じた人材の確保ができていない」と松尾氏は述べた。

その背景の一つとして、「環境問題」について松尾氏は言及した。同社は空調設備やVOC(揮発性有機化合物)濃縮器など、大気汚染の解決に必要な製品群を数多く製造している。たとえば最近、大気汚染対策が課題となっている中国で同社のVOC濃縮装置の採用が決定し、これからさらなる需要増加が見込まれるという。

こうした背景から、既存の製造能力や人員では需要に対応することが不可能な状況であり、生産性の向上が喫緊の課題となっている。そこで、同社が進めたアプローチの一つがスマートファクトリーだった。同社は今、「世界最大級の生産量を誇る、大型ロータ(VOC濃縮ロータ)生産工場を設立する」というプロジェクトを進めている。その工場では、生産量は既存工場の2倍、人員は2分の1が目標だ(つまり、生産効率は4倍)。この新工場のプロジェクトの責任者を担っているのが松尾氏だ。

「Team Cross FA」が進めるスマートファクトリーの構築と実例 —「Smart Factoryセミナー2019」レポート2
西部技研が進める新工場建設プロジェクト(画像提供:西部技研)

松尾氏は当初、同社の設備のほとんどが自社製であることから、ITシステムも自社でつくろうと考えた。しかし、経営陣からは「革新的なシステム」との指示があり、自社ではなくパートナー企業を探す方針へ舵を切った。

松尾氏らが考えたパートナー企業の条件は、全体的な構想から設備導入まで一貫して協働できること、同社が手がけるような専用機にも対応できること、そして予算だ。松尾氏はまず、「スマートファクトリー」などのキーワードをGoogle検索するなどして、パートナー企業を地道に探した。実際に企業と商談の機会を重ねながら半年から一年は探したが、「予算に合わない」などの理由から適したパートナー企業が見つからなかった。そこであるとき、「オートメーション新聞」の紹介を通じて、Team Cross FAに出会ったという。

商談は成立し、Team Cross FAが提案する4つのPHASE(※)に従ってスマートファクトリー計画を進めた。まずは「グランドデザイン」の立案に着手。AGVを使ったフレキシブルな工程設計(ロボット型デジタルジョブショップ)や最新のIoT機器システム構成、ORiN(オライン)を活用したMESとの連携システムといった「グランドデザイン」が決まると、構想設計、工程設計へと進んだ。

※Team Cross FAによるスマートファクトリーの進め方

  • PHASE1:グランドデザイン:Smart化目的、コンセプト決定、各機能レベル、予算感
  • PHASE2:全体分析・構想:現状分析、ロボット・IT構想、シミュレーション
  • PHASE3:Digital Factory:各種デジタルシミュレーション、工場コックピット、物流定義
  • PHASE4:Real Factory:自動化システム、物流システム、工場コックピット

松尾氏は、工程設計で行ったシミュレーションにとても驚いたという。「最初、説明を受けただけでは理解できなかったが、実際にシミュレーションを行っているのを見るとわかりやすく、その意義がわかった」(松尾氏)。たとえば、設備(焼成炉)の台数が変わった場合の生産能力をシミュレーションした。専用のソフトウェアを用いてシミュレーションを行うと、設備が2台だと足りないが、8台だと多すぎるということがわかる。最終的には4台が最適であることがわかり、現在は詳細設計へと移行している(下の画像)。

松尾氏は今回の取り組みについて、「弊社は手作業の工程が多いため、現状把握に時間がかかったのが反省点だ。自動化は言葉や数字にできないと不可能であり、見える化はとても重要なステップだ。シミュレーションはとても魅力的だった。弊社の担当者だけで考えてもわからないことが、何度もシミュレーションすることで見えてくる。また、このシミュレーションの結果は、社内で経営層向けに行うプレゼンテーションでも効果的だった」と振り返った。

「Team Cross FA」が進めるスマートファクトリーの構築と実例 —「Smart Factoryセミナー2019」レポート2
スマートファクトリー化 PHASE2:シミュレーションによる検証(画像提供:西部技研)

西部技研のスマートファクトリー新設計画はまだ道半ばにある。今後は、今回検証中の設備/システム自体の増設(4ラインの計画で、現在は1ライン)に加えて、IoTシステムの導入なども進めていくという。新工場は、福岡県の宗像市に2020年以内に竣工予定だ。