【概要】
■ボッシュのデナーCEO:「ボッシュは事業目標を達成」
■売上成長率は約10%
■利益は約50億ユーロ(約6,700億円)を記録
■売上高利益率(EBIT)は約6.5%に上昇
■モビリティ ソリューションズは世界の自動車生産高を上回る速度で成長
■エネルギー・建築関連テクノロジーセクターは増収のペースを加速
■アジアと北米では2桁の売上成長
ボッシュ・グループは2015年に初めて700億ユーロ(約9.4兆円)を超える売上高を達成した(暫定値)。
売上の前年比伸び率は約10%で、利益も改善し、支払金利前税引前利益(EBIT)が特別要因を含めて約50億ユーロ(約6,700億円)に上った。なお、特別要因を除いた後の利益は45億ユーロ(約6,000億円)となる。
売上高利益率(EBIT)は約6.5%で、同一条件で計算した場合の前年実績を上回った。
自己資本比率は健全なレベルにあり、BSH Hausgeräte GmbHとRobert Bosch Automotive Steering GmbHの完全子会社化のために10億ユーロ単位の資金を費やしたにもかかわらず、高水準の流動性を維持している。
「私たちは技術革新力をばねに、厳しいビジネス環境と市場の低迷を乗り切り、2015年も成長傾向を維持することができました。業績改善の最大の原動力となったのは、ネットワーク化ソリューションを相次いで打ち出せたことです」と、ボッシュ取締役会会長のフォルクマル・デナー(Volkmar Denner)は述べた。
【ボッシュが形づくるデジタル革命】
ボッシュでは現在、とりわけIoTによるネットワーク化をベースに、事業変革が進んでいる。その一部は根本的なレベルで進んでいます。ボッシュはIoTの3つのレベルのすべてでアクティブに事業活動をしている。
ボッシュ・グループはネットワーク化を実現するための基礎技術、たとえばセンサーやソフトウェアを提供するだけでなく、それをベースにした新しいサービスの開発を進めている。
「センサー、ソフトウェア、そしてサービスに関する専門知識を駆使し、私たちはネットワーク化された世界を形づくり、新しいビジネスチャンスを切り拓こうとしています。そんな私たちにとって、『デジタル革命』は脅威ではなく、それどころか大きなチャンスだと考えています」とデナーは述べている。たとえば数週間前にボッシュ・グループは、スマートホーム市場への参入を明らかにし、ラスベガスで開かれたCES国際家電ショーで、ボッシュは社内で開発したスマートホームシステムを初めて公開した。
【2015年のビジネスセクター別業績動向】
2015年の売上動向は、傘下の4つのセクターによってばらつきが見られた。ボッシュの財務担当取締役兼ボッシュ取締役会副会長のシュテファン・アー センケルシュバウマー(Stefan Asenkerschbaumer)は、「2015年に私たちは多くの分野で、市場地位と競争力の向上、マーケットシェアの拡大を達成できました」と述べている。
■モビリティ ソリューションズセクター
世界の自動車産業が需要低迷に苦しむ中、モビリティ ソリューションズセクターは暫定値ながら、売上を大幅に伸ばすことができた。2015年の同セクターの売上高は計417億ユーロ(約5.6兆円)と、前年比12%の増加を記録。なかでも好調だったのが、ガソリン/ディーゼル燃料の噴射システム、ドライバー アシスタンス システム、インフォテインメントシステムだ。
■消費財セクター
消費財セクターも非常に堅調な成長を遂げ、売上高は前年比9.3%増の172億ユーロ(約2.3兆円)となった。このセクターでひときわ売れ行きが好調だったのは、コードレスタイプの電動工具と、ネットワーク機能に対応したコンロなどの家電製品だ。
■エネルギー・建築関連テクノロジーセクター
エネルギー・建築関連テクノロジーセクターの成長率は11%で、売上高は51億ユーロ(約6,800億円)となり、前年に比べて大幅に増加した。この成長の要因として、サービス、大型インフラ事業向けのセキュリティーシステムのほか、ネットワーク化されたスマート空調ソリューションが挙げられる。
■産業機器セクター
産業機器セクターでは、世界的な機械産業の活動低迷の影響が続いており、売上高は前年比1.7%減の66億ユーロ(約8,800億円)に後退。ドライブ&コントロール テクノロジー事業部も2015年に、機械市場における重要なセグメントのさらなる景気後退の影響を受けた。
【2015年の地域別業績動向】
欧州での事業は2015年に力強い動きを示した。売上は前年に比べて確かな伸びを記録し、暫定値では売上高は前年比4.2%増の375億ユーロ(約5兆円)に上った。他の欧州諸国と同様、ドイツ国内も順調に推移した。
売上が大きく伸びた地域は北米で、売上高を前年比で24%伸ばし、126億ユーロ(約1.7兆円)を達成できた。
一方の南米では、なお困難な状況が続き、それがボッシュ・グループの売上動向にも影を落としている。暫定決算報告によれば、2015年の売上高は14億ユーロ(約1,900億円)と、前年に比べて13%減少した。
アジア太平洋地域では、ボッシュは前年比16%増にあたる191億ユーロ(約2.6兆円)の売上を達成。
ボッシュが長期的に大きな潜在性があると見ているアフリカでも、2015年に事業拡大の努力が続けられた。
【従業員数は欧州、アジア太平洋地域と米国で増加】
ボッシュ・グループの従業員数は、2015年12月31日時点、全世界で約37万5,000人に達し、2015年に約1万7,600人増加した。従業員が特に増えた地域は、中部および東ヨーロッパ、ドイツ、アジア太平洋地域と米国だ。
職種別では、ボッシュは特にITスペシャリストの獲得に力を注いでいる。
【2016年の展望 – 慎重ながら楽観的】
ボッシュは2016年について、世界経済の成長率が2.8%程度にとどまると予想している。
「特定の地域、特定の業種分野で市場の一段と大幅な変動に備える必要を感じています」とアーセンケルシュバウマーは述べている。
地政学的に2016年の情勢は複雑で、少なからぬ不安要因を抱えている。このような状況下においても、ボッシュはこれまでの成長傾向を維持し、さまざまな分野で市場の平均以上の成長率を実現したいと考えている。
ボッシュは長期的な事業発展の可能性を確保するために多額の投資を行ってきたが、利益と売上高利益率(EBIT)はさらに改善する見通しだ。
【ネットワーク化ソリューションで、より簡単でシンプル、そしてより良い暮らしを実現】
ボッシュは戦略的な目標として、コネクテッド モビリティ、コネクテッド プロダクション、そしてコネクテッド エネルギーシステムとビルディングのためのソリューションを提供することを掲げている。この目標に沿うかたちで、ボッシュは2015年にいくつもの新しいソリューションを発表した。
「ネットワーク化のためのテクノロジーは、資源の枯渇や都市化など、私たちの行く手に待ち構える課題を克服するための重要なカギとなります」とデナーは述べている。その一例が、スマートにネットワーク化されたビルシステムだ。
ビルのシステムをネットワーク化すると、エネルギー消費量を最大40%節約することができる。2020年までに、世界の総世帯数の15%にあたる2億3,000万世帯にスマートホームソリューションが導入される見通しだ。
デナーはこう続けている。「コネクテッドテクノロジーとシステムは、あらゆるユーザーが直観的かつ簡単に操作できるものである必要があります」。そのため、ボッシュがスマートホームシステムの開発で特に重視しているのが、ユーザーエクスペリエンスだ。新しいシステムは、単一のプラットフォームをベースに、空調設備や家電製品、オーディオ/ビデオ機器、照明、さらにセキュリティーシステムなどの機器類をスマートにネットワーク接続でき、スマートホームの機器類はすべてスマートフォンやタブレット端末から1つのアプリで遠隔操作できるようになっている。
【得意分野の強みを活かして新しい世界に進出】
「私たちはスマートホームやコネクテッドインダストリーなど新しい市場の扉を開く努力を続ける一方で、既存の市場にある機会も逃さず掴み取っていきたいと考えています」とデナーは述べている。
そうした機会には、モビリティの電動化も含まれます。2015年にボッシュが行ったM&Aの中でとりわけ重要なものの1つが、米国のバッテリー技術のスタートアップ企業であるSeeo社の買収で、これによりボッシュは固体バッテリーセルのパイオニア的なノウハウを手に入れることになった。デナーはこれについて、「この事業が進化論的に発展するのか、既存の産業基盤を覆すようなかたちで発展するのかはともかく、ボッシュは将来もその一翼を担い続けます」と述べている。
ボッシュは、二輪車と商用車セグメントにも大きな可能性があると見ている。
市場と顧客のニーズにより良く応えていくために、ボッシュは最近、それぞれのセグメントを担当する専門の部門を発足させた。自動化、電動化、ネットワーク化というモビリティの3つの重要なトレンドは、商用車と二輪車にも長期的な影響を与えることになる見込みだ。商用車セグメントでは、事故の減少に向けて自動化が次第に重要な役割を担うようになってきた。二輪車関連では、現在標準的に用いられているキャブレターシステムの代わりに燃焼噴射システムを採用することで、燃費を向上し、特に発展途上国で資源の保護に貢献できると考えている。
【関連リンク】
・ボッシュ
・BSH Hausgeräte
・Robert Bosch Automotive Steering
・Seeo
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