IoTで収集したデータはどう利用されるだろう。多くの場合、「可視化」に使われる。
状態を把握するのに使われるわけだが、単純な「系」をネットワークでつないだケースでは、可視化の先には、「ある閾値を超えたら何らかのアクションを行う」ということが基本的な動きとなる。
昨今叫ばれている「データの活用」という世界においては、データ収集の結果、何らかのアクションのトリガーとなるだけで良いとは言えない。
というのも、「データの活用」といっている側面には、自分の系に影響を及ぼすだけでなく、系の外にも影響を及ぼしていく効果があるとされているからだ。
つまり、収集したデータを一定のルールでスクリーニングして、他者にも利用価値のあるデータにしたら、解放してしまうという考え方がこれに当たる。
解放、というと、無料で提供するイメージがつく人も多いと思うが、実際は費用を発生させるケースも多い。
典型的なデータの解放にはどういう例があるのだろう。
精密なお天気情報は、様々な産業で利用されている
気象協会の出しているいわゆるアメダスと呼ばれる仕組みは、空に向かって電波を飛ばし、雨雲に反射した場合そのエリアの上空に雨雲があるとみなしている。
当然そのメッシュは荒く、一般的には10km四方くらいのメッシュが構成されるのだ。
しかし、ウェザーニュースの場合、このメッシュが250mまで小さくなる。しかも、10分間隔で雲の動きを追えるという。
この位の精度になると、例えば野球場でプロ野球の試合中に雨が降ってきた、中止にするのか、しばらく待つのか、という判断が簡単にできるようになる。
大きなフードフェズをやっている場合や、屋外イベントをやる場合でも同じことが言える。
もともと自社の天気予報サービスのために取得し始めたデータだが、必要な人に必要な情報(この場合では、あるエリアの天気の推移情報)を提供することで、新たなる価値を生み出すのだ。
製造業における産業機械で取得可能なデータ
製造業における産業機械のデータも活用可能性が高い。単純な例で考えると、様々な温度、湿度環境下での産業機械の稼働状況や障害発生状況を取得し、機械の改善を行うということが考えられる。
もちろん、製造されるプロダクトそのものについても同じことが言える。
これだけではない。インダストリー4.0の解釈として、サプライチェーンを考えると、製造現場の生産能力や生産可能性を公開することで、世界中の工場をつないだ生産も可能となるのだ。
もちろん、このレベルになると、まだ現実的とはいえないが、デジタルツインが構成されていく中、将来的にはマーケットからの距離や材料の調達価格や輸送価格などに応じた、最適な場所での生産が世界の各地で行われていく可能性は高い。
データ流通でなぜ儲かるのか
お天気や製造業に限らず、データ流通によるメリットは大きいのだが、なぜこういったことが話題になるようになったのだろう。
GAFAと呼ばれる、米国西海岸を拠点とするクラウド企業群がある。Google, Amazon Facebook, Appleがこれらに当たるのだが、これらの企業に共通していることが、「データの蓄積と流通による価値創造」だと言える。こういったクラウド企業が世界を席巻したことは一つのきっかけになっていると言える。
他にも、小売業における購買データの解析という分野では、実は以前から大量データの蓄積と活用は行われてきた。以前のデータウエアハウスと呼ばれる巨大なデータベースを解析する、データベースマーケティングと呼ばれる分野になるのだが、以前は高価なマシンを購入し、データを蓄積し分析していた。
しかし、これらのデータ活用はローカルマシン上で解析された、主に自社向けのデータの活用だ。
マシンの性能が向上し、無尽蔵ともいえる量のデータをクラウド上で蓄積することができるようになった昨今、こういった古いやりかただけでなく、潤沢なコンピュータリソースを駆使した分析が可能となっている。
また、クラウドシステム間は何らかの接続システムで相互接続する流れもあるため、現在、よく言われているデータ流通においては、自社のデータだけでなく、他社のデータや、一般に公開されているデータの活用が行わているのだ。
先ほどウェザーニュースの例をあげたが、天気情報との掛け合わせはとてもイメージがしやすかっただろう。
天気に限らず、自社で取れないデータを活用することで新たな価値を生み出すのだ。
例えば、属性、購買履歴、ウェアラブル機器からの生体データなどの「①個人情報を含むデータ」、個人情報を含まない「②匿名加工されたデータ」、生産現場のIoT機器データなどの「③個人に関わらないデータ」がこれに当たると、DTA(データ流通推進協議会)の杉山理事は、以前の取材でも語っている。
「①個人情報を含むデータ」や「②匿名加工されたデータ」との掛け合わせは、個人情報保護法の改正により、一定の条件下で本人の同意なしに他の企業への提供が可能ったことから今後広がってくると言われている。
また、「③個人に関わらないデータ」は、IoTの世界で、これまで捨てられていた一次利用を終えた保有データを二次活用して掛け合わせることになる。
他社データなどを活用して掛け合わせを考えるということは、逆にいうと、自社のデータも他社に活用してもらってマネタイズするという流れができる。
データの相互利用が進み、エコシステムが構成されるようになると、社会全体でデータの流通が進み、思わぬデータの掛け合わせから新たな価値が生まれることになるのだ。

IoTNEWS代表
1973年生まれ。株式会社アールジーン代表取締役。
フジテレビ Live News α コメンテーター。J-WAVE TOKYO MORNING RADIO 記事解説。など。
大阪大学でニューロコンピューティングを学び、アクセンチュアなどのグローバルコンサルティングファームより現職。
著書に、「2時間でわかる図解IoTビジネス入門(あさ出版)」「顧客ともっとつながる(日経BP)」、YouTubeチャンネルに「小泉耕二の未来大学」がある。
