IDC Japan株式会社は、国内IoTインフラストラクチャ市場(以下、国内IoTインフラ市場)予測を発表した。これによると、2019年の国内IoTインフラ市場の支出額は、前年比16.2%増の998億円になると見込んでいる。また、2018年~2023年の年間平均成長率(以下、CAGR)は15.8%で、2023年の同支出額は、1,788億円になるとIDCは予測を発表した。
IDCでは、全世界のIoTデバイス(エンドポイント)の普及台数は、2018年の228億台から、2025年には416億台に達すると予測している。また、IoTエンドポイントが年間に生成するIoTデータの総量は、2018年の13.6兆ギガバイトから、2025年には79.4兆ギガバイトに達すると予測した。
IoTエンドポイントから送信されるデータは、ネットワークを通じて、1か所もしくは複数箇所に収集、蓄積され、データ分析に利用される。今後急激に増大するIoTデータを処理するシステムとして、IoTインフラに対する需要が拡大するとIDCはみている。
IDCでは、IoTの基本アーキテクチャとして「IoTの3層モデル」を定義している(トップ画像参照)。IoTの3層モデルを基に、「IoTコアインフラストラクチャ市場(以下、IoTコアインフラ市場)」と「IoTエッジインフラストラクチャ市場(以下、IoTエッジインフラ市場)」を以下の様に定義し、それぞれの市場について分析と予測を行っている。
- IoTコアインフラ市場
コンピュート:汎用サーバー
ストレージ:汎用ストレージ(External, Storage Expansion)
ネットワーク:イーサネットスイッチ、ルーター - IoTエッジインフラ市場
コンピュート:汎用サーバー、IoTエッジ専用製品(IoT Edgeサーバー、IoT Edge PC、IoTゲートウェイ)
ストレージ:汎用ストレージ(External, Storage Expansion)
ネットワーク:イーサネットスイッチ、ルーター、産業用PC、PLC(Programmable Logic Controller)
IoTエンドポイント層で使用されるセンサー、デバイスなどは、現時点では調査対象外としており、国内IoTインフラストラクチャ市場(以下、国内IoTインフラ市場)とは、IoTコアインフラ市場とIoTエッジインフラ市場の2つのセグメントを合算した市場を表す。
この定義に従い、IDCでは、2019年の国内IoTコアインフラ市場の支出額は、前年比12.3%増の666億円、2018年~2023年のCAGRは12.0%、2023年の支出額は、1,046億円になると予測している。一方、2019年の国内IoTエッジインフラ市場の支出額は、前年比25.1%増の331億円、2018年~2023年のCAGRは22.9%で推移し、2023年の支出額は、742億円になると予測した。
IoTの普及と共に、IoTデータの分析処理が多様化し、レイテンシー(処理応答時間)やセキュリティの観点から、IoTエッジ層でのデータ分析処理を志向する企業が増えてきている。最近では、AI技術が活用できるIoTエッジインフラが登場し、高度なデータ分析処理が可能になってきたことも、IoTエッジ層でのデータ分析処理を志向する企業が増加する要因のひとつだ。
昨年、IDCが実施したユーザー調査でも、IoTコアインフラとIoTエッジインフラに対する予算配分は、今後IoTコアインフラの割合が減少し、IoTエッジインフラの割合が増加するという結果が得られた。
このことから、国内IoTインフラ市場全体における、IoTエッジインフラ市場の構成比は、2018年の30.8%から、2023年には10.6ポイント上昇して41.5%になるとIDCは予測した。
IDC Japan エンタープライズインフラストラクチャ リサーチマネージャーの下河邊 雅行氏は「IoTの普及と共に、IoTエッジ層におけるデータ分析処理のニーズが高まり、IoTエッジインフラ市場は、注目すべき成長市場になる。IoTインフラベンダーは、IoTエッジインフラの製品ラインアップを強化し、自社のIoTインフラビジネス拡大につなげていく必要がある」と述べた。
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