CESレポートの第三弾はサステナブルに関してだ。
CES2025ではパナソニックが2013年以来のオープニングキーノートを行った。
2013年は当時の都賀社長が登壇され、松下幸之助氏がつくった創業以来のDNAは変わっておらず「原点回帰」ということを強く訴えていたことが印象的だった。
また2013年はまだCESもスマート化が進む家電が中心であり、その中でどのような取り組みをしていくかが注目されていたフェーズであった。
サステナビリティ・ヒーローとなったパナソニック
しかし、2025年は状況が当時とは大きく変化している。
特に2020年からのコロナ禍で、CESのトレンドも大きく変化した。
2020年まで生活者の便利や快適の提供が価値の中心だったが、事業やテクノロジーによる社会貢献や環境貢献が大きなトレンドになった。
そして2025年パナソニックが「サステナビリティ・スーパーヒーロー」と位置付けられるキーノートを行った。

2022年に発表したパナソニック・グリーン・インパクトの進捗として世界44の製造拠点におけるネット・ゼロの実現や、100%再生エネルギーの燃料電池工場が挙げられた。
特に再生エネルギーソリューションは「パナソニックHX」として世界展開を開始した。
パナソニックHXは純水素型燃料電池を軸に、太陽電池と蓄電池を組みあわせ、それぞれを連携し、無駄なく安定的に再生可能エネルギーを供給できるという。

またパナソニックはEV向けバッテリープロバイダーとして、北米でNo.1のポジションを築いている。
そこに4680という新たな車載用円筒形リチウムイオン電池を提供する。
4680は高効率でハイパワーなだけでなく、熱暴走リスクも大幅に低減される。
さらにRedwood Materials社と取り組んでいる、EVバッテリーのエコシステムについても紹介があった。

単なるリサイクルではなく、コバルト、リチウム、ニッケル、銅などの鉱物を98%以上回収し、新たな電池製造につなげる仕組みだ。
このエコシステムを世界最大規模で実現していくという。
エネオスのサステナビリティを具体化する取り組み
サステナブルな取り組みでいうとエネオスブースで展示されていた内容が実用化に向けた内容として興味深かった。
まず「ダイレクトMCH」だ。MCHとは「メチルシクロヘキサン」のことで、トルエンに水素を付加させてつくる液体で、水素を効率的に運搬する貯蔵体である。

エネオスでは、再生エネルギーが豊富なオーストラリアで太陽光発電と併設した実証プラントを建設し、CO2フリーのグリーン水素を日本に運搬し活用する技術検証をクリアしたという。
長期ビジョンでは年間100~400万トンの水素供給を目指すとしている。

またエネオスは、CCS/CCUS(二酸化炭素の分離・回収・貯留・利用技術)については実用実績含め最先端のポジションにいる。
現状でも年間140万トンのCO2を回収しており、これは世界トップクラスの規模だ。
そして火力発電所などから回収したCO2を減退油田に活用し、原油の回収量を増やし、CO2を新たなエネルギーに直結させている。
また回収したCO2と前述のグリーン水素を原料とした合成燃料の展示もあり、これは2030年の実用化を目指している。

CCS(二酸化炭素(CO2)を分離・回収し、地中などに貯留する技術)の未来像としてCO2の石化の取り組みについても紹介があった。
CO2も石化することで凝縮され体積が非常に小さくなる。
加えて石化したものが勝手に気体になることはない。ただし、石化には数千年かかることが課題だった。
現在では2年ほどで石化ができるようになってきているとのことで、本格的なCO2回収ビジネスがはじまる可能性を感じた内容だった。

パナソニックは今回のキーノートでは触れていない、ペロブスカイト太陽電池や欧州で展開しているAir to Water、大阪の吹田市の再生エネルギースマートタウンなど既にサステナ事業を幅広く展開している。
エネオスはこれからの内容が多かったが、実用化のスコープが見えてきている内容も多く、サステナビジネスの拡がりが具体的な内容とともにイメージできた。
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未来事業創研 Founder
立教大学理学部数学科にて確率論・統計学及びインターネットの研究に取り組み、1997年NTT移動通信網(現NTTドコモ)入社。非音声通信の普及を目的としたアプリケーション及び商品開発後、モバイルビジネスコンサルティングに従事。
2009年株式会社電通に中途入社。携帯電話業界の動向を探る独自調査を定期的に実施し、業界並びに生活者インサイト開発業務に従事。クライアントの戦略プランニング策定をはじめ、新ビジネス開発、コンサルティング業務等に携わる。著書に「スマホマーケティング」(日本経済新聞出版社)がある。