2020年2月9日~12日に米国テネシー州ナッシュビルにて、ダッソー・システムズの3DCADであるSOLIDWORKSのユーザーイベント「3DEXPERIENCE World 2020」が開催された。
本記事では、SOLIDWORKSの成長戦略担当であるデイビット・ランドル氏(トップ画像)に、SOLIDWORKSにおけるXRに関して伺った内容を紹介する。
2つの角度からのアプローチ
ランドル氏は、「SOLIDWORKSは2つの角度からXRにアプローチしている。」と語った。
1つ目は、XRの機能をSOLIDWORKSの機能として提供するという角度。2つ目は川下のワークフローの可能性を広げるという角度だ。
SOLIDWORKSの機能として提供するアプローチ
「ユーザーはXRの機能を使って、設計プロセスやクリエーションプロセスに活かしていきたいと考えている。そういった要望を叶えるためには、ユーザーが既に使っている設計ツールでXRの機能が使用できるべきだ。」という。
SOLIDWORKSは、社外の技術を使用しポートフォリオでXRの機能を提供している。そのひとつの例がeDrawingsのVR機能である。eDrawingsProfessional2019から、VR機能が搭載されており、デザイナービューやモデルインタラクションに使用されている。
今後他の部分にも実装されることになるだろう。
川下のワークフローの可能性を広げる
「ユーザーは、SOLIDWORKSでコンテンツを作成した後、川下のWebアプリケーションやパートナーのVRアプリケーションなどの実験的な目的で活用したいと考える」という。
そのためには、一般的な3Dフォーマットである必要がある。そこで、SOLIDWORKSは、XRエクスポーターというツールを開発したのだ。
これにより、スタンダードなフォーマットで出力することで、データ交換が可能になり、幅広くWebや没入感のあるユースケースで使用することが出来るのだという。
XRが利用されることで、ROIが向上する領域
ランドル氏は、「XRが利用される領域として広く浸透しているのは、デザインレビュー、プロジェクトチームでのコラボレーション、川下のサポート及びサービスだ」と語った。
デザインレビューは、製品の迫力や大きさ、アクセシビリティなどをよく理解するための検討に用いられる。これは、セールス・マーケティングや機械のメンテナンスなどは、川下のサービスとしてのユースケースにあたる。

こういったユースケースが、ROIをよくできる分野ではないかと考えていて、実際にこれらの領域には積極的に投資が行われており、運用段階にあるものもあるのだという。
それ以外にも新たな領域ががあるか検討しているところだとした。
1つは没入感のあるデザイン生成だ。
ただ単にデザインレビューするのではなく、実際にサーフェスの変更やモデルの修正を没入感のあるように出来ると考えているのだ。
ハードウェア
「XRのハードウェアの進展は現在も進んでいるが、2020年は更に進むだろう」と述べた。
機能が拡張する一方でコストが下がっているため、ユーザーが新たなテクノロジーを実験するリスクが下がってくる。ヘッドセットに関しては競争が激しくなってきたので、ユーザーはより良いものを選べるようになっている。
中には、リアルタイムカメラが搭載されていてリアルな世界とVR上の世界を交互に行き来することが出来るものも出てきている。
今後のアプローチ
SOLIDWORKSで作成したままのデータはかなり重い。情報が多く、ファイルも大きくデータも複雑だからだ。このようなデータはこれまでXRでは高いパフォーマンスで使えることはなかった。
こういった問題に対応するために、2つの考え方があるのだという。
1つ目としては、ポートフォリオでXRを提供することにより、大きなファイルを扱えるようになり、同じファイルをXRで開くことが出来る。しかし、それで全てのユースケースに対応できるわけではない。
2つ目としては、設計データをあるフォーマットでエクスポートすることで、もっと使いやすい3Dデータを作り出すのだ。
この場合、軽くてコンパクトで使いやすいデータになるため、モバイル環境などで使えるようになる。実際、VRで作成されたトレーニング環境は軽量なデバイス用である事が多い。
テザリングされていないヘッドセットや、モバイル、コンピュータにケーブルで繋がっていないものを使用することが多いのだ。つまり、大きなデータは使えない。
そういった軽量なデバイスを使用するためには、データの精度を保ったまま、サイズを小さくする必要がある。
XRエクスポーターを使って、ユーザーがSOLIDWORKSのデータを出力するとファイルの複雑性が削減でき、軽量なデバイスで使用できる3Dデータになる。
さらに、3DEXPERIENCE WORKSの中にSOLIDWORKSのコネクテッドバージョンが入るという。
これはデータパイプラインがプラットフォーム上にあることなるのだが、これが従来との大きな違いだと言う。
つまり、プラットフォーム上の全てのデータをARやVRで使用できるようになるので、将来的には、プラットフォーム上のアプリケーションに接続し、それぞれのアプリケーションで同じようにVRやARを使用できるようになるのだ。
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大学卒業後、メーカーに勤務。生産技術職として新規ラインの立ち上げや、工場内のカイゼン業務に携わる。2019年7月に入社し、製造業を中心としたIoTの可能性について探求中。