台風など昨今増え続ける自然災害に対するレジリエンス強化、再生可能エネルギー増加による分散化対応、また、脱炭素化を目指すRE100(※1)企業の台頭を背景に、欧米ではマイクログリッドが普及している。
マイクログリッドとは、太陽光発電や風力発電、燃料電池などいくつかの分散電源と電力貯蔵システムをもち、電力系統に連携することも、切り離して自立運転もできる小規模系統網である。停電などの緊急時には、広範囲の電力網から切り離して一定地域・施設内で電力供給を維持することができ、日本においても必要性が高まっている。
このほど、シュナイダーエレクトリックは、これまで主に中圧受配電機器の製造・提供を行ってきたパワーシステム事業(※2)の日本でのビジネス領域を拡張し、「マイクログリッド向け事業」に参入すると発表した。マイクログリッド向けのソリューション「EcoStruxure Microgrid」を、4月中旬から提供する予定だ。
「EcoStruxure Microgrid」は、同社のIoTプラットフォーム「EcoStruxure」の電力グリッド向けフレームワークを利用し、電力の発電、消費、貯蔵、販売を最適化し、停電時に系統から切り離した後も電力供給の安定化を図る制御・監視ソリューションだ。世界ではすでに130件の導入実績がある。
「EcoStruxure」は、オープンで相互運用性を備えた、IoTプラットフォームおよびアーキテクチャーである。IoT、モビリティ、センシング、クラウド、アナリティクス、サイバーセキュリティ技術を活用し、第1階層「コネクテッド・デバイス」、第2階層「エッジコントロール」、第3階層「アプリケーション・アナリティクス・サービス」で、あらゆる階層でのイノベーションを実現する。
「EcoStruxure Microgrid」ソリューションは下記の通り。
- 「EcoStruxure Microgrid Advisror」
電力をいつ作り、消費し、貯蔵し、販売するかを予測、最適化するアプリケーション。「エッジコントロール」層において振り分けられたデータの解析・分析を行う「アプリ・アナリティクスおよびサービス」層に位置する。 - 「EcoStruxure Microgrid Operations」
停電時に系統から切り離した後も電力供給の安定化を図る監視・制御ソリューション。「コネクテッド・デバイス」層から収集したデータの監視・処理を行う「エッジコントロール」層に導入する。 - 「コネクテッド・デバイス」層では、自社・他社製品問わずに必要なハードウェアをネットワークに接続することによって、すべてのハードウェアからのデータを収集し、監視・管理が可能になる。
「EcoStruxure Microgrid」は、他社製品との互換性も高く、追加の負荷、発電も簡単に管理可能な拡張性を持つのが特徴である。再生可能エネルギーを活用し環境にやさしい企業を目指すオフィスや工場・物流施設、自然災害時にも停電から守るレジリエンス強化を行いたい自治体や重要な施設、離島ならびに、電気料金の最適化や燃料費を削減したという企業が対象となる。
需給の制御方法としては、「系統連系(Grid-tied)」、「系統連系・解列(Island able)」、「自立運転(Off-Grid)」に対応する。
※1 「Renewable Energy 100%」の略称。事業で使用するエネルギーを100%再生可能エネルギーにすることを宣言した企業の連合体で、2014年にイギリスに本部を置く国際環境NGOのThe Climate Groupが中心となって開始したイニシアチブ。 日本企業でも、2017年4月のリコー以降、積水ハウス、アスクル、大和ハウス工業、ワタミ、イオングループなどメーカーが先行しており、2019年2月16日時点で世界164社が参加している。
※2 海外においては100年余の歴史を持ち、電力会社、石油化学産業などを中心に受配電機器やソフトウェア、サービスを提供、全世界に250余のサービス拠点、60以上のエンジニアリング拠点、90以上の製造拠点を持っている。約50年前の日本市場参入当初から国内でも活動を開始している同事業は、これまで主に日本企業の海外プラント案件向けの受電設備およびソフトウェアの提供、および、合弁企業による国内向け案件への受電設備用機器の販売を行ってきた。
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